カーリングとフィギュアの戦略とは!? 【対談】両角友佑×小塚崇彦 前編

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男子カーリング日本代表のSC軽井沢クラブでスキップを務める両角友佑と、元フィギュアスケーターの小塚崇彦さんが対談。競技の戦略について語った 【写真:築田純】

 男子カーリングの日本代表として、平昌五輪に出場するSC軽井沢クラブは、2月14日に初戦を迎える。1998年の長野五輪で正式種目となって以降、女子は毎回出場しているが、男子は実に5大会ぶり。地元開催だった長野五輪以来となる切符を勝ち取った。そのチームのスキップを務めるのが両角友佑だ。スキップはチームの司令塔とも言うべき存在で、文字通り中心的な役割を担う。

 一方、元フィギュアスケート選手の小塚崇彦さんは、2010年のバンクーバー五輪に出場し8位入賞、11年の世界選手権では銀メダルに輝いた経歴を持つ。実際にカーリングを体験したこともあるという。

 そんな2人の対談が実現した。前編のテーマは「競技の戦略について」。国ごとの特色、練習方法についても語り合った。

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リスクを負いながら点数を狙っていく

SC軽井沢クラブは攻撃的な作戦で、リスクを負いながら得点を狙っていく 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――SC軽井沢クラブは、どのようなカーリングを目指しているのでしょうか?

両角 日本で昔やっていたのはカーリングの中でも守備的な作戦なのですが、僕たちのチームは今すごく攻撃的な作戦でやろうとしています。

小塚 具体的にはどのような作戦ですか?

両角 (ハウスと呼ばれる)円の中がシンプルな形になるほど、自分たちの石ははじかれやすいのですが、自分たちの石が何個かあると、チャンスになります。相手の石にうまく自分たちの石もくっつけていき、そこにドンと石が当たったら、相手の石だけ出ていくような形を作っていく。そのためには、いざというときにたまっている石を一気に出せるパワーが必要になります。そのようなショットを、僕たちのチームは日本の中でも早い段階で挑戦してきました。成功率としては決まりにくい難しいショットになるのですが、リスクを負いながら点数をたくさん狙っていく作戦をとっています。

――フィギュアスケートの戦略は、どういったものがありますか?

小塚 やはりルールがあるのでそこをうまく、どうかいくぐっていくかを考えます。あとはその場面によって前の選手や、後の選手が何をやってくるのだろうか、何をやったのだろうかというところを考えたうえで、戦略的に変えることはありました。ただ、変えると言っても、やはり練習はしています。そこを見越して、どうなっても対応できるようにいろいろなパターンで練習はしていましたね。

両角 他の選手の演技は気になるものですか?

小塚 僕は気になる方だったんですけど、先生は見せないようにしていました。結局、自分のやるべきことがきちんとできたら点数は出ます。相手がいるようでいないんです。直接的に関係はしておらず、コンタクトもないので、まずは自分に集中することは気をつけていました。その点、カーリングは相手のストーンを飛ばしていく競技だから、相手を意識することはフィギュアスケートよりも多いですよね。

両角 カーリングも自分のショットを投げるときには、全く相手とコンタクトがないですし、投げている間に相手は動いてはいけないんです。相手チームの邪魔をしてはいけないというルールがあり、余計な動きをしていると止められます。なので自分のやりたいことは、いつも通りのことができれば成功するというのが前提です。ただ、場面場面でチームによっていろいろな戦略があります。次のショットは相手の番になるので「相手が何をやってくるのか」ということを予想しながら、自分たちの作戦が少しずつ変わっていくのは、フィギュアスケートと少し違う部分かもしれないですね。

ロシアと北米でジャンプの跳び方が違う

ロシアと北米でジャンプの跳び方が違うという。ロシアの選手は高く跳ぶ傾向が強い 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

小塚 あらかじめ対戦相手がどういう戦略で来るかは、分かっているのですか?

両角 カーリングは国の特色がけっこう強いんです。スコットランド、ノルウェー、スウェーデンなど各国で違った特徴があります。カナダは強いチームがいっぱいあり、それぞれ戦略を持っているので、代表チームが決まるまでは絞れないんですけど、国ごとの特色があるので、だいたいは知っています。あと世界選手権などの国際大会に僕たちが毎年出ているのは、この先の五輪で戦う相手がどのようなカーリングをしてくるのかを知っている方が、自分たちに有利になるという理由があります。

――フィギュアスケートでは国ごとの特徴はありますか?

小塚 ジャンプの跳び方は、ロシアと北米とで少し違いますね。

両角 へえ、全然分からない(笑)。

小塚 ロシアの選手はどちらかというと高く上がって、北米は横に跳ぶ選手が多いです。高く跳ぶ方が軸はぶれにくいので、安全に確率良く跳べる。北米は遠くに跳ぶので軸は少しブレやすい。スピードがあるのでタイミングもずれやすく、きれいなジャンプを求める傾向にあります。出来栄え点を狙ってきますが、失敗したときには減点されてしまいます。それがロシアと北米の違いで、日本はどちらの先生にも習いにいくので、両方のタイプの選手がいますね。

両角 選手は自分に合った跳び方を選ぶんですか?

小塚 どちらもやってみてというのが多いですね。あとは習った先生によって癖がついてしまうので、そのままいくという感じかな。

両角 ロシアの先生だったらもっと高く跳びなさいと言ったり、北米の先生だったらもっと出来栄え点を狙うようにしなさいという感じ?

小塚 全員が全員そういうわけではないですが、北米の先生は、そういう先生が多いですね。今、ロシアから米国に渡って、米国で教えているロシアの先生もいるので、少しずつミックスされてきてはいます。

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