日本のエース小平奈緒を阻むイ・サンファ 韓国記者「勝つ可能性は25%」と分析

李仁守

昨季から不振が続くも復調の兆し

昨季以降、W杯では小平(左)に全敗。記録も落ち込んでいる 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 早くから才能を発揮し、名実ともに女子スピードスケート界の頂点に上り詰めたイ・サンファ。だが、ここ最近は不振が続いている。昨季以降、W杯では小平に全敗。記録も落ち込んでいるのだ。

 イ・サンファが調子を落としている最大の要因は、バンクーバー五輪当時から悩まされているけがにある。膝の軟骨がすり減って水が溜まる症状が続いており、さらには下肢静脈瘤も発症。昨季はふくらはぎの筋断裂も起こしていた。イ・サンファは、痛みのあまり足を動かせないときもあったと告白している。

 彼女を苦しめたのは、けがそのものだけではない。けがの影響で成績が振るわないことに対し、一時はファンやメディアが心無い言葉を浴びせることもあったのだ。精神力の強さに定評があるイ・サンファも、当時はさすがにショックを隠し切れない様子だった。

「『不振に陥っている』と言われると、無気力になってしまいます。正直、とてもつらいです。精一杯頑張っているのだから、そういったネガティブな言葉はやめてもらいたい。いまの私にとっては金メダルよりも、心を空にすることが目標かもしれません」

 重なるけがと国内からの批判によって、心身ともに不安定な状態が続いたために、イ・サンファは失速してしまったわけだ。

 しかし、逆境に立たされたときにこそ、闘争心に火が付くのがイ・サンファでもある。キム・ヒョンギ記者が言う。

「もともとイ・サンファは、かなり負けず嫌いな選手です。彼女が小平にライバル心を燃やしていることは、直接取材をしていても感じます。彼女は最近、“小平”とは決して口に出さず、“あの選手”と言うんですよ。ライバルの名を語ることすらも、プライドが許さないのでしょう。イ・サンファは、小平に勝つために抜かりなく準備を進めています」

 実際、平昌五輪に向け、イ・サンファはできる限りの準備を行っている。

 例えば、昨年3月には、苦しんできた下肢静脈瘤の手術に踏み切った。これまで彼女は、リズムを崩したくないと手術を避けてきただけに、相当な覚悟で平昌に臨んでいることがこの決断からもうかがえる。

 そして、その決断は奏功した。今季のW杯の記録を見ると、昨年11月のスタヴァンゲル大会の1次レースでは、500メートルで38秒08と小平(37秒08)に1.00秒の差を付けられていたが、12月のソルトレークシティー大会1次レースでは、36秒71をマークし、小平(36秒50)との差を0.21秒まで縮めている。

 イ・サンファが36秒台を記録したのは、2年ぶりのことだった。イ・サンファは同大会後、コンディションは85%まで戻っていると自己分析し、平昌までには100%まで持っていけると現地記者に話していた。

「最後の五輪。“平昌は私のものだ”」

昨年12月のW杯では小平と接戦を演じるまで復調。五輪2連覇に導いたクロケットコーチと最終調整にも力を入れている 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 また、最終調整にも力を入れている。1月22日からはドイツでトレーニングを開始。かつて彼女を五輪2連覇に導いた、現カナダ代表コーチのケビン・クロケット氏に再び指導を受けている。クロケットコーチは、イ・サンファが「親友のようだ」と絶大な信頼を寄せる人物だ。

 キム・ヒョンギ記者も、ここにきてイ・サンファが本来の滑りを取り戻しつつあると感じている。

「これまでの試合を見る限りでは、イ・サンファが小平に勝つ可能性は25%ぐらいというのが正直なところ。そう言い切れるくらい、小平の強さは本物です。ただ、イ・サンファは平昌に向けて確実に調子を上げていますし、ホームの利点もあります。それに、イ・サンファは500メートルに照準を絞っているので、1000メートルなどにも力を入れる小平よりも、試合に集中できるのではないでしょうか。本番ではどちらに軍配が上がるか分かりません」

 イ・サンファ自身も、平昌五輪での小平との対決には自信を覗かせている。

「“あの選手”と私の滑りを映像で分析しています。本番までにもう少し調整すれば、勝算はある。今は追う側の立場ですし、ホームで開かれることもあって気楽です。カーブがちょっときつい江陵のリンクも私に合っている。平昌五輪は、私にとって最後の五輪。試合後には、“平昌は私のものだ”と胸を張って言えると思います」

 ライバル心をむき出しにし、小平に勝つために万全の態勢を整えるイ・サンファ。2シーズン全勝中の小平とて油断はできないはずだ。女子スピードスケートの日韓対決は、今大会屈指の名勝負になる予感がする。

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著者プロフィール

1989年12月18日生まれの在日コリアン3世。大学卒業後、出版社勤務を経て、ピッチコミュニケーションズに所属。サッカー、ゴルフ、フィギュアスケートなど韓国のスポーツを幅広くフォローし、『サッカーダイジェストweb』『アジアサッカーキング』『アジアフットボール批評』『女子プロゴルファー 美しさと強さの秘密(TJMOOK)』などに寄稿。ニュースコラムサイト『S−KOREA』の編集にも携わる

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