「Bリーグホープ」が目指す継続的な支援 熊本で見たプロスポーツの“あるべき姿”
大河チェアマンも絶賛の「神対応」を見せた川村
大河チェアマンも大絶賛の「神対応」を見せた川村(右) 【(C)B.LEAGUE】
田臥勇太(栃木ブレックス)は活動を終えた感想をこう口にする。「僕らも今日は子供たちと会えるのを楽しみに来ました。オールスターメンバーと一緒にこういう活動ができるのは、僕らにとってもうれしいことです。僕らの方が勇気、元気をもらった時間でした。少しずつ前を向いて元気になろうというきっかけになってくれたらうれしいし、一緒に前を向いて頑張っていきたい」
テクノ仮設団地は総戸数500以上のかなり大きな「団地」で、平屋建てのプレハブ住宅がAからFの6ブロックに分かれて建てられている。道路は舗装され、自動販売機もあり、仮設の店舗でスーパーマーケットや飲食店が営業している。団地内には路線バスまで通っていて、事前に想像している仮設住宅のイメージとは違った。
熊本市出身の小林が語る、活動の意義
定期的にこういった活動を行っていくことが大切だと、ヴォルターズの主将を務める小林(写真中央)は語る 【(C)B.LEAGUE】
ただし「良くなった」とは言っても、復興は途上。仮設団地を見れば日常があり、子供たちの笑顔もあるが、だからと言って手を差し伸べる必要性が消えたということではない。
彼は今回の活動の意義をこう述べていた。「熊本(県民)の立場からすると本当にありがたい。メディアでも、少し取り上げられなくなってきています。こういうことをやることで、より忘れさせない。全国に発信できるのは大きなことです。定期的にこういう活動を行って、復興に対してのアプローチにいろいろと変化を持たせながらできれば、非常にいいことだと思います」
小林は今後を見据えて決意を口にした。「僕はここにいる人たちが自分の家を持って、益城の中で生活できるようになることが最後の復興だと思っています。最後のひとりになるまで、自分ができることはやり続けたい」
Bリーグにとどまらない、プロスポーツの“使命”
地域名を背負い、支援を得て活動しているからこそ、チームは社会に「お返し」する責任を負っている 【(C)B.LEAGUE】
その一方でスター選手が一堂に会する「オールスターウィークエンド」(NBAが2月に集中して行うイベントの総称。最終日にはオールスターゲームが行われる)は、社会的責任活動を行うために最適のタイミングである。だからこそ今回はNBAと同じように、オールスター戦とセットの活動が行われた。大河チェアマンは「これからもSR活動とゲームがセットになったオールスターにしたい」と継続を口にしている。
企業体としてみると、B1クラブは年間の売り上げが最大10億円強の中小企業。しかしクラブと選手は、お金で測れない夢をファンから託されている。地域名を背負い、広く支援を得て活動しているからこそ、社会に「お返し」する責任を負っている。さまざまな課題解決に貢献すること、笑顔を増やすことは、Bリーグにとどまらないプロスポーツの使命だ。
活動が長く続くために経営の安定は必要だが、リソースに余裕があるならファンに還元する。もしくは未来へ投資することが、リーグやクラブのあるべき姿だろう。
Bリーグのスターにはコート外に出ても、子供たちに喜びや希望を与える「華」がある。また社会的責任活動が報道を通して世に広まれば、次なる支援の呼び水となるし、Bリーグ自身の価値を示す好例にもなる。選手と子供たちの協働、ふれあいを見て、あらためてそれを感じた。このような活動がBリーグの、日本のスポーツ界のスタンダードとなることを願いたい。