サンタフェからの年賀状 「競馬巴投げ!第161回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

年賀状期間って何?

[写真3]ヒットザターゲット 【写真:乗峯栄一】

 百枚の巨大な10円切手シートをご存知だろうか。それを持っただけで絶望感に陥る。

 一枚一枚バラバラにしようとするのだが、興奮しているから、うまく破れない。ベリッと切手を裂いてしまったりする。

 もう我慢できん。

「これだけの切手をバラバラにする道具はないの?」と別のカウンターに行く。自分では押さえたつもりだが、声も大きかったかもしれない。

 奥から慌てて、責任者のような男が出てきた。

「ぼくは、いつも1月10日ごろに年賀状だすけど、この50年間、一度も年賀状に切手なんか貼った覚えがないよ」と言うと「年賀状期間は1月7日までなんです」などと言う。

「年賀状期間って何?」と聞くと「12月15日から1月7日までが年賀状期間なんです」と言う。

「郵便局内部ではそういう言葉があるのかもしれんが、一般人は聞いたことないぞ。何だ、年賀状期間ていうのは。8日以降に出したら年賀状じゃなくなるのか!」

 いかん、また声が大きくなってる。
(帰りに参考までに郵便ポストも見てみたが、確かに8日以降は10円切手貼れとは書いてあるが、年賀状用投入口はまだあるじゃないか! まだ「年賀状期間」じゃないのか)

 でも、文句も言ってみるもんだ。

「では切手はこちらで貼らせていただきますので」と、局員が貼ってくれることになった。巨大な百枚シートから10枚だけこちらに返してくれて、あとは向こうで貼ってくれることになった。出来るんじゃないか。郵便局側で貼ってくれるんじゃないか。

年賀状はやはり年初に書きたい

[写真4]ベルーフ 【写真:乗峯栄一】

 確かに、それは郵便局にとっても手間のかかることだろう。

 だったらどうして「52円に値下げして、7日過ぎたら10円切手貼る」などという無駄なシステムにするんだ。初めから通常葉書と同じ62円で売ればいいじゃないか。62円なら、こちらも郵便局まで行かなくてもポストに投函すればいいし、郵便局の方も、客から文句言われて90枚も10円切手を貼るという無駄な労力を使わなくて済む。

 最低でも、追加分10円を示す「追加料金別納スタンプ」を作れば、巨大切手シートをビリビリ破るという非生産的な作業をしないで済む。

 いま考えても、むかついてくる。

 タレント「嵐」を使って「年賀状を出そうキャンペーン」は大々的にやっていたが、あのテレビCMの中で「1月7日過ぎたら10円切手要るよ」とひとことでも言っていたか?

「年賀状はやはり年初に書きたい」とぼくのように思っている日本人も数十万人はいるはずだ。

 来年も今年と同じ年賀状制度にするのなら、ぼくは年賀状はもう買わない。社会の底辺の一人が年賀状買わなくなったって、大・日本郵政としては痛くも痒くもないだろうが。せめてもの反抗だ。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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