頭角を現した“ヨナ・キッズ”たち 平昌五輪選考は「予想外」の結果に

李仁守

3度の選抜戦で代表が決定

チェ・ダビンは選考レースでは最後まで一度も首位を譲らなかった 【写真は共同】

 冬季五輪の花形競技といわれるフィギュアスケート。その韓国代表が1月7日に確定した。男子シングルはチャ・ジュンファン、女子シングルはチェ・ダビンとキム・ハヌルが平昌行きを決めているが、韓国フィギュアをウォッチしてきた立場からすると、「順当」よりも「予想外」の結果だ。

 韓国のスポーツ紙『スポーツ・ソウル』でフィギュアスケートを担当しているキム・ヒョンギ記者も、驚きを隠さなかった。「最終的には、かなり意外な結果になりましたよね。代表選考が始まった当初は、誰もこの選手たちで決まるとは考えていなかったと思います」。

 そもそも韓国の代表選考の方法は日本とはかなり異なっていた。日本に比べて男女の出場枠が少ないこともあるが(韓国は女子シングル2、男子シングル1)、韓国は全国選手権の結果で一発確定させるような手法を取らず、3度も代表選抜戦を行っている。昨年7月に第1次、12月に第2次代表選抜戦が開催。そして今年1月5〜7日に第3次代表選抜戦が行われ、3戦の合計点によって代表を決めたのだ。
 そして、そんな長丁場の代表選抜戦だったからこそ、ひと波乱もふた波乱もあった。

“韓国女子フィギュアの看板”パク・ソヨンの落選

パク・ソヨンはけがに泣き落選となった 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 まず、女子シングルだ。第二次選考からは国内選手権も兼ねていた関係でユ・ヨンやイム・ウンスなど平昌五輪への出場資格を満たしていないジュニア選手も参加したことで順位争いが激しくなり、最終的には平昌行きが確実視されていたパク・ソヨンが落選したのだ。

 パク・ソヨンは2014年のソチ五輪に出場し、同年に埼玉で行われた世界選手権では9位、16年の四大陸選手権では4位に入ったスケーターである。韓国国内では、“韓国女子フィギュアの看板”ともいわれ、平昌五輪でも好成績が期待されていた。キム・ヒョンギ記者も言う。

「キム・ヨナの引退以降、韓国フィギュアは低迷が続いていました。そんな中でも国際大会で地道に結果を残し、右肩上がりで成長を続けるパク・ソヨンには期待が寄せられていました。それだけに、彼女の落選は予想外でした」

 パク・ソヨンが平昌行きを逃すことになった最大の要因は、16年末に起こったアクシデントにあったと言えるだろう。ステップの練習中に転倒し、左足首を骨折。以降、リハビリに努め、けがから8カ月後に行われた昨年7月の第1次代表選抜戦で初めて実戦復帰したが6位に終わり、第二次代表選抜戦でも7位と振るわなかった。起死回生の逆転を狙った第三次代表選抜戦でも5位に終わっている。平昌出場資格がある選手だけの総合順位は3位。平昌にはあと一歩届かなかった。

「幼い頃から、平昌五輪だけを目標に走ってきました。平昌は必ず立ちたい舞台。大きなけがをしてしまいましたが、それでも諦められません。その思いがあったからこそ、再び立ち上がることができたと思います」

 第1次選抜戦後にそう語っていたパク・ソヨンのことを思うと、胸が締め付けられる。けがでリンクを離れ、平昌五輪の数か月前に復帰という点でも日本の宮原知子(関西大)と重なっただけに惜しい。キム・ヨナ引退後、“韓国フィギュア界のマッオンニ(=最年長の姉さんという意味)と呼ばれてきた20歳は、日本の“ミス・パーフェクト”のような復活劇とはならなかったのだ。

若手がつかんだ平昌への切符

15歳キム・ハヌルは安定した演技を披露し代表入りした 【写真は共同】

 もっとも、そんなパク・ソヨンを抑えて平昌行きをつかんだチェ・ダビンとキム・ハヌルが高いパフォーマンスを見せたことも事実だ。

 チェ・ダビンは、昨季の札幌冬季アジア大会で韓国選手として初めて金メダルに輝き、続く世界選手権では10位に入って韓国に平昌五輪の出場2枠をもたらした選手である。キム・ヨナから直接指導も受ける17歳は、もともと代表入りは間違いないと見られていた。選抜戦直前の昨年6月には最愛の母を病で亡くしたが、それでも7月の第一次選考では1位に輝き、その後も選考レースでは最終まで一度も首位を譲らなかった。それだけにチェ・ダビン自身も、代表入りには安堵(あんど)を滲ませている。

「真っ先にお母さんの顔が浮かびました。つらい出来事を乗り越えられた自分をほめてあげたいです。お母さんが隣にいたら、きっと誰よりも喜んでくれているはず。平昌ではもっと良い演技を見せたいです」

 また、キム・ハヌルも15歳ながら期待以上の結果を残した。彼女はこれまで、16年の世界ジュニア選手権で9位に入るなどジュニアでは成績を収めてきたが、シニアではまだこれといった成績を挙げていなかった。ところが149cmの“小さな巨人”は、代表選抜戦で常に安定した演技を披露して代表選考レースで総合順位2位に入り、平昌行きを決めたのだ。
 
 キム・ハヌルとチェ・タビンは“ヨナ・キッズ”ともされているだけに、キム・ヒョンギ記者も女子シングルには期待を寄せている。

「韓国ではキム・ヨナに憧れてスケートを始める“ヨナ・キッズ”こそ増えましたが、日本やカナダと比べてリンクの数もはるかに少ないため、選手がなかなか育たなかった。そんな中で頭角を現したチェ・タビンとキム・ハヌルには期待が膨らみます」

 実際、韓国女子フィギュア界では若手の台頭は目覚ましい。第2次選考を兼ねていた『KB金融コリア・フィギュアチャレンジ』、第3次選考も兼ねていた『KB金融コリア・フィギュアスケーティング2018』で優勝に輝いたのは13歳のユ・ヨンであるし、14歳のイム・ウンスもいずれも3位に入っている。前述したとおり、二人は年齢制限のため平昌への出場資格はないが、ある意味で今回の代表選考レースは、韓国女子フィギュアの世代交代を告げるのろしとなったと言えるだろう。

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著者プロフィール

李仁守

1989年12月18日生まれの在日コリアン3世。大学卒業後、出版社勤務を経て、ピッチコミュニケーションズに所属。サッカー、ゴルフ、フィギュアスケートなど韓国のスポーツを幅広くフォローし、『サッカーダイジェストweb』『アジアサッカーキング』『アジアフットボール批評』『女子プロゴルファー 美しさと強さの秘密(TJMOOK)』などに寄稿。ニュースコラムサイト『S−KOREA』の編集にも携わる

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