サッカー小僧が知的なプレーをする佐賀東 「中体連あがり」の活躍で開幕戦を制す

平野貴也

中学部活組の連係で鮮やかな先制弾

ゴールを決めた中里(9番)。佐賀東は、中学部活組の連係で鮮やかな先制点を奪った 【写真:アフロスポーツ】

 学校が冬休みになり、社会人が仕事納めをする。年の瀬の定番と言える景色の中に、高校サッカーがある。日本代表やプロを目指す子どもたちが、現実レベルで憧れる最初の大きな舞台と言える。第96回全国高校サッカー選手権大会が30日に駒沢陸上競技場で開幕した。オープニングゲームは、佐賀東(佐賀)が2−0で関東第一(東京)を下して2回戦進出を決めた。翌31日には残りの1回戦が行われ、年明け1月8日の決勝戦に向けて熱戦が繰り広げられる。

 佐賀東は、中学部活組の連係で鮮やかな先制点を奪った。前半を守備重視で戦って相手の攻撃をしのぐと、後半6分に左サイドでパスをつなぎ、中央を経由して後半から投入された主将の江頭弘太が振り向きざまに逆サイドへ展開。自慢のスピードを生かして攻撃参加した右DF山田昭汰がニアにクロスを送り、FW中里知己がヘディングシュートをたたき込んだ。相手を引き付けておいて、逆サイドに空いたスペースを素早く使う、爽快なゴールだった。

 江頭、山田、中里、さらに、スペースを巧みに使ってパスワークの潤滑油となっていた小柄な10番の小野真稔やセンターバック(CB)の中村恒介も中学校の部活(以下、中体連=中学校体育連盟)出身者だ。

「ちょっとしたきっかけで面白い進化を見せる」

「中体連出身でもちょっとしたきっかけで面白い進化を見せる」と話す佐賀東の蒲原監督 【写真:アフロスポーツ】

 近年は、小中学生を対象とするクラブチームが増えている。クラブの方が試合は多く、人の目に触れる機会も多い。しかし、中体連出身者にも活躍の余地は十分にある。

 佐賀東の蒲原晶昭監督は「中体連で埋もれている選手に、どんな刺激を与えるか。ドリブルなどの武器を持っていても、そのままにしていては、感覚的にやってしまう。状況を判断して意図を持ってプレーすることを教えるのが、自分たちの作業。みんなに平等に、同じベースになる部分を入れることで、元々持っていた個性と重なって、中体連出身でもちょっとしたきっかけで面白い進化を見せる」と説明した。

 小野は「中学時代は、ドリブル中心でパスは禁止だった。佐賀東でトップチームに上がってから、ポジショニングや視野の確保を教えてもらって、ショートパスでリズムを作ることを教えてもらった」と話し、先制点をアシストした山田は「中学時代はFWでやっていて、相手が2人来ているのに自分1人で仕掛けていたこともあった。ここに来て、周りを見るようになって、どこを使えばいいのかを考えるようになった」と成長の軌跡を振り返った。CBの中村も「駆け引きの面で上達した。中学時代は感覚でやっていたので、守備も1対1でたまたま取れるという感じだったけれど、今は周りを動かして、インターセプトを狙っている」と明かした。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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