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拳王がエディを破りGHC王座を初戴冠
“東洋の神秘”グレート・カブキが引退

ヘビー転向、他団体選手流入で激変の一年に

ヘビー転向から1年、拳王がGHCヘビー王座を奪った
ヘビー転向から1年、拳王がGHCヘビー王座を奪った【写真:SHUHEI YOKOTA】

 プロレスリング・ノアの年内最後の聖地興行となる22日の「Winter Navig. 2017」東京・後楽園ホール大会では、GHC4大タイトル戦や、“東洋の神秘”ザ・グレート・カブキの引退試合などが行われ、超満員となる1615人を動員した。


 2017年のノアは、大きな「変革」の1年であった。


 ノアは故・三沢光晴さんら、全日本プロレスを離脱した選手・スタッフが中心となって、00年8月に「自由…そして信念」をテーマに旗揚げ。東京・日本武道館での定期的な興行開催や、2度の東京ドーム進出など、一時は老舗メジャー団体をも凌駕する人気を集めたが、三沢さんの死去や主力選手の退団・離脱が相次ぎ、観客動員数が低迷。昨年11月をもって、ITシステム開発会社エストビーに事業譲渡され、元全日本プロレス社長の内田雅之氏が新たに会長に就任した。


「NOAH the REBORN」というテーマを掲げる新体制への「変革」の波は、昨年末に大きな2つの事件として訪れた。


 まずは、2年間にわたってノアマットを蹂躙してきた鈴木軍が「撤退」。鈴木軍は主戦場を新日本プロレスに戻し、1.5後楽園ホール大会に大挙して乱入。大将・鈴木みのるがIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカをスリーパーで絞め落とす光景は、大いなるインパクトを与え、すぐさまIWGP戦線に割り込んでいった。


 この鈴木軍撤退に伴い、手薄になったヘビー級戦線に活躍の場を求めて、ジュニア戦士の小峠篤司、拳王が相次ぎヘビー級転向を表明。主力を欠いたジュニア戦線には、インディー団体出身の選手が多数参入し、後に正式入団した。


 当時、GHCジュニアヘビー級王者であった小峠は、原田大輔との「桃の青春タッグ」で、新日本の邪道&外道組からGHCジュニアタッグ王座を奪還した直後に、両王座の返上及びヘビー級転向を表明。パートナーの原田の気持ち、そしてファン心理を置き去りにした行動は、鈴木軍以上にベルトをないがしろにする行為とも言え、1年たってもなお、小峠に対しファンからはブーイングが起こっている。


 鈴木軍が猛威を振るっていた2年間は、ファンも選手も「対鈴木軍」で一致団結し、「ベルトをすべてノアに取り戻す」という、ただひとつの航路に向かって方舟の舵が握られていた。その大きな障壁がのぞかれた今、コンパスはいったいどこへ向けられるのか、誰が船頭となって舵を取るのか、まだその答えは見えていない。


 ジュニアの選手がヘビー級に転向すること、他団体出身の選手が参入することは、いずれも、決して悪いことではない。ノアのヘビー級の代表格である丸藤正道、杉浦貴、中嶋勝彦、KENTA、そして、かつては三沢さんも、ジュニアで天下を取った後に、ヘビー級に鞍替えしている。また、近年の新日本マットでIWGPジュニア王座戦線を活気づけた飯伏幸太、ケニー・オメガ、KUSHIDA、BUSHIは、みな他団体からの移籍組だ。大切なことは、階級や出身がどこかではなく、そこに団体へのリスペクト、ベルトへの愛があるのかどうか、だ。クリスマス直前の聖地大会で、最後にリング上で向かい合った2人の男こそ、新たな時代を切り開くカギを握る存在であることは間違いない。変わ り行くノアの空気を敏感に察知した観客も、会場に戻ってきつつある。この1年間で大きく様変わりしたエメラルドグリーンのマット上が、創業者の三沢さんと直接かかわりのなかった世代・団体の選手たちによって、来年はどのような“色”に染まっているのか。


 なお、今年のタイトル戦線では、GHCヘビー級王座戦では、昨年10月以来、7度の防衛に成功していた中嶋勝彦を破り、8.26後楽園でエディ・エドワーズが初戴冠。GHCタッグ王座では、拳王&マサ北宮の戴冠即返上からはじまり、杉浦貴&拳王、丸藤正道&マイバッハ谷口、潮崎豪&小峠篤司、モハメド ヨネ&クワイエット・ストームと短期で移動。GHCジュニア王座は、大原はじめが悲願の初戴冠を果たすも、石森太二、HAYATA、石森、原田大輔とめまぐるしく移動。GHCジュニアタッグ王座は、石森太二&Hi69、HAYATA&YO−HEIと初戴冠が相次いだ。ジュニアではRATEL’Sが3本のベルトを独占したものの、全体的に短命王者が続き、「不動のエース」誕生とはならなかった。

ヘビー転向1年で拳王が戴冠 海外から戻った清宮が挑戦へ

海外武者修行から戻ってきた清宮(左)が挑戦を表明
海外武者修行から戻ってきた清宮(左)が挑戦を表明【写真:SHUHEI YOKOTA】

 この日のGHC4大タイトル戦では、最後に大きなサプライズがあった。


 メインイベントのGHCヘビー級選手権試合では、拳王がエディ・エドワーズを倒し、王座初戴冠。試合後、海外遠征中の清宮海斗が現れ、王座挑戦を表明した。


 拳王は日本拳法のバックボーンを持ち、みちのくプロレスの新崎人生にスカウトされて08年3月にデビュー。だが、11年にノアに参戦したことをきっかけに、東北ジュニア王座を返上し、14年よりノアへ本格参戦。昨年末よりジュニアからヘビー級に転向し、今年の「グローバル・リーグ戦2017」優勝決定戦で潮崎を破り初優勝。12年前、ノアの練習生であったエドワーズへの王座挑権を手に入れた。


 エドワーズは鋭いチョップ連打で拳王の胸板を切り裂き流血させると、さらに尊敬する三沢さんの技であるエルボー、タイガードライバーを発射。拳王も対抗意識を見せ付けるように、雪崩式ドラゴンスープレックス、ダイビングフットスタンプを繰り出していく。するとエドワーズは、エルボー、タイガースープレックスからのタイガードライバー91を解禁。さらにボストンニーパーティから必殺技のダイハードを狙うが、拳王が阻止してハイキック2連発。うつぶせ状態にダウンしたところへダイビングフットスタンプをブチ込み、仰向けになったところへもう1発。20分を超える激闘を制し、ヘビー級の頂点に君臨した。


 ベルトを掲げ、「ノアを創った三沢さんに関わりのないヤツが初めて獲ることができた」と新時代到来を訴えた拳王だったが、その前に現れたのが、すっかり今風のイケメンへと変貌した清宮だった。


 清宮は高校卒業と同時にノアに入門し、15年11月にデビューを果たした21歳。デビュー直後から将来を有望視され、鈴木みのるとの一騎打ちも体験。今年1月からは「強くなりたい」と杉浦貴との共闘を直訴し、6月からはカナダへと海外修行に出ていた。


「海外から帰ってきました。今のオレなら、拳王さんに勝てると思う。オレにそのベルト、挑戦させてください」と、堂々と訴える清宮に対し、拳王も「今いるノアの中途半端なレスラーより、お前の目は本物だったぞ。おい、清宮。このベルトに挑戦させてやる」と、その場で受諾。「武道館に連れてってやるから、クソヤロー共、オレについて来い!」と、改めてかつてのホームリングであった日本武道館大会の実現を約束した。


 海外武者修行に出ていた若手レスラーが、大変貌を遂げた上で予告なしに凱旋帰国し、いきなり王座に挑戦して、しかもベルトを獲ってしまう、というのは、ここ最近、メジャー団体で割とよくある流れだが、実際に若手の登場でタイトル戦線が大いに活気づき、新規ファンの獲得に繋がっているのも事実。若くてイケメンで団体の生え抜きという期待の星の登場で、早くもノアファンからは新王者誕生を願う声も噴出。来年は、プロ野球・日本ハムファイターズ入団を果たしたルーキー・清宮幸太郎と共に、プロレス界でも「清宮フィーバー」が吹き荒れるか。

高木裕美

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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