【ボクシング】ロマチェンコ、異次元の強さ見せつけ圧勝 歴史的評価を上げるべく3階級制覇へ

杉浦大介

アラム氏「こんな選手はこれまでに見たことがない」

4戦連続でロマチェンコの相手はフルラウンドを持たずに棄権したことになる 【Photo by Steven Ryan/Getty Images】

 これでニコラス・ウォーターズ(ジャマイカ)、ジェイソン・ソーサ(米国)、ミゲル・マリアガ(コロンビア)に続き、4戦連続でロマチェンコの相手はフルラウンドを持たずに棄権したことになる。

 スピード、スキル、手数、ディフェンス、ポジショニングの良さで相手を袋小路に追い込み、絶望感を与えるのがロマチェンコの“ハイテク”ボクシング。鍛え上げられたボクサーを大舞台で諦めさせてしまう。それは一発でKOしてしまうのと同等に、いや、ある意味でそれ以上に難しいことなのではないか。

「歴史に刻まれる特別な何かを目撃しているのだろう。私はこれまで(シュガー・レイ・)レナード、(マービン・)ハグラー、フロイド(・メイウェザー)、(マニー・)パッキャオといった偉大なファイターたちを目にしてきた。しかし、こんな選手はこれまでに見たことがない」

 プロモーターの大言壮語は真剣に捉えるべきではないと分かっていても、87歳になったアラムの興奮ぶりは理解できた。ロマチェンコはまだプロで10勝(8KO)1敗に過ぎない。それでも現代に生きる私たちが、歴史的なボクサーとリアルタイムで邂逅(かいこう)しているのは間違いなさそうである。そして、これほど評価が上がっているからこそ、今後のマッチメークは容易ではなさそうだ。

次のターゲットはWBC王者のベルチェルトか

次のターゲットはWBC王者のベルチェルトか(右)。ただ、ベルチェルト側が試合を受けるかどうかは分からない 【Photo by Joe Scarnici/Getty Image】

 ロマチェンコを抱えるトップランク社のカール・モレッティは、リゴンドー戦後の会見時、スーパーフェザー級に残るならWBC王者ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)との統一戦が目標と述べていた。

 メキシカン王者が相手なら米国内でも希求力がある。ただ、7月に三浦隆司(帝拳)に勝って初防衛に成功後は試合を行っていないベルチェルトは、せっかく奪ったベルトを換金(=防衛戦で稼ぐ)する前に、リスキーなロマチェンコ戦を受けるかどうか。この統一戦が難しいとなれば、遠からずうちにライト級で3階級制覇を狙うことになるのだろう。

「ロマチェンコは誰とでも戦う。ライト級に上げても、(ホルヘ・)リナレス(ベネズエラ)、(マイキー・)ガルシア(米国)が相手でもジョークみたいな試合にしてしまう。ガルシアは良い選手だが、KOされそうだと思ったら彼も棄権してしまうさ」

 アラムはそう嘯(うそぶ)いたが、名前の通った強豪がそろったライト級での戦いはやはり楽しみである。逆に言えば、ロマチェンコが歴史的評価をさらに上げるために、WBC世界ライト級王者ガルシア、WBA同級王者、WBC同級暫定王者リナレスといったビッグネームとの対戦が必要になってくるとも考えられる。

 ESPNで中継されたリゴンドー戦は、今年度のすべてのボクシング中継中で2位(1位は7月のパッキャオ対ジェフ・ホーン(オーストラリア)戦)という好視聴率をマーク。ロマチェンコが“次の段階”に進むべく、さまざまな意味で準備は整い始めている。今まさにピークにいるウクライナの拳豪からしばらくは目を離すべきではない。現代に生きる私たちは、ボクシング史の主要な1ページの目撃者になっているのだろうからだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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