「すべてが成長した」ラグビー日本代表 “選手の声”を生かして新しい形へ
苦手のトンガに快勝、強豪フランスと引き分け
フランス代表戦で突破する日本代表のリーチ主将 【写真:アフロ】
2年後に日本、そしてアジア初のラグビーワールドカップ(W杯)開催を控える日本代表は、秋のシリーズ前半戦は10月28日に世界選抜に27対47、11月4日に世界3位(対戦時)のオーストラリア代表に30対63とディフェンスが機能せず大敗し、ファンを心配させた。個人的には立ち上がりで相手に得点を許してしまい、勝つ流れに持ち込めなかったことがやや気がかりだった。
ただ日本代表は実質的な休みは中1日で、11月7日に再集合し翌8日に渡仏、19日のトンガ代表戦、26日のフランス代表戦に備えた。結果は2011年W杯から4連敗とエディー・ジャパン時代も勝てなかったトンガ代表に39対6と快勝し、過去9戦勝利なしのW杯準優勝3回の強豪フランス代表にはアウェーながら初めて23対23の引き分けと、欧州遠征では国内の2戦とは見違えるようなパフォーマンスを見せた。
就任して以来、2度目の欧州遠征だったジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は「(前半戦の2試合は)準備が短すぎた。その後、すぐにフランスに入り多く時間を過ごしたことによって、前の2試合の反省を生かしたチーム作りをし、次の2試合で誇れるようなパフォーマンスを出せた。また遠征に行くと結束感が生まれて、ほかの国に行くと一体感が生まれる。リーダー陣もチームをうまく指揮し、ほかの選手も学ぶ姿勢があったことが、すべての相乗効果につながった」と振り返った。
新しいディフェンスシステムが機能
マフィとリーチによるダブルタックルでトンガ代表を押し戻す 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】
さらに、相手の元東芝のWTBクーパー・ブーナはなかなか捕まえることはできなかったが、個々のタックルの精度は上がっており、フィジカルバトルでも後手を踏まなかった。キャプテンのFLリーチ マイケルは「オーストラリア戦のスタッツが悪かったので、毎日タックルスキルの練習があった。(欧州遠征の)最初の1週間、ブラウニー(トニー・ブラウンアタックコーチ)がいなかったからコンタクト練習が多くなった(笑)」と振り返った。
また特筆すべきは組織ディフェンスの向上だ。昨年秋のジョセフHC就任以来、「ティア1」と呼ばれる世界ランキング10位以内の格上のチームに勝てていないため、今秋から2019年を見据えて攻守にわたり新しい形を試していた。特にディフェンスは2016年のスーパーラグビー優勝チームであるハリケーンズ(ニュージーランド)を支えるジョン・プラムツリーを招聘。「T−システム」と呼ばれる、より前に積極的に出るディフェンスシステムを新たに採用した。
そのため、前半戦の2試合では、ディフェンスの人数が足らなくても、エリアに関係なく積極的に前に出たことで、外やショートパスで抜かれて、トライに結びつけられてしまっていた。そこで、リーチら選手サイドから「(どこでも前に出るのは)一つの反省で、もっとこうした方がいいと言った」という。
選手の意見も採用して新たな形へ
フランス代表のトライを阻止したCTB立川のタックル 【写真:ロイター/アフロ】
「(ディフェンスの人数が相手より少ない状況では)流すときは流して、タッチラインがあったら(相手の攻撃できるスペースが狭くなるので)前に出てラインスピードを上げる」(リーチ)ことでトンガ代表をノートライに抑えて39対6で勝利した。続くフランス代表戦でも「相手の大きなBKを止めていた」とジョセフHCが褒めたように、組織ディフェンスは機能し、23対23と初めてフランス代表に引き分けた大きな要因となった。