「すべてが成長した」ラグビー日本代表 “選手の声”を生かして新しい形へ
堀江「どの試合でも相手のディフェンスが嫌がっていた」
フランス代表戦でトライを奪ったHO堀江。経験豊富な堀江も手応えを感じている 【写真:アフロ】
ラインアウトのサインプレーからトライを挙げたり、近場でSHからのワンパスをもらうために走り続けたりしていたHO堀江も「味方のくせや自分たちの戦い方も理解できて、試合を重ねるごとにどう戦うかができるようになって、一番、最後(のフランス代表戦)が動きやすかった。どの試合でも相手のディフェンスが嫌がっていた。良いところがいっぱい見られたと思う」と手応えを口にした。
さらにフランス代表戦では、相手が前に出てくるディフェンスではなく、待って流してくるディフェンスだったため、先発SHに田中ではなく、流大を起用し、従来までのキッキングゲームではなく、パス&ラグビーを指向する柔軟性を見せた。スタジアムが屋根付きの人工芝でパス&ランラグビーに向いていたことも理由の一つだっただろう。特に後半開始早々、相手キックオフ後、自陣から10次にわたって左右にボールを振り続けて挙げたトライは日本代表のポテンシャルを世界に知らしめた。
新戦力の台頭でポジション争いも激化
秋の日本代表で大きくアピールしたFL/LO姫野 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】
またメンバー構成を見るとトヨタ自動車のルーキーFL/LO姫野和樹は十分にポテンシャルを発揮し、ヴィンピー・ファンデルヴァルトも本来のポジションではないLOで身体を張り続けた。またサンウルブズですでに実力を発揮していたPR具智元は遠征で初キャップを獲得し、ケガから復帰したWTBレメキも持ち味を発揮するなど新戦力の台頭は確実にチーム力向上をもたらした。
FW陣に関してはサンウルブズのLOサム・ワイクス、FL/LOヴィリー・ブリッツらも来年には代表入りが確実視されているため、今後はますます層が厚くなっていくことは必至だ。
さらにBKは逆に国際経験豊かな選手が多く、WTBにはケガをして今回の遠征に参加できなかった山田章仁もおり、今回のメンバーに割って入っていくことはなかなか難しいのが現状だ。ただ司令塔のSOには田村以外にもう1人ポジションを争う選手が出てきてもいいだろう。CTB立川もSOとしてプレーできるが、CTBにマレ・サウの代表復帰があるのであれば、所属のコカ・コーラでSOでもプレーしているラファエレ ティモシーのSOを試してみてもいいかもしれない。
「チームカルチャーが見えてきて成長できた」
攻守に大活躍したFB松島。チームにとって欠かせない存在となっている 【写真:ロイター/アフロ】
過去2度W杯を経験している前キャプテンのHO堀江は「あまりピークが早くくると(W杯前に)下がっちゃうので、同点でみんな悔しい気持ちを持ったことがいいことだと思います。ドローで満足していないのが非常にうれしかった」と言えば、リーチキャプテンは「チームがより一体感を持ち、チームカルチャーが見えてきて成長できた遠征でした。トンガ代表に勝ったし、プロセスが結果につながって、みんな(やっているラグビーを)信じ始めている」とチームの進化を実感していた。
またジョセフHCは「すべての面で成長した。ディフェンスはプラムツリーが参加してくれて、彼が経験を生かして強化してくれた。アタックは(遠征2試合で)違うゲームプランを持って試合に入ったが、選手たちは違う特徴を持つチームに違う戦い方を遂行できるようになってきた。(2019年に向けて)間違いなくいい土台が作れたと思います。このままW杯に向けて進んでいけると思います」と先を見据えた。
いずれにせよ、2019年に向けたジェイミー・ジャパンの軸となる戦いがハッキリと見えた、実りの多い秋の欧州遠征だったと言えよう。