ビジネスのプロがエティハドに集結? SAPスポーツサミットに潜入
シャークスは投資対効果が33倍にアップ
シャークスはいくつかのシステムに分かれていたデータを統合し、マーケティングに活用している 【写真:SAPJAPAN】
米国の企業は一般的に営業活動をプロセス化するのに長けている。シャークスもソフトウェアを導入する以前からシーズンチケット、ラウンジチケットなどの高額チケット商品を販売するプロセスを確立していたそうだ。ビジネス・インテリジェント部門を統括するネダ・タバータバーイ氏は語る。
「シャークスはビジネス・インテリジェント部門を設立し、高額なチケット商品を売るためのマーケティング・営業プロセスも整ってきています。しかし、シャークスのファンをもっと増やしていくため、データドリブンに業務をもっと高度化していきたかったんです。いくつかのシステムに分かれて管理されているファンのデータを統合し、ファンの理解をもっと高めて、ファンのLTV(ライフタイムバリュー)最大化に努めていきたいと考えています」
タバータバーイ氏は最も効果のあったキャンペーンとして、フェイスブックを使った広告配信キャンペーンを紹介してくれた。
1)昨年のシーズンパス購入者向けに、事前販売期間を設ける
2)昨年のシーズンパス購入者向けに、事前販売の案内をメールで配信
3)メールは開封したが、事前販売期間の期限までに翌年度のパスを購入しなかった人をリスト化
4)リストを対象にフェイスブックを使って広告を配信
今までもフェイスブックで広告配信を行っていたが、このキャンペーンはこれまでと比較してマーケティングの投資対効果が33倍も向上したそうだ。
IT活用で日本と海外の差は開くばかり
エティハド・スタジアム内で開かれたディナーの様子 【写真:SAPJAPAN】
しかし、今年は「Why」の議論はすでに終わっていて、「What(何を)、How(どうやってスポーツ業界でITを活用すべきか)」について、ユーザー同士が情報を共有し合うことに重点が置かれていた。スポーツ業界のIT活用に対する成熟度が高まった証しだろう。
また、日本から見ると“海外”とまとめてしまいがちだが、欧州と米国ではIT活用に関して考え方が異なるようだ。欧州の人たちは、既に発生しているコストの削減効果を見込んでIT活用を考えていた。米国の場合、顧客との接点が中心かつ、新しい技術優先でIT活用を考えているように見受けられた。
日本のスポーツビジネス市場ではどうなっていくだろうか。
ひとつだけ確かなことは、日本のスポーツビジネスの場合、オペレーションに今まであまりコストをかけていないため、現時点で削減可能な余剰コストが少ないということ(決して悪い話ではない)。この場合、新たな価値を生み出す投資を検討することになるのだが、ここでは慎重に時間をかけて戦略を練るのではなく、素早くデザインと試作を繰り返すことが良いとされている。SAPではソフトウェアとセットでイノベーションを具現化するための方法論を顧客に提供しており、ドイツサッカー協会にも同様の方法論を提供してソフトウェアの共同開発を行った。
ドイツサッカー協会と実施したデザインシンキングのワークショップ風景 【写真:SAPJAPAN】
「私たちだってリソースに余裕なんかまったくありません。人もいなければお金もたいしてない。でも、もっとファンを増やしたいし、活動資金を増やさなければならない。 だから、ITを使って効率化を図ったり、自動化にチャレンジしたりしているんです。人とお金がないのはIT採用の理由にはなっても、非採用の理由にはなりませんよ」