高校球界の神宮大会への意識が変化!? 勝負に徹した明徳義塾が秋の日本一
亡き母に捧げる神宮大会優勝
明徳義塾は36年ぶり2回目、名将・馬渕監督(写真右)にとっては神宮大会初優勝となった 【写真は共同】
第48回明治神宮大会準決勝で静岡(東海/静岡)に5対3と逆転勝ちした後、明徳義塾(四国/高知)の馬淵史郎監督は涙を流しながら選手に言ったそうだ。初戦の中央学院戦(関東/千葉)で4失策をしながら5対3で勝った際には「しょぼい試合。田舎もんやけん」といつもの口調でぼやき、報道陣を笑わせていた。
その馬淵監督が流した涙の意味は、翌日の優勝後に明らかになった。
「実はお袋の告別式が昨日(準決勝の日)やったんですよ」
報道陣から涙の意味を問いかけられ、指揮官は初めて口を開いた。
「勝負の世界にいる以上、子供たちを預かっているんですから、親の葬儀にも出られないことはある。親不孝ばかりしてきました。さっき主将の庄野(太喜/2年)からウイニングボールをもらったので、帰って墓前に供えたい」
いつもの口調ではなく、しんみりした様子で話した指揮官。明徳義塾の選手たちにも当然隠していた事実だったが、密かに感じ取っていたようだ。優勝した時の喜び、主将・庄野がウイニングボールを手渡す姿に、それが表れていた。だからこそ、「優勝して監督さんを男にしよう」という声が自然と選手たちから出てきたのだろう。アッパレな優勝だ。
「勝つために」選手の交代なし
秋の高知大会、四国大会、神宮大会と1人で明徳義塾のマウンドを守ったエース市川 【写真は共同】
馬淵監督は野手陣も試合中に交代させることはなく、9人で今大会を戦いきった。決勝後、そのことを質問してみた。
「勝つためにはこれしかないですね。今日でも4、5点リードされれば(選手交代は)考えました。四国の神宮枠がかかっていますから」
勝負に徹した指揮官。明治神宮大会高校の部の意識は歴史を積み重ねることに少しずつ、そして確実に変わってきている。かつてはセンバツのプレ大会、甲子園の前哨戦という意識が強かったところもあったが、高校野球4大全国大会(明治神宮大会、春の甲子園、夏の甲子園、国体)として定着しつつある。
高校野球4大全国大会(4冠)全てを勝ったチームは1997〜98年の松坂大輔投手がいた横浜(神奈川)しかない。今年度、そこに挑む権利を手にしたのが、明徳義塾だ。横浜の4冠完全制覇から20年経つ。甲子園出場や優勝を目標にするチームもあるが、それ以上の4冠完全制覇という究極の夢を各チーム目標にして秋の大会を戦ってほしい。