球団19年ぶり新人王・京田陽太 低迷ドラゴンズの新時代を切り開く

ベースボール・タイムズ

挑戦者からつかんだ定位置

中日では19年ぶりの新人王を獲得した京田(左)。右はパ・リーグ新人王の源田(西武) 【写真は共同】

 11月20日に開かれたプロ野球年間表彰式において、中日の京田陽太が2017年のセ・リーグ最優秀新人に選ばれた。中日球団としては1998年の川上憲伸以来19年ぶり、内野手としては88年の立浪和義までさかのぼる栄誉となった。

 青森山田高から日本大へ進学して大学屈指のショートへと成長した京田は、昨秋のドラフト会議で中日から2位指名を受けてプロの世界へ飛び込んだ。デビューは開幕戦。「7番・ショート」でスタメンの座をつかむと、第2打席で巨人・マイコラスからプロ初安打を記録。その後、一度も2軍に降格することなく141試合に出場して残した成績は、打率2割6分4厘、4本塁打、36打点。プロ1年目に積み上げた149安打は、戦後の名スラッガー・江藤慎一が59年に記録した139安打の球団新人記録を塗り替え、“ミスタープロ野球”こと長嶋茂雄に次ぐセ・リーグ歴代2番目に堂々とその名を刻んだ。

 春季キャンプが始まった時点では挑戦者だった。ショートの本命は、昨季131試合に出場して自身初の規定打席もクリアしていた堂上直倫だった。キャンプからオープン戦としのぎを削り、シーズンが開幕した後も競争は続いた。京田がショートの定位置を手中に収めたのは、開幕から約1カ月が過ぎたころ。「プロが投げる球のスピードに慣れてきた」と5月の月間打率3割2分3厘、6月も3割2分6厘と高い打率を残した。打線に欠かせない存在となり、その地位を確固たるモノとしてみせた。京田はルーキーイヤーの成功について、「監督さんに使っていただいたことが大きい」と自己分析をする。本人は謙遜をするが、実際のところは“使わせた”という表現の方がしっくりくる。

飛躍を予感させた開幕前のサヨナラ打

 京田が堂上に競り勝つ情景を予感させる場面が、開幕前の2日間にあった。

 3月7日、愛知・小牧市民球場で行われた巨人とのオープン戦。この試合は京田が「1番・セカンド」、堂上は「7番・ショート」で出場していた。場面は4対6で迎えた9回裏。2死満塁で打席に立った堂上は、巨人・西村健太朗の前にセカンドゴロに打ち取られてゲームセットとなった。翌8日は場所を同・岡崎市民球場に移しての巨人戦。前日と同じように1対3の劣勢で9回裏を迎えると、1点を返してなおも1死満塁。マウンド上には再び西村。「9番・サード」で先発出場していた京田がセンターに鋭くはじき返した一打は、逆転の2点タイムリーとなり、チームに劇的なサヨナラ勝利を届けた。

 偶然に訪れたシチュエーション。この2試合ですべてが決まったわけではないが、この打席で京田の株が上がったことは事実。オープン戦の成績は、堂上が48打席に立って13安打1打点の打率3割1分。一方の京田は、打率こそ2割6分だったが、57打席とアピールの機会を多く与えられて計13安打5打点。京田は自身の開幕スタメンについて、「まさかないだろうと思っていたのでびっくりしました」と振り返っていたが、巨人戦でのサヨナラ打に象徴される印象度を考えると、不思議なことなど何もなかった。

 定位置を射止めた後の活躍は周知の通り。中日にとっては、井端弘和という名手を失って以来、一時は外国人に頼るなど混迷を極めていた正遊撃手の人材探しに一発回答。23歳ルーキーの成長は、チームに長期的なビジョンをももたらした。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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