球団19年ぶり新人王・京田陽太 低迷ドラゴンズの新時代を切り開く
竜の若手有望株が陥る2年目の壁
オープン戦で結果を残すと、開幕の巨人戦で先発出場し、第2打席で初安打も放った 【写真は共同】
例えば、2014年の秋に福岡ソフトバンクの育成選手だった亀澤恭平を支配下選手として獲得すると、移籍1年目に107試合に出場して打率2割6分9厘の好成績を残した。また、タイミングを同じくして入団したドラフト7位の遠藤一星も、1年目に4本塁打を放って正遊撃手の最有力に名前が挙がった。
しかし翌16年、二人は開幕戦の先発メンバーに名を連ねが、シーズンが終わってみれば亀澤は前年からおよそ半減となる59試合、遠藤はわずか27試合出場と期待を裏切った。今季でいえば京田との定位置争いに敗れた堂上も然り。その他でも、今季の正捕手定着に期待が膨らんだ杉山翔大は、自慢の打撃が鳴りを潜めて昨季104試合から39試合へと出番激減。若手の伸び悩みは野手に限らず、投手でも15年に2ケタ10勝を挙げた若松駿太や、14年に72試合に登板して防御率1点台を誇った福谷浩司が、1年限りの活躍で、その後は1軍と2軍を行き来している。
台頭はすれども、さらなる成長を遂げられない。それでも時間は容赦なく流れ、常勝の礎を築いたベテラン勢が次々に現役を退いていった。結果、彼らの代わりとなる主力は育たず、チームは弱体化した。これが5年連続Bクラスとなった実情だ。
パ新人王に抱いた劣等感を来季の原動力に
「西武の源田選手は……意識しました。(セ新人王のライバルであったDeNAの)浜口(遥大)投手以上に意識をしていました。向こうはシーズンをフルで出て、チームもCS(クライマックスシリーズ)に出場していた。いろいろな方が『西武は源田が入って変わった』と言っていたが、僕は(中日に入っても)変わらなかったことが悔しかった。もっとチームを勝たせられるような選手になりたいと思います」
源田が入団した西武は、昨季の4位から2位へと躍進。一方、京田のいる中日は6位から5位と順位を一つ上げただけ。その事実に悔しさをにじませていた。その感情は、劣等感とも言えた。そこから立てた京田の来季の誓いは“勝利への貢献”。そのための課題も把握し、秋季練習から打席内でのタイミングの取り方に改善を加えている。今季終盤に打率を下げた原因は、対戦相手の攻め方が変ったことから打撃の繊細な感覚が狂わされていたこと。慢心することなく、早くも来季に向けた備えを始めている。
京田が2年目の壁を乗り越え、さらに高い階段を登った先には、竜の新たな時代が待っていることだろう。しかし京田がこれまでの有望株と同じように壁に跳ね返されれば、竜の低迷期が続くことは想像に難くない。5年連続Bクラスと低迷する中日にとって、その存在はそれほど大きな意味を持っている。竜にとっての希望と絶望は、京田が見せる来季の姿にある。
(高橋健二/ベースボール・タイムズ)