今季の日本ハム投手陣を振り返る 吉井コーチの指導スタイル(7)

菊地慶剛

「ニューフェースが出てきて欲しかった」

3試合の先発を含む37試合に登板した石川直也。吉井コーチの評価も高い 【写真は共同】

 次に中継ぎ陣だ。シーズン後半はかなり安定した投球を続け、結果的には中継ぎ陣の防御率はリーグ2位の3.16を残した。しかし吉井コーチが期待したチームB(若手中継ぎ陣)からチームA(主力中継ぎ陣)を押しのけるような存在は出てこなかったようだ。

「チームAの投手が皆ベテランになりピークに達している部分があるので、ズバンと突き抜ける若手が出て欲しいなと思っていたんですけど、残念ながら今年はいなかったですね。すでに鍵谷(陽平)や白村(明弘)は中堅として期待される存在になってきているので、本当にニューフェースがもっと出てきて欲しかったですね」

 今年はシーズン途中にチームAだった谷元圭介投手が中日に移籍、さらにこのオフにはマーティンが退団し、増井浩俊投手の残留も微妙なところ。来シーズンは若手の台頭が絶対不可欠な状態だ。

「(外国人投手に頼らず)日本人の中で2人くらいはチームAに入る投手が出てきて欲しいですね。具体的には田中(豊樹)、石川(直也)、公文(克彦)ら……、この辺がドンと出てきてくれると、すごく楽になるのかなという気がしています」

 来シーズンも先発陣、中継ぎ陣ともに若手投手の台頭を願う吉井コーチだが、投手自らが課題を見つけ主体的にそれに取り組ませようとする根本的な姿勢は揺るぎない。秋季キャンプでの指導方針にも“吉井色”が明確に現れている。

「秋季キャンプは11月後半から1月、2月を計画的に過ごしてもらうための教育期間だと思っています。また(シーズンが終わったばかりで)気持ちの切り替えが必要なので、練習はしているけれどオフのような感覚で、リラックスした気持ちで自主トレに移行してもらうように考えています。ここでオンにしてしまうと、キャンプが終わった途端にオフになって、そのまま自主トレもオフになってしまう選手も多いですからね」

 この辺りにも吉井コーチの指導プランはまさに選手視点で、1年を通して考えられているのが理解できるだろう。今回を含め7回にわたり吉井コーチの考え方や指導方法を具体的に紹介してきた。日米両国で現役を過ごした特異な経験に加え、引退後は筑波大大学院でコーチング学を学ぶなど、プロ野球界でもユニークな指導を続ける吉井コーチ。本人も「まだまだ少数派」と指摘する通り、まだ球界の一般常識として受け入れられているわけではない。だが吉井コーチの取り組みが、必ずやプロ野球界に新たな潮流を生み出すことになると信じて止まない。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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