今季の日本ハム投手陣を振り返る 吉井コーチの指導スタイル(7)

菊地慶剛

今季10勝13敗、防御率4.74だった有原について、吉井コーチは「3年目の壁に跳ね返されたようなシーズン」と見ている 【写真は共同】

 2017年は2年ぶりに福岡ソフトバンクが日本一を奪還し幕を閉じた。一方、2連覇を狙った北海道日本ハムは、開幕から首位争いに加わることなくリーグ5位に終わった。これまで自らのコーチング理論を語ってもらった吉井理人投手コーチに、連載最終回となる今回、今シーズンの日本ハム投手陣について振り返ってもらった。
 まず投手全体についてだが、今シーズンのチーム防御率はリーグ4位の3.82だった。日本一に輝いた昨年は両リーグトップの3.06だっただけに、やはり投手陣の不振もチーム成績に影響したのは否めないところだ。だが今シーズンの大きな目標として、若手投手のさらなる成長を掲げていた吉井コーチは、実りのあった1年だとし、以下のように話してくれた。

「成績だけ見ると目立った活躍をした投手はいないのですが、個々の成長を見ると割と順調に来ているのかなという感じですかね。ゲーム展開とか運とかが向けばブレークしていたかもしれない選手が何人かいましたね」

 そこで吉井コーチから見た成長具合を、先発陣、中継ぎ陣に分けながら具体的に説明してもらった。

 まず先発陣だが、以前も紹介したように、吉井コーチは新しい試みとして成長が期待される有原航平、加藤貴之、高梨裕稔の若手3投手を対象に、登板翌日に本人に投球を客観的に分析させる“振り返りの時間”を設けてきた。シーズン終盤には三者三様ながら、その成果が出てき始めたと言う。

 それぞれの投手についてはこう語る。

有原について

「何回か2軍での登板がありましたが、ほぼ1年ローテーションを守ってくれました。その中で結果的には(プロ)3年目の壁に跳ね返されたようなシーズンでしたけど、考え方も含めてアマチュア時代から取り組んでいるものをレベルアップしないといけないことに気づき、取り掛かったというのが大きかったと思います。それに気づかずに(従来のやり方を)押し通してダメになってしまう選手も割と多いですからね。

 打たれた場合の振り返りの中で『ストライクを投げ急ぎすぎました』という発言が多くなって『もっとインコースを使わなければいけない』というところから、『ストライクからボールになる変化球を使わなければいけない』と気づいていった感じですね。まだまだ自分の能力だけでやっている部分があるんですけど、少しずつ変わってきたのかと思います」

加藤について

「加藤は調整方法などやらなければいけないことがしっかりしていて、そこの部分は考えがまとまっている気がしていました。それは去年の後半ぐらいから感じていて、今年はそれがより明確になってきました。練習方法も全然ぶれないですし、調子が悪くなった時でも(練習内容を)変えていくべきところもしっかり理解している感じでした。

 結果的には6勝していますし、最終的には(投球内容も)去年と同じぐらいか、少し良くなった気がしています。今までは『打たれちゃいけない』と気持ちが強すぎてやられることもあったんですけど、そこを『自分の役目は6、7回を投げてチームが勝てるチャンスをつくれればいい』という考えになり、立ち上がりの入り方もうまくなったと感じています。精神面も1つ上に上がった印象です」

高梨について

「高梨は今年一番苦労したと思っています。振り返りの中でも自分が何をしたらいいのか分かっていないというか、混乱していた1年だと思います。それがシーズンの終わりにようやく何かに気づいた感じがあって、秋季キャンプでは自分が思う練習方法にしっかり取り組んでくれています。どんな投手にもそういう時期があると思うので、そこで気づいてくれたので、(彼にとっても)意味があったのかなと今は思っています」

新たな若手先発投手の台頭に期待

 日本ハムにとってこの3投手が先発として一本立ちしてくれるかどうかが、来シーズンの大きなカギになる。また大谷翔平選手のMLB挑戦が決まり、新たな若手投手の台頭が必要になってくるが、それについてはどう考えているのだろうか。

「もともとは3人と一緒に振り返りをやろうと思っていたのが上沢(直之)です。結果的に彼の場合は2軍の方が長くなってしまったのでできませんでしたが、本当は今年から(先発枠に)入ってきて欲しかったです。でもシーズン後半の活躍や練習のやり方を見ていると、(自分のやるべきことを)分かってきた感じはしましたね。他には今年2勝してくれた吉田(侑樹)が5、6番手でいいので、ローテーションに入ってくれたらいいなと思っています」

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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