【全日本プロレス】ドーリングがヨシタツに圧勝で初防衛 「最強タッグ」に向け各チームが火花

高木裕美

ドーリングがヨシタツを粉砕し、三冠王座初防衛に成功 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 全日本プロレス「2017 STARTING OVER 〜Jr.TAG BATTLE OF GLORY〜」最終戦となる9日の東京・後楽園ホール大会では、1241人を動員した。

 メインイベントの三冠ヘビー級選手権試合では、新王者ジョー・ドーリングに元WWEスーパースターのヨシタツが挑戦。ドーリングが体格差を生かした圧巻のパワーファイトで初防衛に成功した。

ヨシタツ、2度の「戦力外通知」も再起し三冠挑戦へ

ヨシタツ(左)は周りからの評価にも負けず、三冠挑戦のリングに上がったが…… 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 ドーリングは10.21神奈川・横浜文化体育館大会で諏訪魔を破り、約2年9カ月ぶりに王座返り咲き。16年春には悪性脳腫瘍が発覚し、一事は命すらも危ぶまれながらも、奇跡のカムバックを遂げたドーリングの戴冠劇に、会場は祝福ムードに包まれるが、それをブチ壊したのがヨシタツだった。

 ヨシタツは新日本プロレスでデビューし、同期であった中邑真輔より先駆けてWWEに移籍。14年10月より古巣・新日本に復帰し、「WORLD TAG LEAGUE」では棚橋弘至のタッグパートナーに抜擢(ばってき)されたが、直後に第二頸椎粉砕骨折の重傷を負い、約1年半にわたり長期欠場。昨年4月に復帰したものの、目立った活躍は見せられず、自ら立ち上げたハンタークラブは自然消滅。タグチジャパンのスタッフも1カ月で解雇され、新日本を離脱。今年7月には全日本の「王道トーナメント」に参加し、1回戦で元WWEの先輩であるTAJIRIに勝利するも、2回戦で当時の三冠王者・宮原健斗に敗退していた。

 WWE、新日本から「戦力外通知」を受けた上、全日本マットでもまったく実績を残していない男の至宝挑戦に、会場のファンからは大ブーイング。王者ドーリングからもショルダータックルで「拒絶」されたヨシタツだったが、“三冠挑戦査定試合”の意味合いを含んだ11.5名古屋大会での秋山準との一騎打ちにヨシタツロックIで勝利。辛くも挑戦権剥奪は免れた。

2人の差は広がるもヨシタツ「期待感を背負って挑戦したい」

ドーリングのレボリューションボムで終止符。ヨシタツはファンの低評価を覆すまではいたらなかった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 一部ファンからは「ヨシタツ」チャントが飛ぶものの、圧倒的な「ジョー」コールの中、試合開始のゴング。ドーリングはヨシタツのタックルを軽々と受け流すと、ドロップキック、ジャンピングニー、場外マット上でのDDTにもひるまず、タックルでなぎ倒す。リングに戻し、ドーリングがボディースラム、逆エビ固め、背中へのチョップをたたき込むと、ヨシタツもニールキック、ミドルキック。

 5分が経過し、ヨシタツがドラゴンスクリュー2連発から足4の字固めでとらえるも、ドーリングは涼しい顔で楽々とロープエスケープ。ならばとヨシタツは顔面ウォッシュ、スワンダイブ式ミサイルキックを繰り出すが、オリジナリティーのなさと、精度を欠いた空回りなファイトに、場内からはため息や嘲笑まで起こる。ドーリングは腕をつかんでラリアットをブチ込むと、さらに豪快なボディーアタックからのレボリューションボムで完勝。わずか10分あまりのあっけない幕切れとなった。

 9年前はWWEのファームでライバル関係にあったという両者。ドーリングは悪性脳腫瘍、ヨシタツは第二頸椎粉砕骨折と、共にレスラー生命を左右するほどの大病を克服しての対戦となったが、怪物っぷりを発揮したドーリングに対し、ヨシタツは日本でのファイトに対する低評価を覆すことはできなかった。

 敗れたヨシタツは「昔はジョーとやって負けたことがなかったけど、すごい選手に成長していた」と、この9年間で大差をつけられたことを実感した上で、「三冠の舞台はすごい気持ち良かった。次に立つ時には、お客さんの支持を得て、期待感を背負った上で挑戦したい」と、今後の戦いで全日本マットで認められる存在となるとアピール。まずは目前に迫った「世界最強タッグ決定リーグ戦」での奮闘を誓った。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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