松岡修造も驚いた、国枝慎吾の金宣言 東京パラまで「まだまだ進化できる」
WOWOWのドキュメンタリー番組「WHO I AM」のイベントに参加した(左から)松岡修造、マールー・ファン・ライン、国枝慎吾、サプライズゲストで出演した俳優の西島秀俊、朝原宣治 【スポーツナビ】
以下、トークセッションのダイジェスト版を掲載する。
国枝が妻だけに明かした本音
リオパラリンピック出場に関して、松岡(左)が国枝と奥さんの裏話に迫った 【スポーツナビ】
国枝 今回は本当に負けて良かったと(思いました)。僕は結構、強気なコメントが多いのですが、家では弱気なコメントをしていて、妻に今回は頼ったところもありました。一緒にリオに出るか出ないかを悩み、結論まで苦悩しました。やはり公の場では言えず、家で妻にしか言えないことがいっぱいありましたし、弱い自分を見せられるところが家だった。しかし、それが僕にとっては救いだった。
松岡 僕らが知っている国枝さんは最強なんですよ。嫌な言い方ですが、最弱を見ている奥さんがどういった力になりますか?
国枝 僕は、強気な発言で自分自身にプレッシャーをかけていくタイプ。それで奮い立ってきたんです。ただ、昨年はそんな状況ではなかった。でも、メディアの前で弱気な発言をすると、それが世界のライバルに伝わる可能性が十分あるので、弱気なことは言えない。それで正直なところ、うそをつくこともありました。メディアの前では「コンディションが良い」「万全だ」「良い動きが取れる」と。本心では、そんな状況ではないと分かっていたので、それをどこかで吐き出さないと、僕自身がプレッシャーでやられそうになっていた。妻がいなかったら、リオの舞台に立てていなかったし、(ダブルスでの)銅メダルも獲得できていなかっただろうなと思います。
松岡 じゃあ、僕にもうそをついていたということですね?(笑)
国枝 そうですね(笑)。
松岡 マール―さんは家族と一緒にどのように歩んでこられたのでしょうか?
マールー 家族は大きな支え。自分の場合は彼氏がウィルチェアー(車いす)レーサー(車いす陸上のステファン・ルス)で、同じアスリートとして共感できる部分や支え合える部分がすごく大きくて、自分がナーバスになっているときも、自分の心をほぐしてくれます。オリンピック選手がそうではないと言いたいわけではありませんが、やはりパラリンピアンは(家族の)支えがないと競技ができない。自分勝手ではいけないし、自分ばかりのことを考えてはいけない。家族と周囲の人と一緒に歩んでいかなくてはいけないので、家族の支えは絶対に必要だと感じます。
「人生はチャレンジだ」と自分の人生で語りたい
国枝 僕は9歳の時に脊髄のがんで車いす生活になりました。がんは生死に関わるもので、それを乗り越えると、一度死んだ気で物事に当たれる。あとはチャレンジをするだけだと思ったので、思いっきり何でも挑戦をしていこうと思いました。プロに転向したこともそうですし、また勝ち負けはもちろんですが、自分自身の限界に挑戦していくことも含めて、人生は本当にチャレンジなんだと。そういうのを僕の人生では語っていきたいと思っています。
マールー 私は生まれた時から(障がいが)あったので、何か途中でどん底に落ちてという思いはしていなかったですね。子どもの時も他の子と同じように運動したり、スポーツや水泳をしてきました。ただ、アスリートとしては、メンタルが勝手にどんどん強くなっていく、なっていかなければいけない部分があったと思います。あと、パラリンピアンで言うと、例えば障がいのない人たちが簡単に施設が使えて、簡単に練習ができる環境であっても、私たちの場合は少し遠回りをしなければいけない。簡単に手に入らない部分を越えていかなければいけないので、メンタルが強くなければやっていけないこともあります。