国枝、最後まで戻らなかった試合勘 「出直したい」V3逃すも挑戦続く
世界2位相手にストレート負け
パラリンピック3連覇の夢は、準々決勝でついえた 【写真:伊藤真吾/アフロ】
「リオで優勝し、2020年、東京で4連覇を果たしたい」
誰も見ぬ地平を歩んできたパラリンピックチャンピオンが、リオデジャネイロの準々決勝で、敗れ去った。相手は、ベルギーの27歳、ヨアキム・ジェラール。現在、世界ランキング2位の勢いある若手選手だ。試合は3−6、3−6のストレート負け。北京大会、ロンドン大会では国枝が同様に圧倒的なスコアで、対戦相手を次々と下し決勝まで上りつめていた。
2016年、アスリート人生最大のスランプに
国枝が元気な姿を見せたのは、5月に東京・有明で行われたワールドチームカップ(車いすテニス世界国別選手権)。シングルスとダブルスで戦う国別対抗戦に出場し、国枝は日本チームのリーダーとしてコートに立った。優勝はフランスに譲ったが、「クニエダ、健在」を示した。
しかし、実際には、今年4月に右ひじを手術していた。長年のプレーによるひじ関節部分の痛みを、どうしてもパラリンピック前に払拭しておきたい。そう考えての決断だった。ロンドンパラリンピック前の2月にも手術を受けて、痛みを取り除いた上で2連覇を達成した経緯がある。今回も、リオで痛みのない利き腕をフル稼働させて、金メダルを獲得するはずだった。
「右ひじの痛みは、全く問題ありませんでした。ただ、自分の中の“試合勘”が最後まで戻りきっていなくて、非常に苦労していました。もっとも、100パーセント戻っていたとしても今日のジェラールに勝てたかどうかは、分からないです」
リオの準々決勝で敗れた後、国枝はそう語った。
4月の手術の後、毎年必ず出場しているジャパンオープンを欠場。ワールドチームカップを経て、6月に全仏オープンに出場したが、ここでも準決勝で敗れている。その後は治療に専念し、7月のウインブルドンには出場していない。
「試合に出ない分、じっくりとボール練習を重ねてきた。だから、不安はなかった」と、術後の経過が良好であることを、言い続けてきたのだった。痛みはない。しかし、実戦の舞台から離れたことで、本来の試合勘を取り戻すのが困難になったのだ。2016年は、国枝にとって、アスリートとしての最大のスランプになったのかもしれない。
「リオパラリンピックが1年前だったら。それならきっと負けていなかったと思う」
そう、悔しさをにじませていた。