靭帯断裂の西岡良仁、1月復帰へ着々 アクシデントを「経験」に変えた8カ月

内田暁

振り返る2017年の喜怒哀楽

明るい表情で1年の“喜怒哀楽”を振り返る西岡。『乃木坂46』のライブ初体験は、ナダルとの対戦と同じくらいの“喜”!? 【スポーツナビ】

 そんな彼の私生活の充実っぷりは、「今年の“喜・怒・哀・楽”」を尋ねた時の回答にも、色鮮やかに反映された。

「“喜”は、ナダルと対戦できたのはすごくうれしかったし、インディアンウェルズでの勝利もうれしかったです。テニス以外で言えば、乃木坂46のライブに初めて行った時。そこが一番テンション上がりましたね!
“怒”は……ないですね。今年は、怒ることはなかったです。普段の生活でも、イライラすることは本当になくなりました。
 楽しいのは……最近ある程度は動けるようになってきたので、いろんなスポーツを体験しているんです。この間は乗馬をやったし、最近はスタンドアップパドルという、サーフボードの上に立って漕ぐというのをやって。ラフティングに行って川を下ったり……初めてやることが多いので、それは楽しかったですね」

 オフコートでの日々を軽やかに語る、その笑顔を支える最大の要因は「予定より早いくらい」に順調に回復している膝の状態にあるのは間違いない。9月にはダッシュや切り返しの動きもできるようになり、先日ついに、コート全面を使ってテニスをして良いとのゴーサインが医師から出た。

杉田らの活躍は「すごいと思うんです。思うんですが……」

マイアミ・オープン2回戦でひざを痛めた西岡 【Getty Images】

 そんな彼が、“失った日々”への切ない想いを唯一口にしたのは、今年の“哀”について語った時だ。

「哀しいは……なんやろ? けがしたことは、ここには入らないですね。そうっすね……あれは『哀しい』よりは『悔しい』ですね。
 哀しいのは、強いて言うなら、他の選手の活躍……杉田(祐一)さんだったり、デビスカップの時の添田(豪)さんだったり、他の選手の活躍を見た時に、自分が試合をできない悲しさが出てきますね。杉田さんの優勝は……すごいと思うんです。思うんですが、自分もランキング的に杉田さんと近かったので……そのあたりで……。けがをした時よりも、そのあたりで哀しさが出てきました」

 親しい先輩であり、盟友たちが戦う姿を見て覚えた、一人取り残されるような哀しみ――その哀切なまでのテニスや試合への渇望は、復帰の日が近づきつつあることを知るからこその“うずき”でもあるだろう。

22歳は「もう若くない」 復帰へ向けて準備着々

来年1月から復帰予定。2018年、西岡良仁は再び戦いの舞台に立つ 【スポーツナビ】

 9月27日に22歳の誕生日を迎えた彼は、自身を「もう若くないと思います。ジュニアからあがってくる選手から見れば、自分は中堅選手だと思う」と定義した。

 同時にここまでの足跡を、「けがは予定になかった」と苦笑しながらも、「それを除けば、17〜18歳の頃にイメージしていた通りに進んでいると思います」と、声に静かな矜持(きょうじ)を載せて振り返る。その「予定外」だったアクシデントをもけがの功名とすべく、今年はトレーニングにも力を入れてきた。特に重点的に取り組んで来たという上半身は、一回り大きくなったことがはた目にも見て取れるほどだ。

 今年、コート内外で多くの新しい経験を積み人間的にも一回り大きくなった西岡の復帰戦は、来年1月が予定されている。
 キャリア絶頂の時にアクシデントに見舞われたことを、他人は不運とみなしがちだ。だが西岡は、そうではない。

「(今年3月の)インディアンウェルズで活躍したおかげである程度は話題になったし、変な話、その直後にけがをして長期離脱したことで、また話題になった。みんなの記憶にも残せたと思うので、良い感じで戻れるのではという期待もあって」

 2018年――自らがテニスシーンを沸かせる未来を、彼は胸に思い描いている。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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