靭帯断裂の西岡良仁、1月復帰へ着々 アクシデントを「経験」に変えた8カ月
左膝前十字靭帯の部分断裂 絶好調時の大けが
自己最高ランク到達、そして左膝前十字靭帯の部分断裂。西岡良仁の2017年は、「キャリア絶頂」も「アクシデント」も味わう1年となった 【Getty Images】
2月のアカプルコ大会(メキシコ・オープン)では、当時世界18位のジャック・ソック(米国)を破った末にベスト8へと勝ち上がり、憧れのラファエル・ナダル(スペイン)と好ゲームを演じた。
その直後のインディアンウェルズ・マスターズ(BNPパリバ・オープン)では、2回戦で21位のイボ・カロビッチ(クロアチア)、さらに3回戦では14位のトマーシュ・ベルディハ(チェコ)を死闘の末に破り、4回戦では3位のスタン・ワウリンカ(スイス)相手に勝利まで2ポイントに肉薄した。
170センチの小柄な体ながら、次々にジャイアントキリングを成し遂げる21歳(当時)の若者は、日本のみならず世界のテニスシーンをも沸かせるトピックとなる。
「巨人ゴリアテに立ち向かうダビデ」――勇敢かつ頭脳的な戦法で上位勢を打ち破る西岡良仁(ミキハウス)の姿を、欧米メディアは、旧約聖書の英雄譚(えいゆうたん)になぞらえ称えた。
だがその快進撃は唐突に、左膝前十字靭帯の部分断裂という形で、文字通りプツリと途切れる。
インディアンウェルズ翌週の3月24日、マイアミ・マスターズ(マイアミ・オープン)2回戦……ボールを追い大きく足を横に踏み出した時、西岡は「膝が抜けるような」違和感を覚え、そのままコートを去った。前十字靭帯の再建手術を行ったのは、負傷から約1週間後のこと。復帰までには8カ月の歳月を要することが、キャリア最高の時を謳歌(おうか)していた若者に伝えられた。
料理、乗馬、テニス普及活動 “時間”を積極活用
絶好調時の大けがに見舞われた西岡。それでも下は向かず、復帰までの時間をテニスにプライベートにと積極的に活用した 【スポーツナビ】
だが当の西岡は、何かを恨むことはもちろん、愚痴や弱音を吐くこともなく、「あれは完全な事故。仕方ないこと」とすがすがしいまでに言い切った。それどころか「この時間を、テニスを広めるために役立てたい。特に子どもたちに還元していきたい」と全国を“テニス普及行脚”し、各地のテニス大会やイベントに顔を出しては、ファンやジュニア選手たちを喜ばせてきた。
またテニス以外でも、料理や乗馬など、これまで関心がありながらできなかったことに挑戦中。
「自分が、こんなに色んなことに興味を持つとは意外でした。19歳くらいの時までは、テニスしかやってこなかった感じだったので」
少し明るくしたくせ毛の髪をかき上げながら、西岡は八重歯をこぼして笑う。