今年のナンバーワンピッチャーは誰だ!? 西尾×小関×福田ドラフト鼎談〜投手編〜

スポーツナビ

夏の甲子園優勝投手になった花咲徳栄高・清水。大会後は侍ジャパンの一員としてU−18ワールドカップに出場した 【写真は共同】

 まもなく「その時」を迎えるプロ野球ドラフト会議。本番に向けて動向を探るべく、アマチュア野球の逸材を追って全国各地で取材活動を行う西尾典文氏(野球ライター)、福田豊氏(日刊スポーツ所属)、小関順二氏(野球ライター)に集まっていただき、雑誌「アマチュア野球」(日刊スポーツ出版社)で人気を博した座談会がスポーツナビに場を移して復活となりました。第2回は投手の候補生についてです。

花咲徳栄・清水は「悪いアームじゃない」

――後半戦、ピッチャー編に入ります。まず高校生のピッチャーですが、石川翔(青藍泰斗高)が1位候補に入っていますね。

西尾:ナンバーワンだと思いますね。

小関:すばらしいですよ。

――具体的に何がいいですか?

小関:フォームがいいですよ。開かないというのがありますね。フォームというのは開くか開かないかなんですよ。腕を振ってきてひじの位置が高いとかね。ストレートが151キロ。150キロ以上いってる人が何人かいますけど、力感が強いと思いますね。

西尾:質が違いますね。

小関:圧倒できる質感というんですかね。ボリュームがあるというか。圧倒的じゃないですかね、この投手は。

西尾:大学生などを含めても一番いいピッチャーだと思います。一番いい試合を見たんですよ、3年夏の準決勝。小関さんは次の試合でしたよね。

小関:作新学院戦でしたよ。負けましたが、良かったですよ。

西尾:本当に文句なしだなと思いましたね。

小関:前年も見てて、そのときも良かったですよ。ピッチングコーチが知り合いの人で、メールでやり取りしていたら「いいのがいますよ」って話で。見たらもう……本当にバシっと射抜かれた感じですね。素晴らしかったです。

――変化球はどうでしょう?

西尾:全然問題ない。

小関:コントロールもいいです。文句なしですよ。

――高卒1年目から1軍で投げられそう?

福田:ちょっと故障が多いですね。この夏もスカウトの人が見たくて見たくてしょうがなかったのに、キャンセルになったり……なかなか見れなかったみたいですね。

西尾:春先から全然投げなかったんですよ。それで春の県大会で投げずに負けたんですよ。その後の夏前の練習試合でもなかなか投げずに、ギリギリ間に合った。

小関:栃木の伝統ですかね(笑)。去年も今井(達也/作新学院高-埼玉西武)がね。

西尾:僕は今井よりいいと思いますね。今井も相当よかったですけど、体つきが今井よりちゃんとできている感じ。

福田:体でかいんでしょ?直接見たことはないんだけど

西尾:体重も80キロありますね。82キロか。

――結構がっちりした体格なんですね。

小関:1位……入札だってあるかもしれませんね。

――スピード系では熊本工高の山口翔もいます。

小関:センバツは評判になっていて、甲子園で148キロ投げたんですけど、あれって感じですよ。スピードガンは出るんですけど、速さ以外にいいところが何も見られなかったですね。半年ぐらいで良くなるのは高校生ならありますけど、春の段階から夏の段階にかけて急に良くなるのか自分の中でまとまりがつかない。

西尾:確かに速いですよね、スピードは出る。さっきの小関さんの話でいうと、開く。わかりやすく開く。開いても抑える人もいますけど。

――甲子園の優勝投手・清水達也(花咲徳栄高)はいかがでしょうか?

福田:ちょっとアーム式でね、立ち投げみたいで特徴のあるフォームなんですけど、聞くところによると評論家の西本聖さんは「あれだったら大丈夫じゃないか」って言っていましたね。「悪いアームじゃない」って。北海道日本ハムの木田(優夫)GM補佐も言っていたな。

小関:僕が見た感じ、アーム式はプロですぐ直るんですよ。もう意識の持ちよう一つだと思いますよ。開くほうがなかなか手ごわい感じがしますね。なかなか閉じない。

福田:テークバックで後ろのほうにアーム式だけど入らないって。ただちょっと投げるとき反るのが多少あるんだけど、あのアームだったら大丈夫だって。やっぱりコントロールいいですよ、思ったより。甲子園のときもビシビシ来ていたし、150キロ出ていましたね。

小関:フォークボールもよかったですね。ああいう「よっこいしょ」って投げる人はフォークが投げやすい。

――国際大会もそれで抑えていましたね。

西尾:最初からリリーフでっていう。今の需要に合っているんじゃないですか。リリーフが大事なのはあると思うので。

福田:監督が言うにね、繊細なんですよ。確かに話していても慎重に話す子だし、物静かでね。先発もできるんですが、考えすぎちゃって。

西尾:春までは先発もやっていましたね。

福田:ダブルエースの綱脇(慧)がだめなときは先発やっていた。どうしても頭が良すぎて先のことを考えてしまう。いろんなこと考えちゃってなかなか自分のピッチングができない。短いイニングだったら爆発力で腕振って投げてやれて、ちゃんと抑えているんですね。去年の2年生のころから球速がかなり上がって。

福田:花咲は練習がすごいし、毎年のようにプロを輩出しているし。いいトレーニングをしているし、ちゃんとコーチも居る。いいチームですよ。

――U−18組の田浦文丸(秀岳館高)はどうでしょうか?

西尾:これはU−18で評価を上げましたね。

小関:甲子園でもあのチェンジアップはすごかったですよ。ブレーキと落差ですかね、ほとんど一芸名人ですけど、球も速かったんですよ。

福田:県大会では速かったんでしょ?

小関:148出ていました。

福田:甲子園では技巧派みたいになっちゃった。

西尾:足攣っちゃったんですよね。外野を守っていたから。

小関:ちょっと開くんですけど、チェンジアップがあるからいいんじゃないかなと思いますね。

――チェンジアップが得意ってことは腕の振りがすごいんでしょうか?

小関:バッターが対応できない。打ちにいって「ああっ」って感じ。止まっちゃうような衝撃ですよね。

――だからこそ魔球っていうんですかね?

小関:そうですね。角度はあるし、ブレーキはあるし。すごいですよね。

福田:ダブルエースの川端(健斗)もプロ志望届を出してほしかった。

小関:僕は特徴があるだけ田浦のほうがいいと思いますけどね。ピッチャーらしいという面では川端ですが。あと、柳ヶ浦高の田中瑛斗がいいですね。

福田:あの子いいでしょ。

小関:センスある。フォームがいいですよ。きれい。

福田:投げている写真を見てすごいと思ったね。体つきがいい。

西尾:東海大相模高との練習試合で見れました。ネット裏がスカウトしかいなかったです(笑)。

小関:打たれるんですけど、相模の打線のほうが上なんですけどね。

西尾:でも3点ぐらいに抑えましたよね。

小関:星槎湘南国際高の本田仁海も146キロぐらいですけど、フォームがいいですよね。開かない。

西尾:本田は最後の夏、ちょっとクロスステップ気味でしたね。それが気になりましたけど、田中含めたこの2人は2位とかでも全然ありじゃないですかね。

右腕の候補が多い高校生ピッチャー

清水と同じくU−18組の秀岳館高・田浦は魔球チェンジアップを操る 【Stacy Revere - SAMURAI JAPAN】

小関:市西宮高の山本拓実もいますね。

福田:うちの大阪の担当記者がおすすめだって。

西尾:夏に見たんですけど、これはすごかったですね。ちょっとこんなにいいのかと。小さいですけど、体ができていますね。全然細くない。

小関:日本ハムの大渕(隆)スカウトディレクターに会ったときに「いいと思うんですけどどうですか」って聞いたら、「いいと思うんですけど、担当の評価が高くない」って言っていました。

西尾:167センチと小さいだけで、これが180センチあったら1位ですよたぶん。

小関:ボールがすごいですよね。速いし。

西尾:軽くないですよ。もしかしたら2位もあるかもと、ちょっと思っています。

――則本昂大(東北楽天)のイメージですね。

西尾:似ていますね。

小関:躍動感ありますね。

西尾:フィールディングもすごいんですよ。ちょっとびっくりしましたね。

――バント処理がうまい?

西尾:バント処理もですけど、難しいピッチャーゴロをしっかり取って、取ってからも速い。

福田:進学校なんですよね、この高校。

――160センチ台が全然気にならない?

西尾:ならないですね。大渕さんによると「伸びしろとかそういうのぐらいで、今の感じなら文句なし」って。

――であれば最悪ピッチャーじゃなくても?

西尾:あるかもしれませんね。

小関:でもマウンド自体が高いですからね。だっているじゃないですか、美馬学(東北楽天)とか谷元圭介(中日)、武田久(今季まで日本ハム)も。
西尾:あと、甲子園組で北海高の阪口皓亮ですかね。いいピッチングしましたね。

小関:58球でしたっけ? いやー、よかったですね。全然知らなかったし、日本ハムの吉村浩GMに聞いたら、「ひょっとしたら地元だし一番下で取れるかな」と思っていたらしいですよ。でもこんなにいいとなると、大会ナンバーワンですかね。あのストレートの良さだったら点も取れないですよって言っていましたね。

西尾:南北海道大会の結果をみると全部打たれているんですよ。防御率5点台とか。

小関:甲子園でも打たれているんですよね(笑)。

西尾:甲子園ではまだ抑えましたけどね。

福田:みんななんで打たれるんだろうって不思議がっていましたね。

小関:ほとんど文句のつけようのないフォーム。むちゃくちゃじゃなくて、まとまっていて、背は高いし、ストレートも148キロ出るしで、すごいですよね。

西尾:フィールディングもよかったですね。その辺も含めて、癖がわかりやすいとかタイミングが取りやすいのはあるかもしれませんね。でもプロに行けば直るでしょう。

小関:一番びっくりしたのは阪口ですね。

西尾:大会前はどこもノーマークだったようですから。

――今年の志望届提出者のうち、右投手で145キロ投げる人が10人ぐらいいると思いますが。

西尾:150キロも何人かいますね。

福田:左投手でも140キロ出しますもんね。

西尾:学法石川高の尾形崇斗も150出たと言っていましたし、あと啓新高の牧丈一郎も152キロ出したと。

小関:八重山商工高の平良海馬は154出したんですよね。

西尾:牧とか尾形は多分下位だと思いますが、引っかかるでしょう。馬力があって、ボールが速いですね。牧は足が遅いのが気にされていましたけど。

小関:球速くないけど、というのだったら霞ヶ浦高の遠藤淳志や白鴎大足利高の北浦竜次がいますね。二人は140キロちょいですからね。

――北浦は左投手ですよね。

西尾:北浦は多分いくんじゃないですかね。左があまりいないし、背もあるし。

小関:遠藤もきれいなフォームですね。ちょっと細いですけど。北浦も細いでしょ?

西尾:北浦のほうがまだ体ができている感じがしますね。あと金久保優斗(東海大市原望洋高)とかですか。スライダー名人ですけどね。

小関:148キロまで出ますけどね。あと、京都成章の北山亘基も速くはないけど癖のないいい投げ方しますね。

福田:わりと三振を取れるピッチャーですね。

西尾:京都大会でかなりすごかったみたいですね。

小関:すごみはないんですけどね。伸びていきそうな感じはしますね。

西尾:あんまり騒がれていないですけど、西脇工の翁田大勢っていうのも山本を見に行った時に見たんですけど、速かったですよ。148とか出て。

――兵庫県はレベル高いですね。

西尾:これは見れなかったけど、神戸弘陵高の東晃平は評判になっていますね。あと、佐渡高の菊池大稀は注目されていますね。

――佐渡島から初のプロ野球選手なるかっていう投手ですね。

西尾:体もあるし、下位か育成……育成で本人が行くかどうかって話ですけど。プロかからなかったら大学進学って言っていましたね。

――小笠高・佐々木健も右ですよね。

小関:これも140キロちょい。

西尾:体は大きいですが、まだまだだって聞きました。育成ならあるかな。

小関:日本ハムのテスト受けたんですよね。日本ハムってテスト受けさせるらしいですよ。で、下位指名でいくんじゃないかと。上位には来ないような選手らしいですけどね。

西尾:群馬の常磐高の山上信吾もいいと思いましたね。大きくて。あんまり勝ち進んでないので注目されてないですけど、180センチ以上あっていいフォームで投げていますね。

――高校生はこのあたりで締めましょうか。

西尾:1位は石川が来て、本田とか田中も外れ外れまで巡ったらあるかもしれません。中位クラスは結構いますね。左はあまりいないですね。北浦が入ってくるぐらいでしょうか。

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