今年のナンバーワンピッチャーは誰だ!? 西尾×小関×福田ドラフト鼎談〜投手編〜
目玉の田嶋、高校時代からの変化とは?
社会人ナンバーワン左腕・田嶋は強い腕の振りから繰り出すストレートが最大の武器だ 【Koji Watanabe - SAMURAI JAPAN】
西尾:ナンバーワンでしょう。
――ナンバーワンたる理由は?
小関:球が速いのと、同じ腕の振りでくるカットボールがいいですね。140キロちょっと手前の球速で、直球の軌道からヒュッと逃げていく。あれを左バッターの内角に投げられたら「ウワッ」となるんじゃないですかね。
――左のインコースに投げるんですか?
小関:少し曲げるっていうね。「フロントドア」っていうんですか。
西尾:ずっとすごいですよね。小さい浮き沈みはありますけど、悪いときはそこまでないですね。
福田:1年目から投げていますからね。
――高校の時点でもドラ1候補でしたね。
西尾:ストレートが物足りなかったんですよね、高校生のときは。スライダーピッチャーだなと思ったんですよ。社会人になってこんなに腕の振りが強いんだとびっくりしましたね。
小関:高校生のときは確かにスライダーピッチャーだったんですよ。巨人の岡本(和真)に取材したときに田嶋のことを聞いたら、「速い球を待っていたらあんまり来なくて、スライダーばっかりで拍子抜けした」と言っていましたね。ちょっと上から目線で(笑)。確かにその通りだと思いましたね。
――今はもう全然違うピッチャーに。
西尾:今は完全にストレートが一番目立ちますね。入札は間違いないですね。果たして何球団くるのか。
小関:2、3球団は来そうな気がしますね。
小関:フォームはいいですけどね。癖がなくて。あと何と言ってもストレートが速い。157がマックスで。
西尾:速さは一番じゃないですかね。150オーバーが当たり前なので。
小関:ただ完璧には抑えないですよね。
西尾:未完成な部分は多分にあって、高めにいきますよね。
小関:速いだけだと打たれますよ。
西尾:完璧ではないですけど、こちらも高卒3年目ですよね。高校のときはそんなに速くなるとは思わなかったですけどね。
福田:うちの実家の隣町出身なんだよね。掛川市の子なんですよ。
小関:体がすごいですよね。明らかにウエートと食トレでっていう体をしていますから。趣味は何?って聞いたら「池田(駿/巨人)さんはピアノが上手いですけど、僕は自転車…ロードサイクルをやってる」って言っていましたね。みんなヤマハに敬意を表しているのか(笑)。
福田:彼は高卒3年目ですよね。
西尾:田嶋と一緒ですね。
小関:球が速いピッチャーには、大谷(翔平/日本ハム)の話をするんですよ。「大谷と勝負してみる気はない?」って。有原(航平/日本ハム)も田中(正義/ソフトバンク)も「とんでもない、かなわないですよ」って言われたんですね。この鈴木はそんなこと言わないで、「フォームも憧れてて、ちょっと自分も似てるなと言われるんです」と引けた感じがまったくなかったです。
――そういう姿勢はいいですね。もうひとりの鈴木、鈴木康平(日立製作所)も1位候補に入ってくると思いますが。
西尾:こちらも速いですね。高校、大学とすごく細かったんですよ。千葉明徳高でしたかね。
福田:そうです。2年の時にスカウトが「おい、鈴木康平見たか?」って話がそこらじゅうで飛び交っていたんですよ。すぐ負けちゃったんですけど(笑)。3年になったらケガかな?
西尾:最後の試合見ましたよ。上沢(直之/専大松戸高-日本ハム)と投げあって。
福田:引き分け再試合でしたっけ。
小関:どちらかと言うと上沢目当てで、鈴木も評判だから見る感じでした。
西尾:大学でも体は細いままだったんですけど、社会人に入って急に大きくなったみたいで。都市対抗も打たれたんですけど速かったですよ。上からちゃんと投げますし。
小関:真上からきますよね。
西尾:そうですね。変化球も一通りあって。多分すぐに使えると思いますね。スケールがありますね。
小関:テークバックのとき腕をかなり下げますよね。
西尾:一回ガッと下げますね。
小関:あれが上がってこないといけない。大谷はしっかり上がってくるじゃないですか。いいピッチャーってグッと下がってから上がってくるんですよ。ちょっとギクシャクするんじゃないかなと思いますね。
西尾:反動をつけたいのかなって感じですね。
多士済々な社会人投手たち
小関:西村は変な癖がなくていいですね。本当に理想的なフォームですけど、あのフォームでストレートがいまひとつバッターの脅威にならないのかなと思いますね。
――ストレートは速いですよね。
西尾:154キロが最速ですね。
小関:きのうは148でしたかね。とっても良かったですが、三振が取れる球がないかなと思いますね。3イニング目になってやっと取っていました。
西尾:速いですし悪いところはない。
小関:リリーフですよね。
西尾:リリーフがぴったりきそうですね。
小関:1位2位だと思いますね。2位でいうとぴったり(笑)。
福田:外れ1位もあるかもわからんね。都市対抗の予選がよかったんですよね。
西村の投球フォーム
西尾:速いだけならすごいですよ。
小関:きのうも152キロ出していて。でも開くんですよね。投げる時に腕だけで投げているような印象があります。あと、肘の位置が低い。あれだと肩を故障してしまいますね。ただ、速いんですよ。スピードガンが出ない大田スタジアムで西村は148がやっとなのに、永野はいきなり152で。掛け値なしにスピードはすごいですよ。
西尾:でも大事な試合で投げないんですよ。やっぱ安定感がないので。都市対抗でも1イニングだけ投げただけで、ボロ勝ちしている最後の1回だけ出てくるという。速さを求めて崩していますね。しかし、速いですね(笑)。ひじのケガでトミー・ジョン手術をして、就職浪人したんですよ。治ったらホンダが取ろうと。今年解禁なんですけど、年齢はひとつ上の25歳ですね。
――スピードだけなら西濃運輸の嶽野雄貴もいますね。
西尾:結構好きですね。全然強くない高校、大学の出身ですけどね。出てくると145キロぐらいはバンバン投げてくる。あと、チェンジアップもすごいですよ。田浦とかDeNAの?口遥大のような一度浮いて落ちるチェンジアップを投げるんですよ。真上から投げるんですよ、170センチぐらいしかないですが。リリーフならすぐ使えると思いますね。
小関:九州三菱自動車の谷川昌希も上背はないですよね。国際大会で活躍しましたけど。ベストナイン取ったんでしたっけ?
西尾:都市対抗でもよかったですね。トヨタを抑えて。
小関:ストレートのイキが良いですね。
西尾:大会も谷川で始まって谷川で終わった感じでしたね。
――三菱日立パワーシステムズ横浜の大野亨輔はどうでしょう?
小関:大野はいいですね。まとまっているんですよね。まとまっているんだけど、いいなと思わせるものはありますね。ボールは速くないんですよ。
福田:専修大出身で、カットボーラーですよね。
――西尾さんだけちょっと苦い顔してますね。
西尾:あまりに普通すぎてちょっとなって(苦笑)。
小関:オリックスで力を発揮しそうなタイプですね。こういう投手いるじゃないですか(笑)。
西尾:社会人なら間違いなくいいですけど、やっぱりスピードがないし……。
小関:西勇輝とか吉田一将とか、あの感じの流れに乗るんじゃないかと思いますね。速くないけどまとまっているという。意外と戦力になるのかなと。
西尾:戦力にはなるかもしれませんね。
福田:JX−ENEOSの齋藤俊介はいいですね。リリーフタイプでしょうけど。高校のときは成田高校で、立教大のときはちょっと故障して。社会人で良くなりましたね。
西尾:ENEOSなら柏原史陽もいますね。
小関:上背はないけど独特ですよね。
福田:かなり気合入れて、ダイナミックに投げますね。
西尾:松井裕樹の先輩ですよね。桐光学園で。3年と1年だったかな。同志社大でも結果を出して、社会人になって速くなった気がしますね。SUBARUの高橋史典もよかったですね。
小関:良かったですね。田嶋と投げあったんですよ、日本選手権代表決定戦で。見事な投手戦でしたね。マックス145ぐらいで速くはないですがバランスが良くて、スライダーの質も良くて。
西尾:高校のとき見ていて、立正大のときはあまり見てないですけど。
小関:通算5勝ですもんね。
西尾:そんなに大学では活躍しなかったですけど、SUBARUに行ってよかったですね。
小関:あと東京ガスの石田光宏もいますね。
西尾:石田は去年までなら上位でもいいと思いましたが……春先にスピードが全然出てなくて。都市対抗前から全然投げてないですよね。
――侍ジャパンに選ばれていたNTT東日本の渡邉啓太はどうでしょう?
西尾:いいピッチャーですよね。ただ、ずっとあんな感じですよね。真っ当すぎるな……って。個人的にいいピッチャーだと思いますけど、プロの目からするともうちょっと体つくってという感じでしょうね。神奈川工科大ってそんなに強いところではないので。高校もいわき光洋か。もうちょっとプロに行きたいならもうひと頑張りしないといけないと個人的には思いますけど。
独立では寺岡、沼田の石川コンビに注目
西尾:沼田拓巳と寺岡寛治がともにBCの石川ミリオンスターズなんですけど、間違いなく速いですね。150キロ以上投げます。
――沼田は以前から注目されていましたよね。
西尾:そうなんですよ。3年目で、この前ジャイアンツとやったときもオリックスとやったときも見たんですけど、フォームも悪くないですし、支配下で3位や4位あたりに入ってもおかしくないなと思いましたね。
小関:すごく良かったですよね。
西尾:本人も聞いたら、大垣日大高のときはベンチ入りもしてなかったって。当時は葛西(侑也/新日鐵住金東海REX)という左投手がいて。「葛西がいて公式戦では全然投げてないです」って言っていて。
小関:球数制限があったらね、出ていたのかもしれないのにね(笑)。
西尾:高校のときも143キロは出していたみたいです。速いことは速かったみたいですね。高校卒業後に大学行ってすぐやめて、その後にアメリカに行って、帰国後はクラブチームで投げていたんですよね。
福田:エディオン愛工大OB BLITZですね。
――寺岡はどこがいいですか?
西尾:完全にリリーフなんですけど、ボールの角度ですかね。結構担ぐんですよ。癖が強くて、フォームは沼田のほうが好きなんですけど。真上から投げるので。150とかバンバン来て。50イニングで80個以上三振を取っていて、リリーフなら今でも使えるんじゃないかと。寺岡のほうがプロ側の評価は高いとちらっと聞いたんですけど。寺岡は故障癖があって、社会人も内野手で行ったんですよ。そのころから肩は良くて、途中でピッチャーに転向して、BC行って1年目ですね。25歳だったかな。
福田:スカウトもよく見に行ってたんですよね。
西尾:ベイスターズとやったときに三者連続三振に抑えて打てなかったと。
小関:支配下ドラフトであるんじゃないかって話を聞きますね。独立リーグの選手はだいたい育成で指名されますが、寺岡は違う形で指名される可能性が高いんじゃないかと。
西尾:寺岡はいけそうですね。良いものを持っていますね。
――ありがとうございました。この中から多くの選手がプロでプレーする姿を見たいですね。
アマチュア野球の逸材を追って全国各地で取材活動を行う西尾氏、福田氏、小関氏に集まっていただき、雑誌「アマチュア野球」(日刊スポーツ出版社)で人気を博した座談会を今回はスポーツナビにて実施した 【スポーツナビ】