ドラフト候補へ復活した長身下手投げ
〜専修大・高橋礼の栄光と挫折〜

大学2年時には日本代表で活躍

187センチの長身アンダースローという変則タイプの専修大・高橋。大学2年時は大学日本代表でも活躍した
187センチの長身アンダースローという変則タイプの専修大・高橋。大学2年時は大学日本代表でも活躍した【写真:高木遊】

 長身アンダースロー右腕・高橋礼(専修大)が、アップダウンの激しかった4年間をまもなく終えて、運命の時を迎える。


 一番の持ち味は何と言ってもアンダーハンドから浮き上がるストレートだ。ただでさえ見慣れない球の軌道に加え、身長187センチの体全身を使って最速140キロ前後で投じることができるのは、日本球界で唯一無二の存在と言える。


 中学時代に所属していた流山ボーイズ時代からアンダースローに取り組み、専大松戸高では甲子園出場こそ果たせなかったが、投手育成に定評のある持丸修一監督のもとで腕を磨いた。


 専修大では1年秋から登板機会を得ると、2部リーグで5試合32回2/3を投げて、自責点はわずかに4。1年生ながら原樹理(東洋大/東京ヤクルト)、黒木優太(立正大/オリックス)、戸根千明(日本大/巨人)らを抑えてリーグトップとなる防御率1.10の成績を残し、チームを2部リーグ優勝に導いた。入れ替え戦でも2試合に先発登板して試合を作り、1部昇格に貢献した。


 翌春も専修大と高橋の勢いは止まらず、昇格即優勝の快挙を達成。高橋も守護神としてチームの躍進を支えた。また侍ジャパン大学代表にも選出され、ユニバーシアードに出場。中継ぎとして相手の反撃を許さない投球を見せて金メダル獲得に貢献した。

高橋の投球フォーム

(撮影:高木遊)

3年春からエースを任されるも…

 だが3年生となり、エースを任されるようになった昨年から苦しい投球が続いた。春は2勝3敗で防御率4.06。秋にいたっては0勝4敗で防御率5.83。「相手の“間”で投げてしまっていたし、ストレートを狙われて打たれているのは分かっていたのですが、修正できませんでした」と振り返る。


 ストレートを速く投げようと思うがあまり、また走者を気にして速いモーションで投げようと思うがあまり、体が前に倒れる形になり、キレ・制球力ともに落ちてしまっていた。それは高橋自身も自覚していたが、一般的な投手とは異なるダイナミックなフォームゆえに修正も難しかった。


 そして今春は0勝2敗、防御率7.58という過去最低の成績でチームに貢献することはできず、入替戦でも高橋がサヨナラ打を浴びて、2部降格が決まった。


 ただ、ここでどん底を味わったことで、思いきった改造が可能になった。夏場は齋藤正直監督と藤田康夫コーチが全球付きっきりで投球練習を見つめ、1球ずつ確認しアドバイスを送り、フォーム作りを徹底した。その根幹は、体の軸をしっかりさせ、大きな溜めを使って投げるようにすることだった。

表情に自信取り戻した4年秋

大学3年以降は不調に苦しみ、まだ課題も多いが、一時期のドン底は脱出しつつある
大学3年以降は不調に苦しみ、まだ課題も多いが、一時期のドン底は脱出しつつある【写真:高木遊】

 すると、夏のオープン戦で強豪の社会人や大学相手に圧巻の投球を見せ、秋季の2部リーグに臨んだ。


 そして9月7日の開幕戦では1点リードの4回2死から登板し、暴投こそ1球あったものの、東京農業大の打者7人を相手に三振2個と内野ゴロ5本に抑える無安打救援で、2016年4月22日の日本大戦以来の白星を掴んだ。


 試合後は憑き物が取れたようなスッキリとした表情で「前に突っ込むことなく軸足をしっかり使って、浮き上がる球を投げることができました。今後もストレート主体でボールを動かしていきたいです」と自信を取り戻した表情を見せた。


 その後はチームのエース格としてフル回転して、防御率2.98とまずまずの成績を残したが、4勝3敗と勝ちきれず、チームも1部昇格を逃した(成績は10月22日現在)。また大きな溜めを作った分、高橋も首脳陣も承知の上だが、クイックモーションが遅くなり、簡単に盗塁を許すこともあった。

秋の進化と課題を指摘するスカウト

 投手出身のあるスカウトは「フォームに力感がなくてもボールが来ているし、リリースポイントが安定してきています」と秋の進化を評価し、「ランナーがいない時は完璧ですね」と話した。一方で走者を背負った場合は「球がばらつくのは課題ですね。クイックも速くないですし、プロでは頭を下げたらすぐにスタートを切られます。首を少し下げてからボークすれすれで牽制球を放るか、牧田和久(埼玉西武)のように一気に投げないといけないかもしれません」と課題を挙げた。


 唯一無二の投手だからこそ味わった栄光と挫折。この両面と高橋は向き合ってきた。この激動の4年間で得た貴重な経験と希少性をどう生かしていくのか。さらに高いレベルで高橋の真価が問われる。

高木遊

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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