広島がファーム日本一に輝いた理由 CSで活躍うかがう「稲穂」たち

坂上俊次

中村祐太のブレイクも2軍から

今季1軍で初勝利を含む5勝を挙げた中村祐太。2軍から飛躍を遂げた筆頭例だ 【写真は共同】

 厳しくも温かい眼差しは、投手陣にも及んでいる。

 筆頭例は4年目の今季、プロ初勝利をマークし、クライマックスシリーズ(CS)での登板も考えられる中村祐太だ。中村は1軍で5勝を挙げたものの、調子の波はあった。5月に初勝利を挙げながらも、交流戦の時期から状態が上がらず、6月、7月と相次いで2軍降格を味わった。

 そんなとき、いち早く彼に的確なアドバイスを送ったのが佐々岡真司2軍投手コーチだった。

「テークバックができていない。腕が遅れるだけ、体が開いてしまう」

 課題も明確に2軍での再調整に臨んだ中村は、持ち前の伸びのあるストレートを取り戻し、シーズン終盤に1軍で好投を演じるようになった。ブレイクのシーズンを迎えた若武者は、一気にCSの先発候補に名乗りを挙げるまでになった。

バティスタ、メヒアは育成能力の賜物

 2017年、広島2軍は、コンスタントに1軍へと戦力を供給した。自慢の長打で衝撃的なデビューを飾ったサビエル・バティスタは育成能力の賜物である。「外国人選手であっても、他の若手選手と同じように鍛える」。この方針には、いささかもブレがなかった。同僚のメヒアと競い合う中で、2人はポストシーズンはもちろん、来季を考えても貴重な戦力となっていった。

 1軍で15勝をマークした3年目の薮田和樹も、2軍時代の取り組みが実を結んでいる。「崖っぷち」の危機感から必死で食らいつく岩本は、3割7分5厘のハイアベレージでレギュラーシーズンを終えた。さらに、ファーム日本選手権で決勝3ランを放った19歳・坂倉将吾からは、早くも大器のムードが漂っている。

 1軍のリーグ優勝に戦力を供給した、秋。33年ぶりの日本一へ鍛え抜いた選手を送り込む、秋。ファーム日本選手権で勝利の味を知った、秋。伝統の猛練習に耐え抜いた「稲穂」は「こうべを垂れながら」、次なる戦いをうかがっている。

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著者プロフィール

中国放送アナウンサー。広島カープ戦を中心にテレビやラジオで実況を担当。過去5度の2000安打達成の瞬間を実況する。主な著書に「惚れる力 カープ一筋50年 苑田スカウトの仕事術」(サンフィールド)。なお「優勝請負人」(本分社)では第5回広島本大賞を受賞。

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