外国人投手にも「特別扱いせず」 吉井コーチの指導スタイル(6)

菊地慶剛

「気持ちを理解してくれている」と吉井コーチについて語るマーティン 【写真は共同】

 今シーズンのクライマックスシリーズに進出したセパ6チームを見ても明らかなように、クローザーを含めたリリーフ陣に計算できる外国人投手を加えるのが今や定番となっている。その分、文化や練習スタイルが異なる日本で、外国人投手にシーズンを通して安定したパフォーマンスを維持させる上でも、投手コーチの力量が試されるところだろう。

文化の違い、スタイルの違いを理解

 今更説明する必要もないが、北海道日本ハムの吉井理人投手コーチは1998年から2002年までの5年間、MLBでプレーした経験を持ち、米国の野球事情にも精通している。米国から日本に来るパターンとは逆に、日本から米国に渡った経験を持つ投手コーチとして、外国人投手との接し方についてどのように考えているのだろうか。

「一番気をつけているのは、特別扱いせずに日本人選手と同じように扱うことです。通訳がいてもいいし、いない場合でも僕の英語は下手くそですけど(笑)、とりあえず直接本人と話をするようにしています。外国人投手に『通訳に言っておいて』というのは無しにしています。なので新加入の外国人投手に対しても、特別に気を遣ってどうのこうのというのはないですね。

 自分が米国にいた時もそうだったんですけど、日本のような極東から来ていても、お客さん扱いするのではなくて皆一緒だったんです。その方が(選手としても)チームに溶け込んでいるという安心感があるんです。それをコーチと面と向かって話をする機会をつくらず、通訳を通して話を通すようになってしまうと、逆に疎外感というか被害妄想に入ってしまうし、調子の善し悪しに関わらず『何でオレだけ?』というよそ者感が出てしまいます。そうなるとやはりパフォーマンスを発揮できないんですよね。

 日本で現役をしていた頃は自分のことで精一杯で、(同じチームの外国人投手のことを)考える余裕はなかったですけど、やはり米国に行って自分がそういう扱いを受けたことで、『日本に来る外国人選手は寂しい思いをしてるんちゃうかな』と感じられるようになりました。球団によっては今も(外国人投手を)特別扱いして、遠征中の食事を別にしているところもあるじゃないですか。ファイターズやホークスは日本人選手と一緒だったんですけど、そういうところの方がうまくチームに溶け込んでいる気がしますよね」

 吉井コーチ自らの体験を元に、チームに溶け込んでもらうためにも特別扱いは一切しないと言う。さらに言えば、米国でのプレー経験があったからこそ、外国人投手の行動や心理状態を理解でき、他の投手コーチ以上に彼らと意思疎通ができるのも、吉井コーチならではだ。

「やはり文化の違いがありますよね。悔しがり方でも、日本では人前で悔しがる姿や感情をおおっぴらに表に出すのがダメじゃないですか。それが米国では(感情を)押し殺すと、逆に『お前やる気ないんか?』と疑われてしまうような感覚なので、そうしたちょっとした文化の違いで、すれ違いが起こってしまうんです。その時に自分は事情を知っているので、うまく説明してあげたらいいのかなと思っています。

 以前、グリン(ライアン・グリン:08年に日本ハムで指導)という選手がいて、自分の投球の善し悪しでベンチで感情を出してしまう投手だったんですけど、なかなか他の選手たちに理解してもらえなかったりもしていたんです。そんな時はどうしても『どうしてオレだけ?』ってなってしまうこともあったりしたので、本人に日本の事情を直接説明し、了解してもらいました。

(外国人投手が)実力があるのは分かっているので、あとは気持ち次第でパフォーマンスが変わってしまうじゃないですか。特にコーチはそこ(選手の気持ちを落とさないこと)が仕事だと思っています」

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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