外国人投手にも「特別扱いせず」 吉井コーチの指導スタイル(6)

菊地慶剛

「気持ちを理解してくれる」とマーティン

2008年クライマックスシリーズの西武戦でマウンド上で話すスウィーニー(左から2人目)と吉井コーチ 【写真は共同】

 これまで本欄で、各投手の個性を重要視し、それを引き出そうとする吉井コーチの指導法を紹介してきたが、それは日本人選手のみならず外国人投手に対しても変わらない。しっかりと対話を繰り返し、個々の特性、性格を理解して、投手の能力を最大限に発揮できる環境を整えようとしている。昨シーズンから日本ハムでプレーし、この2年間素晴らしい成績を残しているクリス・マーティンは吉井コーチをどう捉えているのだろうか?

「自分は精神的にも技術的にも投げられるレベルに達していたし、日本に来る前に豊富な経験を積んでいた。だがヨシイさんは外国でプレーする難しさを理解してくれ、常に自分に話しかけてくれたし、気にかけてくれた。やはり僕らの気持ちを理解してくれるのは大きい。コンディショニングに関しても自分のやり方を尊重してくれるし、絶対に無理をさせないように気を遣ってくれるよ」

 マーティンの言葉からも理解できるように、吉井コーチの意図は外国人投手にもしっかり伝わっているようだ。こうした心のつながりが、外国人投手に対しても信頼関係を築いていけるのだろう。

印象に残るサファテとスタンリッジ

 最後に吉井コーチにこれまで接してきた印象に残る外国人投手について語ってもらった。

「本当にそのチームでもリーダーになってくれたのが(15年に福岡ソフトバンクで一緒だった)サファテですね。それと(同じ時にソフトバンクにいた)スタンリッジもそうでしたね。この2人はすごく良かったですね。練習でも若手投手の見本になりました。トレーニングをしっかりしますし、コンディショニングを整えるのもすごくプロフェッショナルでした。そういう意味では本当に放っておいてもいいって感じでしたね。

 逆に若手投手のように手間がかかったのは、スウィーニー(ブライアン・スウィーニー、08〜09年に日本ハムで指導)ですかね。向上心もあったんでしょうけど、本当に若手のように質問してくるし、若手向けのミーティングをスウィーニーにもいつもやってました。『お前何歳やねん!』って話ですよね(笑)。それとマイケル(マイケル中村、08年に日本ハムで指導)は強く言ってあげた方がいいタイプの投手でしたね。『結構強めに言ってもらった方がオレも気合いが入るから、何かあったら強めに言ってください』と、自分から言ってきましたね」

 外国人投手たちの個性を着実につかんでいる吉井コーチだからこそ紹介できるエピソードだと思う。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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