内田とシャルケ、相思相愛の物語は続く それでも選んだウニオンでの再スタート
ピッチ内外でチームを高める存在
CLでレアル・マドリーと対戦するなど、チームの中心選手として活躍もみせた 【Getty Images】
ドリブルマスターのファルファンが前にいたことで、内田は本当に大きな恩恵を受けていたと、シュラーマンは回想する。その最上級の攻撃面のクオリティーと比較して、内田の守備面のスキルレベルについては、見方はさまざまだ。「だが実際のところ、ファルファンが狂ったように走ることで、相手を奔走させていた。試合によっては内田が守備に忙殺されることがなかったのは、あの2人が攻撃的にプレッシャーをかけていたからさ」というのがシュラーマンの答えだ。
ファルファンと内田の最高の日々は、シャルケのチャンピオンズリーグ(CL)での甘美な日々に直結する。ミュラーは語る。「あのCLでの数試合は、間違いなくハイライトに挙げられるね。レアル・マドリーとの対戦(14−15シーズン)は、絶対に忘れない。内田のシャルケでの初ゴールも覚えているよ。ステアウア・ブカレスト戦(13−14シーズン)だった。素晴らしい瞬間だったね」。チームにとっても美しい日々だった。
ユリアン・ドラクスラーとセアド・コラシナツ(左)と内田はよくつるんでいた 【写真:アフロ】
「スキャンダルなど、まったくなかった。内田はいつでも好パフォーマンスを披露していた。チーム内での立場も素晴らしいものだったね。スポットライトが当たることを好まなかったけれど、選手たちが一緒に楽しんでいる時にはいつも近くにいた。アスリートの絶対的な鑑だね。常に時間を守った。常にクラブにすべてをささげていた。ピッチ内外でチームを高める存在だった。そういう姿を、すべてのファンが目にしていた」
チーム内で特に仲が良かったのがユリアン・ドラクスラーとセアド・コラシナツで、彼らはよくつるんでいたものだった。ドラクスラーは現在、ネイマールとともにプレーしている。コラシナツもまた、アーセナルの一員としてプレミアリーグで輝きを放っている。そして内田は今、ブンデスリーガ2部を戦う。だが、ベルリンではひとつの再会があった。かつて共に成功を手にしたイェンス・ケラーが監督を務めているからだ。以前から自身をよく知るボスに信頼を寄せられていることは、内田が再び調子を上げて重要な存在となるためには、ベターな環境であると言えるだろう。
かつてのホームスタジアムで戦う可能性も
内田と相思相愛の物語に、終わりはない 【写真:アフロ】
シャルケが内田の後継者を見つけるのに時間がかかったのは、内田の離脱が長引いたからだけではない。その位置に入る人員は得たものの、右サイドバックのポジションは、今もシャルケのストロングポイントとは呼べない状態だ。「もし内田にあの悲劇的なけががなければ、本当に素晴らしいキャリアを築けていたかもしれない。それに、シャルケがあれほど多くの代役を買い続ける必要も生じなかっただろう。コケのような選手を買い求める必要はなかったはずなんだ」とシュラーマンはこの数年間を振り返る。
だが、内田が生きているのは「今」である。ベルリンで再スタートを切ろうとしているのだ。
早々に1部リーグで戦うという野心をウニオンは抱き、また現実的な目標として設定している。内田が新しいチームとともに、ゲルゼンキルヒェンのかつてのホームスタジアムで戦う可能性も十分にあるだろう。その際には、スタジアム中が「ウッシー!!!」と大声援で迎えるはずだ。「内田はシャルケファンの心の中で、非常に特別な場所を占めているのさ」とサトは言う。
「ウッシーは永遠に、僕らが喜んで迎えるゲストであり続けるよ」
相思相愛の物語に、終わりはない。
(翻訳:杉山孝)