ドジャースを支える日本人広報の夢 「日本とアメリカの懸け橋になれたら」
若きスターとは冗談を言い合う仲
「こういう選手は大切に育てていかなくてはいけない。全力でサポートしようと思った」
まだ慣れないことだらけのなか、プレーに集中してもらうためにも、べリンジャーの動きや表情に注意を払い、コミュニケーションをとりながらサポートした。
当然、メディアはこのスーパールーキーを放っておかない。杉浦さんがその盾となり、精神的なプレッシャーにならないよう配慮しながら対応した。
4月29日、ホームに戻ってメジャー初本塁打を含む2本塁打を放った際は、試合後のロッカールームで目が合いハグして喜んだ。一つ一つメジャーの階段を順調に昇っていくべリンジャーを見守りながらサポートを続けた。その後、ナ・リーグの新人最多本塁打を更新するなど、評判通りの逸材ぶりを発揮している。今ではメディア対応も様になってきたが、杉浦さんが何か話しかけると「NO!」と言う。「ダイの話は全部NOだよ。ダイはインタビューを持ってくるからね」と冗談を言う仲で、2人の信頼関係が垣間見れる。
デーブ・ロバーツ監督やコーチ陣からは「ダイス」と呼ばれ可愛がられている。「ダイスはみんなから愛されているよ。責任感が強く、一生懸命なヤングプロフェッショナルだよ。ダイスのおかげでケンタもユウもリラックスできているんじゃないかな。彼がいるからわれわれと君たちメディアとの関係が良好なんだよ。そう思わない?」と信頼も厚い。
杉浦さんはこの仕事をこう語る。
「いろいろな人と会ってコネクションができ、とても刺激を受けています。厳しい世界で、けがや不調で苦しみながらも頑張っている選手を身近で見ていると、乗り越えていく大切さや楽しさを肌で感じます。前田さんやダルさんと一緒に仕事をさせてもらえて本当に幸せ」
「選手の夢をかなえるサポートをしていきたい」
ドジャースが前回ワールドチャンピオンに輝いたのは29年前。杉浦さんはまだ生まれていない。「最後はみんながワールドシリーズのトロフィーを掲げているところを見たい」とまだ見ぬ歓喜の瞬間を待ちながら、今日もチームのために奮闘中だ。
昨年のポストシーズンの際には、日本語ができることもあり3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でMLBの広報としてのオファーを受けた。8月には球団幹部とともに通訳兼トラベルアドバイザーとして日本出張に同行。12月にはウィンターミーティングも控えており、仕事の幅はどんどん広がっている。
「WBCでの仕事はとても楽しかったです。さまざまな国の人たちと仕事ができ、これからの自分のキャリアにとってもすごく貴重な経験になりました。僕はアメリカで産まれた日本人。大好きなスポーツで日本とアメリカの懸け橋になれたらと思います。これからもいろいろな経験を積んで、多くの選手の夢が叶えられるようにサポートをしていきたい」
夢はまだまだ続く。