B1初制覇へ、A東京が選んだ「変化」 ルカHCが理想とする高難度のバスケ

大島和人

A東京は読売巨人軍になれるのか?

最激戦区を勝ち抜くために今期は「変化」を選択したA東京 【(C)B.LEAGUE】

 アルバルク東京はBリーグの初年度を無冠で終えた。昨年9月22日に歴史的な開幕戦を戦うチームに選ばれた理由は、いわば新リーグの「ゴールデンステート・ウォリアーズ」「読売巨人軍」的な存在を期待されていたからに違いない。しかし昨季のA東京はチャンピオンシップを制した栃木ブレックス、オールジャパン(第92回天皇杯・第83回皇后杯)を制した千葉ジェッツの影に隠れた印象が強い。リーグ屈指の強豪たる戦力と質は見せたが、「憎らしいほど強い」という存在になれなかった。

 今季は栃木、千葉に加えて昨季のファイナリストである川崎ブレイブサンダースが東地区にスライドしてきた。A東京はそんな最激戦区にあって選択したのは“変化”だ。他の強豪に比べても、より大きく人を入れ替えている。新ヘッドコーチ(HC)に就任したのはルカ・パヴィチェヴィッチ氏。今年6月までHC代行として日本代表の指揮を執っていた、旧ユーゴスラビア・モンテネグロ出身の指導者だ。代表では短期間に激しく堅固な守備、ピック&ロールと言われる戦術をチームに浸透させ、フリオ・ラマス現HCに引き継いでいる。

 日本代表でもある田中大貴はチームの変化をこう説明する。「激しい、インテンシティー(プレー強度)の高いディフェンスを求めるコーチなので、昨年とそこが違うと思います。オフェンスは去年までディアンテ(・ギャレット)だったり個々の能力の高い選手がいましたけれど、今年は全員でどんどんボールを動かして、全員で得点を重ねる。そういうスタイルのチームになるという印象を持っています」

攻撃の中心だったギャレット脱退の影響

筑波大4年ながらA東京入りを決めた馬場。どのような活躍を見せるのか期待だ 【(C)B.LEAGUE】

 昨季の中心選手だったギャレットは元NBAのポイントガード(PG)で、司令塔と得点源の役目を担っていた。勝負どころでボールを独占する傾向があり、実際に相手の脅威となるプレーを見せていた。一方でそれがもろ刃の剣になった試合もある。加えて攻撃は彼にお任せとなってしまったら、チーム力は積み上がっていかない。そこでクラブはチームオフェンスの強化を選択した。

 田中はルカHCの指導スタイルをこう評する。「すごく細かい部分まで徹底するコーチだと思います。激しさと規律、プレーの正確性といったことに関しては要求が高い」

 ルカHCについては他の代表選手からも「あんなに細かく指導されたのは初めて」という話を耳にしている。ピック&ロールはスクリーンを掛ける選手と、ボールを持って連動する選手によるコンビプレーで、双方のポジショニングと動きのタイミングが決め手になる。ルカHCは足の位置、身体の角度といった要素を5センチ10センチ、5度10度まで徹底的に指導するのだという。

 今季のA東京は馬場雄大、安藤誓哉、小島元基といった若手のアウトサイドプレイヤーを新たに獲得した。馬場は筑波大の4年生として在学中の身だが、一足早いプロ入りを選択。195センチ・90キロという体格で走力や跳躍力に恵まれ、スキルも高い彼は東京五輪に向けた代表の中核でもある。昨年までは海外志向を公言していたが、代表でルカHCと出会い、国内でも能力を伸ばせるという確信を得て、A東京入りを決めた。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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