B1初制覇へ、A東京が選んだ「変化」 ルカHCが理想とする高難度のバスケ

大島和人

ルーキー馬場への期待

元日本代表HCのルカ・パヴィチェヴィッチ氏のもと、リーグ初制覇を狙う 【(C)B.LEAGUE】

 馬場はこのような表現でBリーグへの抱負を口にする。「外国人がいる分、リング付近の空間が広い。大学では見せられなかったプレーを見せたいと思います。基本は自分でいくよりパスの方が好きなので、そこは見せたい。ひとつ『上』という選択肢が増えるわけだから。そこは楽しい」

 彼は高速ドライブからのレイアップ、ダンクを売りにする選手。一方で周りを使うという持ち味はBリーグだからこそ出せる部分で、そういった経験をいち早く積むことで2020年に向けてチームをコントロールするすべも身に付けていくのだろう。

 A東京では本人が希望する司令塔ポジションのPGでなくシューティングガード、スモールフォワードの起用になる。そこについて馬場はこう述べていた。「ルカのバスケは誰が1番(PG)をやってもいい。スリーガードという形でやっているので、自分がリバウンドを取ったら持っていってそのまま組み立てます」

 ただし彼のプレーは大学生活との両立が前提で、9月22日に都内の高校での教育実習を終えたばかり。9月30日の開幕直前にも筑波大に戻って実習のまとめとなる3日間の集中講義を受ける。開幕までのチーム練習にはほとんど合流できず、個人練習が続いている。

 ルカHCも馬場については「開幕ぎりぎりの合流なので、まだ練習量が足りない。アーリーカップは少し出たし、チームの約束ごと、プレースタイルもある程度はかみ合っている。しかし合流して2週間くらいは、コンディションレベルをトレーニングコーチたちと考えて調整したい」と口にする。開幕直後はプレータイムを抑えた起用になるだろう。

「個」はB1最高レベル、求められるは姿勢

 外国籍選手も3名全員が入れ替わった。アレックス・カークは211センチ・114キロのセンターながらスリーポイントなどのシュートが巧み。ジャワッド・ウィリアムズは機動力やリバウンドに優れたフォワードで、やはり得点力が高い。この2人はNBAの公式戦でコートに立った経験も持っている。

 ランデン・ルーカスはNCAAの名門カンザス大を卒業したばかりのルーキープレイヤー。208センチという身長と高いアスリート能力を持ち、ポテンシャルに期待がかけられている。彼は0歳から3歳まで、11歳からの2年間と日本で2度生活しており、当時は英語より日本語の方が得意だったという。彼の意思と実力が伴えば20年の東京五輪で「日本代表」としてプレーすることもあり得る注目の存在だ。

 A東京は9月上旬のアーリーカップ関東で川崎、千葉を倒して優勝を成し遂げた。一方で24日の三遠ネオフェニックスとの練習試合は外国籍選手を2名欠いた相手に78−84で敗れるなど、まだチームには「波」がある。人が多く入れ替わり、高い理想を目指すとなれば、チーム状態が安定するまでにさまざまな紆余曲折もあるだろう。

 キャプテンの正中岳城は目指すバスケットの難易度を口にしつつ、このようなに希望と意欲を口にする。「自分がやりたいバスケットができる選手たちを俺はコーチしているんだと、ルカHCは言っている。ずっとできるということはないし、理想は高いところかもしれないですけれど、それにチャレンジしないことには目標とするところにいけない。強いチームがたくさんある中で勝っていけない」

 全員でボールを動かし、全員が点を取るバスケの実践は決して容易でない。またA東京の「個」はB1でも最高級のレベルにあり、昨年の彼らは内容的にも悪くないバスケをしていた。しかし少なくとも今季はより高い理想を追求しなければ、東地区すら勝ち抜けないというシビアな現実がある。彼らの危機感、変化を求める姿勢がコートにどう表れるか――。そこは今季のB1を見る上で大きな注目点だろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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