2年連続CS進出へ正念場のDeNA 勝ち抜くために不可欠な2人の投手

日比野恭三

ここぞという試合での勝負強さが光る井納 【(C)YDB】

 横浜DeNAが2年連続のCS進出に向けて、正念場に立たされている。

 7月に入ると同時に貯金生活を始め、同26日には阪神をかわして2位に浮上。その後は3位を定位置としながら、粘り強くシーズンを戦い抜いてきた。

 ところが9月に入って6勝9敗とやや失速したところに、13連敗から息を吹き返した巨人の猛追が重なった。両軍は同率3位で肩を並べて、ラストスパート勝負にもつれ込んでいる(9月18日終了時点)。

 選手層や経験値などの面から巨人有利と見る向きもある一方で、ホームゲームの数は巨人が11試合中4試合であるのに対し、DeNAは10試合中7試合。しかもDeNAには、3試合のビジターを戦った後、シーズンのラスト7試合がすべてホームという巡り合わせの良さもある。2位の阪神をも巻き込みながら、天国と地獄を分ける最終順位確定までの道のりはデッドヒートとなるだろう。

 9月(15試合)の平均得点が2.33点と打線が低調なDeNAにとっては、投手陣が失点を最小限にとどめることが勝利への条件になってくる。

重圧のかかる試合で本領を発揮する井納

 その計算が立つという意味で期待できる先発の一人が、井納翔一だ。

 井納は6勝(9敗)と勝ち星こそ伸びていないが、チームで最も長いイニングを投げ、先発した23試合のうち13試合でクオリティスタート(QS)を達成。特に、大一番と形容される重圧のかかる試合で本領を発揮する特性をもつ。

 昨シーズンは開幕戦、そしてCSファーストステージ第1戦の先発を任されると、いずれも7回を投げ切って勝利投手となった。

 ここぞという試合での頼もしさが今シーズンも健在であることを証明したのが、9月16日の巨人戦だ。試合前の時点で4位だったDeNAは巨人を1ゲーム差で追う立場。今シーズン最後となる直接対決2連戦に連敗でもしようものなら、今後の戦いがかなり苦しくなるところだった。

 その初戦の先発マウンドに立った井納は「一発勝負の気持ちで投げたい」との宣言通り、序盤から飛ばした。「最少失点で抑えた去年の開幕戦(対広島)を参考に」インコースへの直球を前半に多投、要所で使う決め球のフォークが生きた。5回の満塁のピンチを三直で切り抜けるなど6回無失点で踏ん張り、その後は惜しみなくつぎ込まれた救援陣が零封リレー。1対0の辛勝ではあったが、翌17日の試合には敗れて1勝1敗で2連戦を終えたことを考えると、チームにとっては点差以上に大きな勝利だった。

 ここ一番で力を発揮できるのはなぜか。

 その要因の一つとして31歳の右腕が挙げるのは、相手投手の存在だ。

「開幕戦や大一番と言われる試合は、相手もいいピッチャーが投げてきますよね。打線としては、なかなか点が取れない可能性も高い。でも、その代わり、試合のリズムは良くなるんです。ぼくは時間の使い方がうまくないので、味方の攻撃の時間が長くなると、どう行動したらいいかわからなくなることがあって……。だからベンチにいる時間はできるだけ短いほうが、テンポ良く、自分のリズムで投げられる。もちろん点は取ってほしいので、ちょっと矛盾してるんですけど」

 たしかに件の巨人戦では相手の先発マイコラスも好投し、DeNAの1得点は梶谷隆幸のソロ本塁打によるものだった。2時間52分という試合時間も、展開の速さを物語っている。テンポの良さを信条とする井納はその中を、まさに水を得た魚のように生き生きと泳ぎ回ったのだ。

 この日は、捕手の戸柱恭孝とのサイン交換でもテンポを意識した。井納は言う。

「ぼくはボールをもらったらすぐに投げたいタイプ。打者も考える時間がなくなりますし、自分もリズムに乗っていきやすい。これまではキャッチャーに合わせて構えることも多かったんですけど、この試合では自分がすぐに構えて、戸柱に合わせてもらうような感じにしました。そうすることで戸柱もサインを出しやすくなるのかな、と」

 現在の先発ローテの中では最年長の井納だが、独特の世界観に生きるがゆえ、「投手陣を引っ張るといっても、どうすればいいかわからない」と正直に語る。ただ、1イニングでも多く投げること、安定した投球を続けチームの勝利に貢献することについては「若い選手には負けたくない」と口元を引き締める。

「シーズンの残りの試合でしっかり投げて、その先のCSでも、投げて勝ちたいと思っています。CSの無敗記録をつくりたいな……」

 昨シーズンのCSでは各ステージで1勝ずつ、計2勝を積み上げた。それを3勝、4勝へと更新していく。密かな野心を最後にこぼして、井納は去っていった。

 もう一人、CS争いを勝ち抜くために不可欠な投手がいる。

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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