2年連続CS進出へ正念場のDeNA 勝ち抜くために不可欠な2人の投手

日比野恭三

今季は試練が多かった三上

三上はシーズン終盤の勝負どころへ向け、静かな闘志を燃やす 【(C)YDB】

 選手会長にしてブルペン陣のリーダー格、三上朋也だ。

 いま、DeNAの勝利の方程式は、8回をパットン、9回を山崎康晃が投げるパターンが定着している。問題は、先発が降板してからの6回、7回をどう切り抜けるかだ。ブルペンの陣容を見ると、左腕は田中健二朗に砂田毅樹、エスコバーと充実しているが、右腕はやや手薄な印象がある。クローザーやセットアッパーとしての実績があり、球威で抑え込める三上の存在はやはり欠かせない。

 三上にとって、プロ4年目の今シーズンは試練が多かった。

 59試合に登板した昨シーズンの防御率は2.61。

 57試合に登板した今シーズンの防御率は5.14。

 被打率も昨シーズンの2割1分8厘から、キャリアワーストの2割4分7厘に上昇しており、ぐいぐいと力で押していく本来の投球ができていないことを数字が示している。

 原因は何か。「前年の登板数が多かった影響があるのでは」という仮説をぶつけると、三上は首を傾けた。

「前年の影響というのは、説明もできないし証明もできないと思うので、わからないですね。ただ、シーズンの中での蓄積疲労というものは当然あります。中継ぎに関して言えば、夏場に疲れが出てくる。それは誰しもそうだと思う。その中でもいいパフォーマンスをして結果を出すということが求められるポジション。ただ、それだけのことです」

 今シーズンも、28歳の変則右腕は春先からフル稼働した。4月14試合、5月12試合、6月11試合と登板を重ねるにつれ、本人の言葉通り、疲労の蓄積は避けがたかったのだろう。7月の後半あたりから、失点のかさむ試合が増えていく。

8月にファーム調整も完全復調の手応え

 そして8月18日、3点のリードを守り切ることができなかった巨人戦終了後、故障以外では初のファーム降格が決定した。

 この時期、結果が伴わなくなった要因について問うても、三上は「ぼくにしかわからないこと」と、口をつぐむばかりだった。ただ、気持ちを逃げの方向へともっていくことだけは拒んでいたという。

「(ファームに)落ちて、腐るじゃないけど、気持ちをマイナスの方向に向けようと思ったらいくらでもできる状況だったと思うんです。でもやっぱり、そういうのは自分で許さないというか。腐っててもしょうがない。前にどんどん進むしかないと思ったので。やるしかないっていう気持ちでずっと練習をしてました」

 9月8日に1軍に昇格。復帰後すぐの阪神とのカードではサヨナラ打を浴びるなど悔しい思いも味わったが、その後の広島3連戦(9月12日〜14日)では3イニングを無失点、僅差のリードの場面を託された16日の巨人戦、18日のヤクルト戦も無傷でマウンドを降りている。

 現在のコンディションについて、三上は「良くも悪くもって感じですね」と語り、いまだ絶好調とは言えないようだが、「フォームのバランスはいい」と完全復調への手応えも感じ始めている。

大舞台でも普段通りが強みの一つ

 DeNAの残り10試合には、阪神戦5試合と中日戦3試合が含まれる。三上の対戦チーム別の防御率を見ると、対中日が0.00(登板9試合)、対阪神が2.08(同10試合)と相性がいい。

「どのチームも一生懸命抑えようと思って投げて、結果的に抑えられたのがたまたま中日と阪神だったというだけですよ。そういう結果が出ているからといって、『よし、オレのほうが強い!』みたいな感じにはぼくはならないです」

 図太いというべきか、三上は周囲の状況にあまり左右されることのない性格だ。「ここを抑えればCS進出が決定する」そんなシチュエーションを想像してもらったが、三上は表情を変えることなく言った。

「全然、気負いせず投げられると思いますけど」

 本人いわく、CSがかかっていようが、普段の1試合であろうが、「同じように緊張する」のだという。社会人時代、都市対抗の決勝戦に2年連続で先発した時も「ただの緊張と言ったらおかしいけど、緊張しすぎることはなかった」。

 大舞台でも普段通りでいられることは、三上の強みの一つと言っていいのかもしれない。シーズンの最終コーナーへ向け、静かな闘志を燃やす。

「勝ってても負けてても、どんなシチュエーションでも行くつもりでいます。10試合行けと言われたら行くつもり。それだけチームの役に立ちたい、離脱していたぶん取り返したいという気持ちは強いので」

 あちらが勝てば、こちらも負けられない。ここからは、そんな緊迫感が日増しに強まっていく。長身の見事な体躯を誇り、力でねじ伏せる投球ができる2人の右腕は、CS進出への欠かせぬピースだ。

(取材協力:横浜DeNAベイスターズ)

2/2ページ

著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント