【ボクシング】ゴロフキン対カネロは痛み分けドロー 内容は“年間最高試合”も判定に疑問符
“ミドル級頂上決戦”と称されたゴロフキン(左)対カネロの一戦は、ドロー判定で終わった 【Getty Images】
現地時間9月16日に行われたプロボクシングのWBA、WBC、IBF世界ミドル級タイトルマッチで、王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)と元WBC王者のカネロはフルラウンドにわたる熱戦を展開した。結果は118−110でカネロの勝利が1人、115−113でゴロフキンの勝ちが1人、114−114が1人という3者3様のドロー。ゴロフキンのデビュー以来続いた連勝(37勝33KO)はストップし、アルバレスのタイトル奪取もかなわなかった。
判定はゴロフキン圧勝に見えたが……
カネロ(右)自身は「私が勝ったと思った」とコメントしているが、試合内容としては終始攻め続けたゴロフキンが勝利していたように見えたが…… 【Getty Images】
カネロはブーイングの中でそう語ったが、本当に自身の勝利を信じられていたかどうか。序盤こそスピードで勝るカネロがアウトボクシングを展開したが、3回以降はゴロフキンが強烈なジャブ、着実なプレッシャーを利して主導権を掌握。35歳になったゴロフキンにもやはり全盛期の迫力はなかったが、それでも下の階級上がりのカネロに対してサイズ、パワーで明らかに上回った。
10回以降はカネロも懸命に反撃したものの、すでにパンチには力がなく、劣勢を挽回する決定的なパンチは不発。結果として、常に自ら試合を作り続けたゴロフキンが明白な判定勝利を手にしたかと思われた。ところが――。
カネロは健闘したがブーイングが注がれる
前評判以上のディフェンス力を見せ、成長の跡を残したカネロ(右)だが、判定によってブーイングを浴びることになった 【Getty Images】
断っておきたいが、ファイト自体は“年間最高試合候補”の声が挙がるほどの大熱戦だった。そして、4〜11ラウンドはやや劣勢であり続けたものの、その中でも糸口を探し求めたカネロの頑張りが目立った一戦でもあった。
まるでターミネーターのように前に出てくるゴロフキンのプレッシャーの前に、中盤以降のカネロは絶えずロープを背負わされての攻防を余儀なくされた。そんな状態でも、カウンターパンチと巧みなディフェンスでサバイブ。特にロープ際でもクリーンヒットをなかなか許さなかったディフェンスは前評判以上で、着実な成長を印象付けた。
一時はガス欠を感じさせながら、10ラウンド以降は脚をふらつかせながら懸命に反撃して最終ラウンドを締めくくったのも印象的だった。160パウンド(72.57キロ)のミドル級リミットでは初めての1戦で、カザフスタンの怪物相手にこれだけやれれば大したもの。前戦まで23試合連続KOを続けた怪物に判定負けを喫したところで、評価は決して下がらず、むしろその健闘をファンに称えられていたはずだ。
しかし、このような微妙な判定が出てしまうと、守られた形になった選手にブーイングが注がれるのもボクシング界の常。現場の人間の大半は2〜6ポイント差でゴロフキン勝利を支持しており、筆者も含め、116−112と見たメディアが多かった(少数ながらドロー、さらに少ないがカネロがきん差で勝利と見た王手メディア、関係者もいたことは記しておきたい)。そんなファイトが引き分けになったがゆえに、これもアンチも多い人気者の宿命か、カネロはしばらく厳しい目にさらされることになる。そして、ボクシングにはつきものとはいえ、これほどの好試合が判定問題とともに記憶されてしまうことがやはり残念でならない。