“堀カラー”でもぎ取った、浦和のACL4強 巧みな川崎攻略法で実現した逆転劇

飯尾篤史

狙いどおりだった浦和のシステム変更

堀監督(中央)はシステムやポジションを変えながら、巧みに川崎の守備ブロックを攻略 【(C)J.LEAGUE】

 一方、巧みだったのは、川崎が築いた守備ブロックに対する浦和の攻略法だ。

 1−1で迎えた63分、センターバック(CB)のマウリシオに代えて高さのあるFWズラタンを投入し、アンカーを務めていた青木拓矢をCBに下げて4−2−4に変更。前線に右からラファエル・シルバ、ズラタン、興梠、高木俊幸と並べてサイド攻撃を強めていく。その狙いについて堀孝史監督が言う。

「ラファエルと高木のところでサイドに起点を作り、外からの攻撃を目指すなかでズラタンを入れた」

 その直前、アウト・オブ・プレーになった際にベンチから矢島慎也に変更の内容が書かれたメモが渡され、ピッチ内に混乱なく伝達されたのも見逃せない。

ハーフスペースを攻略して決勝点を挙げた高木(右)。堀監督の狙いどおりの形だった 【赤坂直人/スポーツナビ】

 70分にCKからズラタンがゴールを奪って合計スコアを3−4にすると、75分には矢島に代えて駒井善成を右サイドに投入。青木を再び中盤に戻し、前線はズラタンを1トップ、ラファエル・シルバと興梠を2シャドーにする「3−4−2−1」に変更。右サイドから駒井、森脇が、左サイドから高木と槙野が攻め込んで川崎のディフェンスラインを横に広げたうえで、インサイドにも人を増やした。

 柏木のパスからR・シルバが決めた84分のゴールも、森脇のパスから高木が決めた86分のゴールも、いずれも中央とサイドの間のスペース――いわゆるハーフスペースを攻略したことで生まれたが、「サイドの攻撃を強めるために駒井を入れて、中の人数も増やして攻めていった」という堀監督の言葉を聞けば、狙いどおりだったことがうかがえる。

 浦和は4−1で第2戦を制し、2試合合計5−4で4強入りを果たした。

準決勝で上海上港と決着をつける

「日本を代表して戦っていきたい」という西川周作。準決勝の相手はここまで1勝1敗の上海上港だ 【赤坂直人/スポーツナビ】

 7月31日に堀監督が就任して以来、守備における意識の改善や、守備戦術の整備、メンバーの変更など、少しずつ変化を加えてきた。9月9日のJ1第25節の柏レイソル戦からシステムも「4−1−4−1」に変更し、“堀カラー”をさらに強める浦和にとって、戦況に応じてポジションとシステムを変えたうえでもぎ取ったこの勝利は、大きな自信になるはずだ。

 2試合合計スコアによって勝敗が決まり、アウェーゴール数が大きくモノを言うトーナメント戦特有の舞台装置に加え、リードしている川崎に退場者が生まれるというアクシデントが、選手たちの心理面、両監督の采配に大きく影響を与えて、想像のつかなかったエンディングを導いた。

 浦和の準決勝の相手は、グループステージでも対戦し、1勝1敗だった中国の上海上港だ。決着をつけるには最高の舞台が用意された。「自分たちはもう、勝ち上がっていくしかない。日本を代表して戦っていきたい」という西川周作の言葉は、浦和の共通する思いに違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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