春の日本一・立教大の連覇を阻むのは!? 東京六大学野球秋季リーグ戦見どころ

清水岳志

春、59年ぶり日本一の立教大

“ミスター”こと長嶋茂雄氏が在籍していた1957、58年の4連覇以来となる連覇を狙う立教大 【写真は共同】

 立教大を止めろ――。

 35季ぶりのリーグ優勝を果たした春の覇者・立教大は大学選手権も制して59年ぶりに大学日本一に登り詰めた。秋も戦力は充実して優勝に最も近い位置にいる。立教大の連覇を阻むとしたら他大学には何が必要か。秋のシーズンの注目点、見どころとして挙げてみた。

慶大は通算14発の岩見に注目

 まず、春2位の慶応義塾大。早慶戦連勝で自力優勝のチャンスがあったが、第2戦を落として、立教大に優勝をプレゼントしてしまった。立教大からも勝ち点を挙げていただけに悔しい思いをしたことだろう。慶応義塾大の注目は岩見雅紀(4年・比叡山)外野手だ。規格外の飛距離を持つドラフト候補。春は5本塁打(通算14本)を放ったが、実は早慶戦で10打数0安打と鳴りを潜めた。岩見が打点を挙げていたら連勝していたかもしれない。ただ自身が不調でもナインに声をかけて叱咤する優しく熱いナイスガイ。岩見が息切れせずにホームランをコンスタントに積み重ねるようなら、優勝争いに加わるだろう。

スロースターター返上したい法大

 法政大はなぜか、いつもスロースターターだ。春は勝ち点を2つ献上してからの6連勝で3位に食い込んだ。リリーフだった長谷川裕也(4年・聖望学園)を先発に、先発の熊谷拓也(4年・平塚学園)を抑えにして座りがよくなった。また実績のある菅野秀哉(3年・小高工)もケガから復調し先発陣に戻って、最優秀防御率のタイトルを取った。長谷川と菅野の先発が2枚万全で序盤から登板していけば、スロースターターを返上できそうだ。

投打に総合力高い早大

 4位だった早稲田大。首位打者に輝いた加藤雅樹(2年・早稲田実)外野手は4本塁打、13打点と素質を開花させた。だが、厳しいようだが、実はゲームの決定機で4番の責任を果たせていないことが多い。一方で、ケガが治った三倉進(4年・東邦)外野手は夏のオープン戦で結果を残してきた。プロも一目置く高いポテンシャルを最終シーズンに示せるか。加藤と3番に入りそうな三倉が活躍できれば、投手陣は下級生のころから実績のある大竹耕太郎(4年・済々黌)、小島和哉(3年・浦和学院)らがいるので総合力は立教大にも劣らないとみる。

明大は齋藤、森下の奮起に期待

 2016年は春秋連覇し、3連覇を目指した明治大が5位だったのは意外だった。開幕から4連勝で勝ち点2と立教大と同率トップに立ったが、あとの3カードで勝ち点を落とした。軸となる野手がおらず、打順も固定できなかった。後半7試合の1試合最多得点が3点どまり、シーズンのチーム打率が2割2分1厘では苦しい。

 打線の奮起が急務だが、ここはあえて投手陣に注目したい。日米大学野球、ユニバーシアードで活躍したプロも狙う左腕・齋藤大将(4年・桐蔭学園)と、春に防御率2位になった2年生右腕の森下暢仁(大分商)だ。森下は二つの国際大会でエース級の役割を果たした。両輪が他大学の打線を抑え込むと上位進出が見えてくる。

東大の速球派左腕・宮台の復活は!?

最速150キロを計測する速球派左腕・宮台擁する東京大。39季連続最下位からの脱出を狙う 【写真は共同】

 さて、東京大。見どころはピッチャーの宮台康平(4年・湘南)しかいないだろう。プロ志望は変わらないと聞く。3年の秋から今年の春まで、肩を壊してマウンドに上がる機会すら減っていた。春は防御率8点台だった。代打で出るなんていうことではなくて、投手として150キロを出して白星を挙げたりすると、39季連続最下位から脱出なんてことも。そうなったら、そこそこの騒ぎになるはずだ。

立教大はミスター以来の連覇を狙う

 迎え撃つ立教大。夏のオープン戦は東京ヤクルト、東北楽天のファームに勝ったり、JR東日本、日本通運など社会人の強豪とも互角にわたりあった。優勝が自信につながっているようだ。投手陣では田中誠也(大阪桐蔭)、手塚周(福島)の2年生の2本柱は安定している。田中は緩急を生かしたヤクルトの石川雅規のような技巧派左腕。コーナーをついてクレバーな投球をする。一浪をして立教大に入った手塚の生命線は右打者の外角低め、左打者のひざ元へのストレートだ。そして1年生リリーバーの中川颯(桐光学園)も崩れない。

 注目選手はキャプテンの熊谷敬宥(仙台育英)と笠松悠哉(4年・大阪桐蔭)の2人。ドラフトでも指名される可能性がある。“クセ者”熊谷と、打率2位、16打点で打点王のスラッガー笠松。2人が機能すれば連覇も見えてくる。前回の連覇は1957年と58年の4連覇で長嶋茂雄巨人終身名誉監督が最初の2連覇に貢献した。その時以来の連覇になれば59年ぶりというから、ちょっとした事件だ。そんなシーンを目撃するか、他大学が巻き返すのか。
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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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