伊達公子、現役生活2度目の幕引きへ 充実の9年半で「やめたくない」思いも

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2度目の現役引退を表明している伊達公子が7日、東京・有明コロシアムで記者会見を行った 【スポーツナビ】

 テニス女子の元世界ランキング4位で、2度目の現役引退を表明していた伊達公子が7日、東京・有明コロシアムで記者会見を行い、決断の経緯や今の心境を語った。

 28日に47歳を迎える伊達は白いスーツに身を包み、終始晴れやかな笑顔で会見に臨んだ。近年はけがに苦しみ、昨年2月と4月に左膝半月板の手術。リハビリを経て今年5月に復帰するも、7月に3週間行った米国遠征で肩を痛め、「少しずつ『決断しなければいけない時期なのかな』というのが膨らんできた」と心境を吐露。帰国後の8月上旬にコートを去る決意をしたという。

 11日開幕のジャパン女子オープン(東京・有明)が最後の大会となる。満身創痍(そうい)の中、「何か見えない力が最後に働いてくれると信じて当日を迎えたい」と最後の力を振り絞るつもりだ。

 以下、伊達の会見全文および一問一答。

気持ちは衰えずも「膝に加えて、肩に問題を抱えるように」

引退を決めたのは8月。重なるケガの影響が大きいと話す 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

<あいさつ>
 本日は伊達公子の2回目の引退会見ということで、皆さんお集まりいただきありがとうございます。先日ブログで今の心境、そして引退を決意するまでの気持ちをお伝えしましたが、皆さんの前で直接自分の気持ちをお伝えする場ということで、そして(この)場所を選んだのは有明コロシアムということで(会見をします)。

 再チャレンジを始めた場所もテニスコートでした。そして今回、引退試合として選んだ場所が有明ではあるんですけれど、今大会は(センターコートの)有明コロシアムが使えないということで、コートに立ってプレーをするチャンスはないので、思い出の詰まったこの有明コロシアムを皆さんに気持ちをお伝えする場所として選ばさせていただきました。

 これから質問がいろいろくると思うので、私からお伝えすることはこの辺りにして、後にお話したいと思います。今日はよろしくお願いします。

――今の率直な心境をあらためて聞かせてください。

 プロテニスプレーヤーとしての残り時間が少なくなってきて、カウントダウン状態になってきているという気持ちを自分でも感じ始めてはいます。ただこれから始まる最後の大会が控えていますので、今はどちらかというと引退が迫っていることを考えることよりも、これまでと同じように、試合に挑むための自分のやるべきことを最優先にしています。体(のケア)にどうしても時間を割かなければいけないことが多くなってきているので、練習の質ももちろん求めるべきことではあるのですが、体を良い状態で試合当日に合わせるということを最優先にして今は時間を過ごしている状態です。

――ブログに『決断』というタイトルで(引退について)書かれていました。決断した時期、それに至った気持ちの向き方など教えてください。

 昨年4月に膝の手術をして、今年の5月に岐阜で復帰戦(カンガルーカップ国際女子オープン)を果たして、その後も万全という状態にはなかなかいかなかった現実がありまして。気持ちが少し落ち込んだり、思ったように体が付いてこないもどかしさを感じたりすることも多くはなってきていました。それでも自分の気持ちが衰えることもなかったですし、時間をかければ必ずできるという思いをずっと持ち続けていました。

(5月に)復帰を果たして、その中でやはりグランドスラムの、今のランキングでいうと予選が現実的なのですが、グランドスラムの予選でもう一度プレーしたいという強い思いを持っていました。でも全米オープンを控えて米国遠征を3週間ほど行い、そこで戦って帰ってきて、膝に加えて肩に問題を抱えるようになってしまって。ドクターと話をし、この3週間を自分の中で整理してみると、少しずつ「決断しなければいけない時期なのかな」というのが膨らんできたのが、ちょうど米国から帰ってきてからでした。それが8月上旬になるかと思います。

――ブログ投稿の日付が8月22日でした。決断したのはその少し前?

 最終的な決断はもう少し……(引退が)よぎってきたのが8月上旬なのかな。7月末に米国から帰ってきまして、すぐに何人かのドクターに会いに行き、肩を見ていただいて。膝だけでも難しい状況に加えて肩という二重苦になって、二重苦、三重苦、どこまでが四重苦か分かりませんが(苦笑)、肩というのが加わった中で、当然いろいろな段階を踏まなければいけないことがあったので、最終的な決断をした日をハッキリと言うのは難しいのですが、自分の中で固まったのは8月の上旬だった記憶があります。

「最後に戦う場所は東京にしたい」

「最後に戦う場所は東京にしたい」ということで、有明で行われるジャパン女子オープンに決めた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――最後の大会をジャパン女子オープンに決めた理由は?

 引退の気持ちが固まり始めた段階で、引退試合、最後の試合になる大会をどこにするかを自分なりに考えていました。自分の体、自分の思い、そんなことを考えていると、やはり今の私には東京でプレーすること、その引退を考えた時期がちょうど秋のアジアシーズンということもプラスして、なのであれば最後に戦う場所は東京にしたいという思いが非常に強くなりました。有明にすることが自分の思いとしても、これまで再チャレンジを始めてから、またファーストキャリアの間にもサポートしてくれたファンの皆さんにも……。

 さかのぼればファーストキャリアの最後はニューヨークでした。チャンピオンシップス(チェイス選手権)が当時あって、有明で9月にプレーをして、最後の引退試合は(11月の)ニューヨーク。(引退の)セレモニー的なものをせずにファーストキャリアを終えたということを長い間、ファンの人たち、周りの人たちにも言っていただくことが多かったので、今回は自分の思いとしても東京を最後にしたいという気持ちでいました。

――思い出のたくさん詰まった有明というのもタイミングが良かった?

 そうですね。タイミングという意味では当然、日本ということを考えて、そして東京ということを考えると有明、できればコロシアムと言いたかったのですが、ジャパン女子オープンは残念ながら(有明)コロシアムは使わないということで。ただ、今の私のランキング、プロテクトランキングを使ったとしても本戦からの出場というのは現実的に非常に難しい状況でしたので、ワイルドカードをお願いして出場する機会をいただきました。それがなければ(コロシアム以外も含めた)有明のコートでプレーすることすらも難しかったので、まずは主催者枠で出場させていただくチャンスをいただけたこと(に感謝している)。
 ただ、ワイルドカードをリクエストした時は全然引退を考えていなかった段階で(苦笑)。その後も突き進むつもりで、「ぜひワイルドカードをお願いします」というお願いをしていました。その流れの中で引退することになってしまったという経緯は(大会側に)お話したのですが、そのチャンスをいただけた中で、東京でのプレーを私自身が希望して実現することになりました。

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