井上尚弥、転機となる米デビュー戦へ 「人生がガラッと変わる一戦になる」

平野貴也

WBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥の米デビュー戦が迫ってきた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 世界が認める“モンスター”になる――。

 プロボクシングWBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(大橋)が現地時間9日、米国カリフォルニア州カーソンのスタブハブ・センターで、同級7位のアントニオ・ニエベス(米国)を相手に6度目の防衛戦を迎える。

 井上にとっては、プロでは初となる海外のリング。ボクシングの本場である米国でのデビュー戦は、世界クラスのスターへの階段を上がる一歩となる。井上は「日本でも、米国でも、試合で見せたい物は同じ。ファンはKOという醍醐味(だいごみ)を味わいに来ていると思っています。ただ、米国のファンの方がエキサイティングな試合やKOをより強く求めていると思いますし、そのちょっとした違いに応えていきたいという気持ちはあります」と敵地に乗り込む意気込みを話した。

米デビュー戦は「意外と早くチャンスがきた」

「米国のファンの心をつかめれば、また見たいと思ってもらえる」と、海外での戦いでインパクトを残したいと話す 【スポーツナビ】

 ニエベス戦は、目の肥えた米国ファンを魅了し、井上というボクサーの魅力を世界に発信するための試合だ。

 いつでも勝利と敗北では、その後にもたらされるものは大きく異なるが、この一戦に関しては、勝つだけでなく、世界のボクシングファンに「軽量級最強は井上」というイメージを植え付けられるかどうかが試される。

 井上は短いキャリアで2階級を制し、軽量級で最も評価が高い4階級制覇王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)への挑戦をもくろんでいたが、ゴンサレスが3月にプロ47戦目にして初黒星を喫してWBC世界スーパーフライ級王座から陥落。今回の米国初進出で「井上が強い」というイメージを与えられれば、世界の評価と期待は高まり、海外でビッグマッチを組まれる可能性が膨らむ。

 井上は、米国デビューの意味をしっかりと受け止めている。ターニングポイントを迎える気持ちを次のように話した。

「なんで、ロマゴン(ゴンサレスの日本での愛称)が軽量級で注目を集めたかと言えば、倒すからですよ。ロマゴンがどれだけ無敗でも、足を使って(相手から距離を置くアウトボクシングで)ポイントアウトをする選手だったら、今ほどの注目度はないはず。軽量級でもKOを生み出せるということは、米国でも根付いてきていると思うので『アイツは、何か期待できるぞ』というところを見せたいですね。米国のファンの心をつかめれば、また見たいと思ってもらえるし、対戦相手次第では、米国に呼ばれる可能性も高くなると思います。自分の今後のボクシング人生がガラッと変わる一戦。かなり重要な鍵になると思います」

 昨年9月には、ゴンサレスの試合を見るために渡米。当時は、ゴンサレスを倒さなければ、米国デビューのチャンスはやってこないと思っていたという。だから、ワクワクしている。「ロマゴンは日本の帝拳プロモーションだから、日本でやる可能性が高いかなと思っていました。海外の試合に呼ばれるのは、ロマゴンのような相手に勝ってからかなと。だから、あれから1年ですんなりと米国での試合が決まって、意外と早くチャンスがきたという印象です」

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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