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全米オープン、躍進の杉田に注目
女子は大坂&“花の94年組”に期待

杉田、日本男子トップとして臨む全米

日本男子のトップとして、全米に挑む杉田
日本男子のトップとして、全米に挑む杉田【写真は共同】

「二人が戻ってきた時に、日本のテニスが良い状態で盛り上がっているようにしたい」


 全米オープン(現地時間28日開幕、米国ニューヨーク)を日本人トップ(世界ランキング44位)として迎える杉田祐一(三菱電機)は、通る声でそう言った。彼が言う「二人」とは、手首のケガで欠場を余儀なくされた錦織圭(日清食品)と、今年3月に負った左膝前十字靭帯(じんたい)断裂により、年内のツアー離脱が確実視されている西岡良仁(ミキハウス)。彼らがコートを離れるその間、自分こそが日本テニスを背負っていくのだという自覚と覚悟を、杉田は口にすることをいとわなかった。

 それは今年7月にATPツアー初優勝を成し遂げ、当面の目標としていたトップ50入りも果たした杉田が、これまで錦織や西岡から受けてきた“恩義”に報いるためでもあるだろう。


 28歳の杉田にとって1歳年少の錦織は、常に、世界で戦う上でのヒントを与えてくれる存在だ。錦織に「仙人のよう」と形容された杉田だが、その己に厳し過ぎる姿勢が時に、一つの敗戦や悔いに彼を長くとどまらせた。しかし、負けてもすぐに次の戦いが待つツアーの日々を生き抜くには、気持ちの振れ幅を最小限に抑える必要がある。

「勝っても負けても、淡々と過ごすことが大切。圭を見ていて、そう感じる」

 かつて杉田は、課題克服のヒントを錦織の姿に求めていた。

杉田の活躍が生む推進力

 その錦織以上に杉田に多大な影響を及ぼしたのが、杉田より7歳年少の西岡だろう。同じトレーナーに師事している縁もあり、若くしてツアーで活躍する西岡の姿を、杉田は間近に見る機会が多かった。西岡がどのように目標を設置し、その地点に至るためにいかなる計画を立てているのか……それらをつぶさに見ながら、杉田は「若いのに、すごく頭が良い」と感銘を受けたという。同時に西岡が進む道は、杉田にとっても一つの指標となっていた。「彼がいなかったら、今の僕はなかったかもしれない」。約1年前――今に連なる躍進の道を走りはじめた頃、杉田はそう振り返った。


 その杉田が今では日本のフロントランナーとなり、他の選手たちに多大なインパクトを与えている。杉田がアンタルヤ・オープンを制した時、西岡はツイッターで「杉田さんツアー優勝はエゲツないですよ。(中略)復帰後目標がさらに増えたのはめっちゃやる気出る」と、コート復帰へのモチベーションを公言した。

「27歳あたりにピークを持っていきたい」と常々口にしていた24歳のダニエル太郎(エイブル)も、杉田の28歳での優勝によって、自身の目標に正当性を与えられたという。好循環の輪は、錦織や西岡が会場にいなくとも、相互に作用しながら巡っていく――。現在、その輪の中核を成す杉田の一途に戦う姿は、一層の推進力を他の選手にも与えるはずだ。

内田暁
テニス雑誌「スマッシュ」などのメディアに執筆するフリーライター。現役当時の伊達公子に魅了され、テニスの世界へ。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、デルレイビーチ国際選手権での錦織圭の初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)がある。実は、漫画「テニスの王子様」関連の仕事もやっていた。