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絶対的本命の敗戦が競技を面白くする
番狂わせが目立ったロンドン世界陸上
男子100mでボルト(右)が敗れるなど、番狂わせが目立った大会となった
男子100mでボルト(右)が敗れるなど、番狂わせが目立った大会となった【写真:ロイター/アフロ】

 これだけ“番狂わせ”が目立った大会がこれまでにあっただろうか?


 現地時間13日に閉幕した陸上の世界選手権(イギリス・ロンドン)において、昨年のリオデジャネイロ五輪の優勝者は47種目中22種目(男子が9種目、女子が13種目)でしかメダルを取れなかった。15年北京大会の優勝者が、リオ五輪では47種目中32種目(男子16種目、女子16種目)でメダルを獲得していることと比べると今回は少ない。


 ロンドン大会の金メダリストの中でリオ五輪ではメダルを獲得していないのは20種目で、リオ五輪の金メダリストの中で北京大会でメダルを獲得していないのは20種目なので差はない。


 だが、印象は今回のように多くの本命が敗れ、又多くの伏兵が優勝した大会は珍しい、というものだ。


 何故だろうか?


 注目種目で絶対的本命と見られていたスーパースターが敗れ、上位入賞の可能性はまずない、と思われていた選手がメダルを獲得したからだ。

リオ金のウイボー、トンプソンらが低調な記録

リオ五輪女子100金のトンプソンは、メダルに届かなかった
リオ五輪女子100金のトンプソンは、メダルに届かなかった【写真:ロイター/アフロ】

 例えば女子200、400メートルの2冠の可能性が大きかったシャネー・ミラー・ウイボー(バハマ)は200メートルの銅メダル1個だけに終わってしまった。特にリオ五輪の再現となるミラーとアリソン・フェリックス(米国)の激闘が予想された400メートルでは五輪2位のフェリックスが3位、五輪金メダリストのミラーは4位にまで沈んだ。


 その400メートルで優勝したフィリス・フランシス(米国)はリオ五輪では5位の選手なのだが、2位のサルワ・エイド・ナセル(バーレーン)にいたっては未だ50秒を切ったことがない選手だ。その2人が稀代のスーパースター2人を敗ったことで番狂わせの印象は否めない。


 一方男子では400メートル世界記録保持者のウェイド・バンニーキルク(南アフリカ)が2冠を狙った。400メートルでは順当に優勝したが、200メートルでは伏兵としか言えないリオ五輪8位のラミル・グリエフ(トルコ)に優勝をさらわれてしまった。11年にアゼルバイジャンからトルコに国籍変更したグリエフの世界大会での最高成績は北京大会の6位なので、バンニーキルク、アイザック・マクワラ(ボツワナ)、アミール・ウェブ(米国)に勝てるはずがない選手なのである。


 女子100メートルの絶対的本命は昨年のリオ五輪で異例の強さで2冠を達成したエレイン・トンプソン(ジャマイカ)だった。そのトンプソンはレース最後の10メートルで大失速、5位まで落ちてしまった。優勝したトーリ・ボウイ(米国)はリオ五輪2位の実力者でメダルは確実視されていたが、トンプソンのメダルなしは番狂わせ以外の何者でもない。

女子3000障害の銀は「何かの間違い?」

女子3000m障害のフレリックス(後方右)の銀メダルは、世界の記者も驚きだった
女子3000m障害のフレリックス(後方右)の銀メダルは、世界の記者も驚きだった【写真:ロイター/アフロ】

 女子3000メートル障害は現在多く強豪がひしめき、ゆえに最もメダル争いが厳しい種目である。


 8分52秒78の世界記録保持者でリオ五輪金メダリストのルース・ジェベト(バーレーン)、今年8分58秒78の世界ジュニア記録を樹立した若手の成長株セリフィン・チェプティーク・チェスポール(ケニア)、ディフェンディング・チャンピオンで昨季・今季と9分00秒台を記録したヒュビン・キエン・ジェプケモイ(ケニア)、そしてもう1人、今季9分00秒台の記録をたたき出したビアトリス・チェップコエチ(ケニア)などがメダルを争うと予想されていた。


 しかしジェプケモイが3位、チェップコエチが4位、ジェベトは5位、そしてチェスポールが6位と誰も金、銀メダルに届かなかった。優勝したエマ・コバーン(米国)はリオ五輪3位の選手なので彼女の優勝は番狂わせではない。しかし2位に入ったコートニー・フレリックス(米国)は決勝で自己ベストを15秒も更新しての銀メダルだった。陸上専門家たちが「何かの間違いだろ?」と最も驚いた結果だった。

K Ken 中村

三重県生まれ。カリフォルニア大学大学院物理学部博士課程修了。ATFS(世界陸上競技統計者協会)会員。IAAF(国際陸上競技連盟)出版物、Osaka2007、「陸上競技マガジン」「月刊陸上競技」などの媒体において日英両語で精力的な執筆活動の傍ら「Track and Field News」「Athletics International」「Running Stats」など欧米雑誌の通信員も務める。06年世界クロカン福岡大会報道部を経て、07年大阪世界陸上プレス・チーフ代理を務める。15回の世界陸上、8回の欧州選手権などメジャー大会に神出鬼没。

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