19年以降の日本ラグビーはどうなる? TLネクスト・瓜生氏に聞く未来
運動能力の高い選手を呼ぶために……
8月18日から新シーズンが開幕するトップリーグ。国内最高峰のラグビーを見せる場として、今後も重要な役割を担う 【写真は共同】
――スーパーラグビーとトップリーグ、どういう形でバランスを考えている?
日本代表と同じで、スーパーラグビーがやっている時期でもトップリーグをやるべきだと思います。選手がどちらのレベルを選ぶか、選択肢を与える。トップリーグ、サンウルブズを分けて考えラグビー界全体のレベルを底上げするのが理想だと思います。
――ユース世代の試合を増やす取り組みは?
高校、大学と連携をこれから取っていかなければいけないですが、個人的には一発勝負のトーナメントではなくて、リーグ戦を実施し試合数を増やすべきだと思っています。今は圧倒的にユース世代の試合数が少ないですよね。特に地方の県大会に出られない学校だったら、3年間で3試合しかやらないとか、そういう状況が出来上がってしまっている。中学から実施していいと思いますが、リーグ戦によって試合数を増やす。それをしないといけないかなと思います。
――大学生がトップリーグでプレーすることを今後どうしていく?
状況と選手のレベルを見て、どんどん認めていくべきだと思いますね。今後はトップリーグチームも選手を1チーム60人ぐらい抱えるような状況になるかもしれない。そうなったときに試合に出られない選手達は試合経験を積めなくなる。サテライトリーグを公式戦としてつくる事も考えていますし、そこに大学が参入しても面白いかもしれません。
――運動能力の高い選手をラグビーに呼び込むアイデアは?
身体能力の高い選手は、まずは野球やサッカーに行ってしまう。小さい頃からその競技に触れる環境があるからです。そういう土壌や環境が野球やサッカーにはありますが、ラグビーにはまだまだ少ない。日本はどうしても一つの競技を始めると、その競技を生涯ずっとやってしまう傾向があります。「経歴や年齢は関係なく、いろいろなスポーツをやってもいいんだよ」という文化をラグビーを通じて発信していければと思います。
――イングランドのように重点強化校をつくるというのは? そこからプレミアのクラブとつながる仕組みをつくり、学校にアカデミー的な役割を担ってもらう
ユースがそういう形になるべきだと思っていて。学校とユースとが提携して、練習の合間に授業に行って単位をもらうとか。もし日本でもそういう仕組みがつくれるのならば、それは理想の形になりますよね。トップリーグは企業スポーツですが、企業スポーツの姿はこれから変化が求められると思います。「企業支援型スポーツ」といった意味合いで考えていますが、企業はスポーツに支援を行いリーグをサポートしながら、選手達は競技力向上と合わせてきちんと大学を卒業する。または、大学をきちんと卒業できた選手がトップリーガーとなれる。そういう人たちがリーグで活躍する姿をつくりたいですね。NFL(アメリカンフットボール)は入団の評定が厳しく設定されているということを聞きますし、日本のスポーツも文武両道であるべき。ラグビーはそれを体現できるスポーツであってほしいと思っています。
トップリーグには習慣を求める
圧倒的に少ないですね。ニュースに出るのはプロ選手が多いですけど、だいたい日本人でもチームに1割〜2割程度ではないでしょうか。もちろん少しずつ増えていますが、外国人選手を含めてもプロ選手は3割程度ではないかと。外国人枠についても考えるべきですね、リーグのレベルが高くなり試合が面白くなりますから。ただ、バランスです。日本人選手がうまく育って、外国人のいいところをうまく吸収できるように、良いバランスを見つけたいですね。
――今後トップリーグで指揮を執ってもらいたい海外の大物は?
私は逆に、日本人で海外に通用するヘッドコーチがすぐにでも出てきてほしいと思いますね。やはり日本のリーグで海外の有名な監督が指揮をして、その戦術を見られるのはすごくワクワクするし面白いですけど、それ以上に私は日本人、例えば清宮(克幸)さんのような話題性を持った監督がもっと増えてくると、トップリーグも更に発展していくんじゃないかと思います。
――ラグビーのスタジアムを今後どうしていくのか、施設面など環境をどう整えていくのか?
まず、2試合同時開催をなくすことですよね。1会場1試合開催にして、対戦チーム同士が自分たちの好きな集客ができた方がいいですね。その上でいろんな策を講じてお客さんに楽しんでもらう。トップリーグの企業というのは世の中的に大企業ばかりで、特に通信系や電機系の会社が多数おられます。なので、各企業のテクノロジーを生かし、ラグビー独自のスタジアムソリューションを開発したり、是非いろいろとチームと協力してやっていきたいですね。
――ネット配信や、スタジアムでスマホを活用する施策は打てない?
もちろん、そういったコンテンツはどんどん使っていきたいですね。新しい技術を駆使してラグビーをアピールしていくのも忘れてはいけない。五郎丸(歩)選手が有名になって観客数は飛躍的に上がりましたけど、昨年度の集客数の落ちを食い止められなかったのはトップリーグの反省すべきところ。いろんな新しい技術を使って、そういった人たちを食い止める何かがあったのではないかと。スポーツには人気の部分と習慣の部分がありますが、トップリーグは人々の習慣となるような部分をつくっていきたい。流行だけで極端に集客数が減ってしまうことは避けないといけないですよね。代表が成績で集客が左右される事はあると思いますけど、リーグは国内にぶれない土台をきちんとつくっておかないといけない。
――トップリーグの未来に向けて、観客を増やす方法はある?
今は起死回生の策なんてないと思っています。そんな答えがあれば野球やサッカーももっと簡単に観客を増やしていますよね。野球やサッカーもそんな簡単な道のりで今のリーグをつくり上げた訳ではないと思いますし、今も努力をしてその人気を維持しています。今ラグビーが何かできたとしても、それはただの“ドーピング”だと思っています。トップリーグはそれをやるのではなく、10年先を見てしっかりと国内に土台をつくり、緩やかな傾斜でも良いから集客を含めたラグビー文化が右肩上がりになるように。入場者数が1000人だった競技場が10年後には8000人になりましたとか、そういう増やし方を各地域で地道にやる。地道な作業なくして私は観客数が増える事はないと思います。
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瓜生氏にとってラグビーとは、「私を成長させてくれるもの」。 【スポーツナビ】