三原舞依、スケートへの情熱を胸に 「夢」から「目標」に変わった五輪

野口美恵

追い込まれた境地で力を発揮

四大陸選手権ではショート4位から逆転優勝。追い込まれた状況から強さを発揮できるのも持ち味と言える 【坂本清】

 迎えた16−17シーズン。ため込んだマグマが爆発する。GP初戦のスケートアメリカでは、浅田と同じ試合に出場する、夢のような展開となった。会場で一緒に撮ってもらった写真を携帯の待ち受け画面にし、お守りに。怖い物なしで臨んだことが演技に躍動感を与え、ショート2位、フリー3位での銅メダルとなった。

「点数(合計189.28点)は信じられませんでした。でもこの舞台で滑ることができてうれしくて、自然に笑顔になれました。フリーはシンデレラになりきって滑ることが今日の目標で、それはできたと思います」

 12月末の全日本選手権では、フリーでパーフェクトの演技を披露。会場からスタンディングオベーションの喝采を受け、銅メダルをつかんだ。

「去年は入院してテレビで見た全日本選手権。まさか表彰台に乗れるとは思わなかった」と顔をほころばせた。

 さらに平昌五輪の会場で行われた2月の四大陸選手権では、ショート4位からフリー首位での逆転優勝。3月にヘルシンキで行われた世界選手権は、ショート15位から、フリー4位での総合5位。4月の国別対抗戦のフリーでも、日本の歴代最高記録となる146.17点をマークした。常に、追い込まれた境地で力を発揮した。

「評価していただいているのは本当にうれしいです。五輪に出たくて目標にしているけれど、五輪に出られる選手は精神的に強くてオーラがある。世界トップの選手と試合ができて、いい経験ができたと思います」

「去年の自分とは違う表現をしたい」

今季のショートは『リベルタンゴ』を選曲。「去年の自分とは全く違う表現をしたい」と表情にも気を配る 【坂本清】

 平昌五輪の2枠を目指す今季は、プログラム選びにこだわった。層の厚い日本女子において、「3回転+3回転」のジャンプは誰もが標準装備。抜きんでるには表現力の差が必要だと考え、ショートはイメージチェンジを図る『リベルタンゴ』を選曲した。

「去年の自分とは全く違う表現をしたいと思い、選んでいただいたプログラム。この選曲でうれしかったです。五輪代表に選んでいただけるよう、もっと強くなろうという気持ちが込められた曲です。私はなめらかな表現が得意だと思ってきたので、きりっとした曲にあわせてメリハリある動きをするにはもっと練習しないと、と思います」

 大人っぽい表情を身につけようと、鏡を見て自分をにらみ付ける練習もしている。

「去年の試合で感じたのは、シニアの方々の目ヂカラ。情熱的な女性の思いを表現できるようになりたいです」

 またフリーは『ガブリエルのオーボエ』で、得意とする情緒豊かなメロディの曲だ。

「大好きな曲です。ショートとは別人だと思ってもらえるような表現をしたいです。見ている皆さんの心に幸せが残るように、と思って滑ります」

 7月末には公開練習を行い、プログラムの仕上がりも披露。今季からトレーナーをつけて肉体強化を図ったといい、ジャンプの精度がより増している姿も見せた。

「五輪は、平昌に会場が決まった時から出場するのが夢でした。昨季は、平昌五輪の会場でも滑り、世界選手権や国別対抗戦などの経験もして、今は目標としてとらえることができています。五輪という大切な舞台で滑ることを思い描きながら、今季の大会を滑りたいです」

 スケートを滑れることへの喜びは、誰にも負けないという自負がある。強い情熱を胸に、平昌五輪へ向けて疾走を続ける。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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