ロンドンに根付くパラへのリスペクト 熱狂を文化に転換させる仕組みづくり

吉田直人

継続的に盛り上げる仕組み作り

今大会は約5000人のボランティアに支えられ運営された 【写真:吉田直人】

 日本チームからは会場の雰囲気に感嘆する声が多く聞かれたが、他方で冷静な意見もある。女子走り幅跳び(T44/下肢切断など)で銅メダルを獲得した中西麻耶(うちのう整形外科)は、競技後にこんなコメントを残した。

「ロンドンパラリンピックの方が、会場は盛り上がっていたと思います。レガシーという言葉もありますが、開催国として継続的に盛り上げていく難しさをすごく感じました。でも、マーケティングが弱いのかといえば、取り組みを見る限りそうでもない。『その時』まで頑張るんじゃなくて、継続していく仕組みを考えていかないといけないんだなと。パラスポーツのファンをもっと広げていくために、アスリートは結果を残すことが必要だと言われますが、今はそれだけではない時代にきていると感じます」

 何もしなければ、ファンは離れていく。運営スタッフたちは今大会に際して、『FILL THE STADIUM(スタジアムを埋め尽くそう)』のスローガンのもと、様々なPR活動を展開してきた。

 就学児童に向けたチケットのディスカウントキャンペーンは、約10万枚の申し込みを受け付けた。イングランドプレミアリーグの所属チームを始めとし、大会に賛同するフットボールクラブのバックアップも得た。競技の垣根を超えて展開されたキャンペーンは、多様な国民層にアプローチし、定着した文化に新風を吹き込んでいく。

 それが結果的に、新たなファンを醸成する種にもなり得る。中西の言う「継続していく仕組み」は、パラスポーツがすでに文化として根付くロンドンでも、緻密に行われていた。

「次は東京、君たちの番だよ!」

会場を盛り上げる巧みなカメラワークなど、日本が今大会から学ぶべきところは多い 【写真:吉田直人】

「どう運営すれば盛り上がるかを、イギリスの陸連は常に考えている。通常であれば、五輪を先にやった後にパラリンピックですが、今回であれば健常者の世界陸上前に開催してみてどうなんだろうとか、規定概念にとらわれていない。会場の盛り上げ方など日本に取り入れられるものはあると思うので、まずトライしてみたらいいんじゃないでしょうか」

 山本の言葉である。

 今回、会場で話を聞いた現地のスタッフや海外選手たちからは、東京パラリンピックに向けての言葉も聞かれた。

「次は東京だ。君たちの番だよ!」

「2020年になれば、絶対に盛り上がるはずよ、心配ないわ!」

 計16個のメダルを獲得した日本チームのメンバーたちには、スタンドから送られる大歓声が刻まれた。約3年後、パラリンピックの会場を埋め尽くした観客の喝采を、東京でも聞くことができるだろうか。

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著者プロフィール

1989年千葉県生まれ。大学時代は学内のスポーツ機関紙記者として、箱根駅伝やインターカレッジを始め各競技を取材。2016年、勤務先の広告代理店を退職後、フリーランスライターとしてスポーツを中心に取材を行っている。

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