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もうOPSは怖くない!
初めてのセイバーメトリクス講座(1)
今季の前半戦で唯一OPSが「1」を超えたソフトバンクの柳田
今季の前半戦で唯一OPSが「1」を超えたソフトバンクの柳田【写真は共同】

 こんにちは、漫画家のカネシゲタカシです。さて野球ファンたるもの、いつかやらなきゃと思いつつサボってしまうのがセイバーメトリクスのお勉強。なぜならセイバーを知らなくても、野球は十二分に面白いスポーツだからです。


 打者なら打率、打点、本塁打数。投手なら勝ち負け、セーブ、防御率。これぐらい知っていれば、それなりに楽しめるわけですよ。でも、もう少しだけ勉強すれば、さらに深く楽しめるんじゃないか? 居酒屋でドヤ顔できるんじゃないか? ぶっちゃけモテるんじゃないか??


 そんな軽い気持ちで始める、『初めてのセイバーメトリクス講座』。セイバー研究で知られる統計学者の鳥越規央先生をお迎えして、ざっくり気味にお届けします!

セイバーってサイバーじゃない…

鳥越先生:まずは「セイバーメトリクスって何?」という説明から入らせていただこうと思います。簡単に言うと「野球統計学」のことです。


カネシゲ:ああ、全然簡単じゃない。英語だけで頭がいっぱいなのに「統計学」とか言われるとさらに身構えてしまいます。そもそも「セイバー」ってどういう意味ですか?


鳥越先生:アメリカ野球学会(The Society for American Baseball Research)の頭文字SABRをとって「セイバー」と読んでいるんですね。そこに測量を意味する「メトリクス」をつなげて「セイバーメトリクス」という造語をつくったんです。


カネシゲ:えっ、造語だったんですか? 「サイバー」が訛ったとかじゃないんだ。


鳥越先生:全然ちがいます……。「アメリカ野球学会」は1970年代にできた組織なのですが、簡単にいえば野球オタクの集まり。77年に『野球抄』という本を自費出版したビル・ジェームズさんという方が、命名したと言われています。


カネシゲ:野球オタクが自費出版。なんだかコミケみたいな話ですね。


鳥越先生:「送りバントは本当に意味あるの?」とか、「盗塁ってリスクの割にリターン少ないよね」とか、それまでの野球のセオリーを覆すような内容の本です。最初、誰も相手にしませんでした。でも実際に検証すると「確かに言われてみればそうだよね」ということが多く、野球オタクの間でこの本は話題になっていったんです。


カネシゲ:草の根的に「セイバーはやべぇぞ」と。


鳥越先生:さらに、データを駆使して遊ぶ「ファンタジーベースボール」というゲームの普及により、巷(ちまた)ではどんどんセイバーに注目が集まっていきました。そのことに気付いたのが、アスレチックスのGM、ビリー・ビーンさんです。


カネシゲ:この人は知ってます。松井秀喜さんや中島裕之(現・宏之)さんの入団会見で、隣にいた人ですよね?


鳥越先生:そうです。ちなみに元野球選手です。彼が90年代に球団スタッフに転身した当時は、ホセ・カンセコ、マーク・マグワイアら有名選手がたくさんいたんですが、95年、前オーナーの死去により、スポンサーも減り、スター選手がどんどん出ていきました。それで、97年のオフにGMに就任したビリー・ビーンが低予算でどうやってチームを立て直そうか、となったんです。


カネシゲ:なるほど。そこでセイバーメトリクスの出番ってわけですね?


鳥越先生:その通り。セイバーのなかに、打率よりも出塁率のほうが得点との相関が高いという統計があったんです。打率が高い選手はスターだから年俸が高い。だけど塁に出る方法には四球もある。まずは四球の多い選手に注目していこうというのが第一歩です。守備位置すらも度外視して、キャッチャーでもファーストを守る、みたいに。


カネシゲ:守備位置すらも……。ドケチ球団が、それまでの常識を覆すような考え方で改革を進めていったんですね。


鳥越先生:そうです。ちなみに打率と出塁率はこんな数式で導き出されます。

出塁率=(安打+四死球)/(打数+四死球+犠飛)

必死にメモを取り、“授業”に食らいつくカネシゲ氏
必死にメモを取り、“授業”に食らいつくカネシゲ氏【スポーツナビ】

カネシゲ:あ〜、数式嫌い! とにかく「出塁率=塁に出る確率」ってことで大丈夫ですか?


鳥越先生:大丈夫です。「アウトにならない確率」と言い換えることも可能です。

カネシゲタカシ
カネシゲタカシ
1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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