もうOPSは怖くない! 初めてのセイバーメトリクス講座(1)
打率と出塁率を比較すると
※規定打席到達者のみ 【資料提供:鳥越規央】
※規定打席到達者のみ 【資料提供:鳥越規央】
鳥越先生:打率ではランキングに入ってこないけど、出塁率で上位に来る選手は四球が多いのです。話をアスレチックスに戻しましょう。ビリー・ビーンGMはさっそく出塁率のいい選手を集めたわけですが、いろいろ批判を受けることになります。まず当時の監督が一切受け入れてくれなかった。
カネシゲ:プロからすれば「セイバーがナンボのもんじゃい!」って話ですもんね。
鳥越先生:そうです。「この選手、出塁率が高いから使ってくれと」言っても断られたんですね。そこでチームが下降線になった時に、テコ入れとしてオレの言うとおりにしてくれ、と。そしたら、いきなり20連勝するんです(2002年)。しかも20連勝目は11点差のリードを追いつかれたのちにサヨナラ勝ちをするのですが、そのサヨナラホームランを放ったのが、キャッチャーからファーストにコンバートされたスコット・ハッテバーグ。まさにセイバーメトリクスで拾われた選手がドラマを生み出したのです。
カネシゲ:極端すぎる! その辺が映画(『マネー・ボール』)になる所以(ゆえん)ですね。
鳥越先生:なんせ年俸総額が下から4、5番目だったチームをア・リーグ西地区で地区優勝させてしまうんですから「セイバーすごい!」と。それで他のチームもどんどん取り入れるようになったんです。
長打率は「塁を稼げる力」
【資料提供:鳥越規央】
鳥越先生:そうです。でもヒットとホームランでは、当然価値は違いますよね? そこで長打率も見ようと。これは「1打数あたりにバットで稼げる塁の数の平均」と思ってください。これも得点との関係が非常に高いとセイバーで分かっています。長打率の式はこうなっています。
(塁打数=単打+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4)
【資料提供:鳥越規央】
鳥越先生:そうですね。この長打率のランキングを見てみると、また出塁率とはガラッと印象が変わりますよ。
※規定打席到達者のみ 【資料提供:鳥越規央】
鳥越先生:もともと出塁率も長打率も昔からあった指標なのですが、セイバーではこの2つの指標「塁に出る力(出塁率)」と「塁を稼げる力(長打率)」を合わせて見ることができないかと考えました。そこで生まれたのがOPSという指標です。
【資料提供:鳥越規央】
鳥越先生:そうです。四死球が1、単打が2、二塁打が3、三塁打が4、本塁打が5と点数化して、平均点を取っていると思ってもらえばいいです。このOPSが打者の総合的な打撃力を評価する優秀な指標となります。得点との相関関係が非常に高い。
カネシゲ:OPSはどれぐらいの数値があればいいんですか?
鳥越先生:プロ野球選手の平均がだいたい0.6くらい。0.8を超えると主軸級、1を超えると超一流となります。
※規定打席到達者のみ 【資料提供:鳥越規央】
鳥越先生:阪神は出塁率では3人もランクインするのに、OPSではゼロ。つまり長打力がないってことです。また日本ハムは大谷翔平の不在が痛いですね。去年は規定打席不足とはいえ、OPS1.004を記録していましたから。
カネシゲ:超一流の「1」超え! 去年の大谷は投手としてもとんでもない活躍だったし……ちょっと異次元ですよね。つくづく今年のケガがもったいない!
鳥越先生:逆に彼が復活したときの日本ハムは怖いですよ。楽天もソフトバンクも一気にとらえるポテンシャルがあります。