サンウルブズ、“会心の勝利”の理由 NZの強豪を攻略した「バランス」
オールブラックス経験者8人の強豪に勝利
団結力が高まったサンウルブズ(赤)が、NZのブルーズに快勝した 【斉藤健仁】
スーパーラグビー参入2年目、日本を本拠地とするサンウルブズは7月15日、最終戦で東京・秩父宮ラグビー場に、ニュージーランド(NZ)のブルーズを迎えた。ここまで1勝13敗で最下位、しかも8連敗中だったが、1万2000人以上のファンの声援を受けて8トライを奪い、48対21で今シーズン2勝目を挙げて、有終の美を飾った。
ただ、戦前、不安は大きかった。
ブルーズは、1996年から参入していて3回の優勝を誇る強豪。プレーオフ進出こそ逃したが、オーストラリアの5チームすべてに勝利し、勝ち点も上。しかも前節は休みのため、2週間ほど前に来日してホンダヒートと練習試合をするなど準備は万端だった。
また、今回の布陣は6月にブリティッシュ&アイリッシュライオンズ(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの選抜チーム)に勝利したメンバーとほぼ同じで、23人中8人がオールブラックス経験者だった。
攻撃的だったサンウルブズ「やるか、やられるか」
抜群のスピードを生かして攻守に活躍したWTB福岡堅樹 【斉藤健仁】
タフな南アフリカ遠征から戻って来たばかりの18人がメンバー入り。FW8人は遠征組が先発し、BKには日本で調整していたCTBティモシー・ラファエレ、ウィリアム・トゥポウ、WTB福岡堅樹という実力者3人も先発に加わった。
当日は33度まで気温が上がると予想され、体力を温存できるようにうまく戦うことが必須だと予想していた。ただ、チームの考えは異なっていた。前日、「ラストチャンスなので『やるか、やられるか』という思いで、すべてを出したい」と、No.8ヴィリー・ブリッツは最初から攻撃的な姿勢で臨む決意を語っていた。
そのため、ゲームプランはいつも通りだった。コンテスト(相手と競る)キックを蹴り、相手の大きなFWを背走させつつ、50/50の状況を作って、ディフェンスでプレッシャーをかけるというもの。
この5試合ほど、後半ラスト20分で崩れることが多く、2試合前のタックル成功率は55%、前の試合も80%と低く、個々のタックル、組織ディフェンスでどこまで粘り、接戦に持ち込むことができるかも焦点だった。
前半8分、12分に個々の能力の高いブルーズにトライを与えてしまい0対14とリードを許す。いつもと同じか……という思いもよぎったが、この日のオオカミたちは違った。
ブルーズ主将「フィジカルでサンウルブズが上回った」
ダブルタックルで相手を止め、ボール出しを遅らせた 【斉藤健仁】
80分間、体を張り続けたLO谷田部洸太郎は「(近場は)FWが責任持って止めないといけない。1対2のディフェンスができるようにコミュニケーションしていた」と振り返り、ブルーズの主将ジェームズ・パーソンズも「フィジカル、ぶつかりあいでサンウルブズが上回った」。
サンウルブズのFWが、この3試合にわたってほぼ同じメンバーで戦ってきたことも良い影響を与えたと言えよう。
FWだけでなくBKのディフェンスも終始、不安なく見ていられた。特にCTBラファエレ、トゥポウもタックルのレンジが広く、強いため安定感は抜群だった。「試合の読みや1対1を完全に止めてくれたことが良かった。彼らの素晴らしいプレーにより、全員に勢いが生まれ、ターンオーバーが生まれた」とブリッツも称えた。
大外にいるWTB福岡、松島幸太朗の2人もタックルスキルが高く、最初の2トライ以外は、この試合に限っては、前に出る組織ディフェンスが機能していた。課題のタックル成功率は、この試合は85%だったことも大きかった。