“静寂”に秘められたゴールボールの魅力 見えない世界で行われる高度な駆け引き

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東京で歓喜の声を挙げるために

東京パラリンピックの自力出場権獲得を目指す男子は、守備から攻撃に移るスピードを速めた速攻で世界に挑む 【スポーツナビ】

 一方で、男子チームはいまだパラリンピックの出場はない。東京パラリンピックはホスト国として、出場権をすでに獲得しているが、池田貴HC、選手ともに自力での出場権獲得に並々ならぬ闘志を燃やしている。

「僕らにとっては2020のメダル(獲得)を語る上で、(自力での出場権獲得が)マイルストーン。それくらいの強化を進めていかないとメダルは難しい。まずはアジアで勝つ。そして世界選手権で勝ち、3位までに与えられる東京パラリンピックの出場権を取りにいきたい」(池田HC)

 そのために、男子チームが取り組んでいるのは、「スピードを生かした攻撃を試合終了まで常に仕掛け続けられるようにすること」(センターポジションの川嶋悠太)。海外勢のパワフルな攻撃は一方で投球してから守備に戻るまで時間がかかるというデメリットがある。そこを突いて、相手守備が整うまでにすばやく攻撃しようという考えだ。

 5月に欧州で行われた国際大会で、日本はこのスピードを生かした攻撃を披露。他国を「ニンジャのようだ」と驚かせたという。川嶋は「自信がついた」と大きな手応えをつかんだ。
 男子も女子と同様に、8月にアジア・パシフィック大会で世界選手権の切符を狙う。池田HCは「体格で勝る外国のプレーヤーたちに勝つためには、駆け引きやアグレッシブな動きで2次元、3次元、4次元の攻撃が必要。これを終了まで続けられれば、十分に戦える」と力強く語った。

 男子も女子も、リオでは苦杯をなめた。しかし、東京で歓喜するための筋道はすでに明らかになっている。ゴールボールは“静寂”のスポーツだ。しかし、ゴールの瞬間、わずかだが、選手やベンチ、観客が一気に喜びを爆発させ歓喜する時間がある。今は静かな時かもしれないが、きっと東京で静寂が、爆発的な歓喜に変わる――ゴールボールの静けさの中に、そんな確かな熱さを感じた。

(取材・文:森隆史/スポーツナビ)
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