中田新体制の全日本女子、「世界」を認識 “スピードバレー”の肝はセッター
フルセットの末、6年ぶりにブラジルに勝利
中田監督はタイ、セルビア、ブラジルとの3連戦が国内で指揮を執る最初の機会となった 【坂本清】
ワールドグランプリでのタイ、セルビア、ブラジルとの3連戦が国内で指揮を執る最初の機会となった中田久美監督は試合後、一息ついて言った。
「昨日(のセルビア戦で)悔しい負け方をしたので。もう一度戦う姿勢を見せたい、と思って臨んだ試合でした。2セット取ってからのフルセット勝利でしたが、勝つことができて、結果が出て良かったです」
新生全日本のスタート。国内での3連戦を2勝1敗という成績で終えた以上に、チームにとっての大きな収穫は、これ以上ないほど明確な形で、それぞれが「世界」を認識できたことだった。
ガラリと異なる布陣で臨んだ仙台大会
ブラジル戦でレフトに内瀬戸を入れるなど、多くの選手がさまざまな状況で起用された仙台大会 【坂本清】
実際、前週のオランダ大会では攻撃力と高さを重視し、オポジットに堀川真理を起用したが、仙台大会では新鍋理沙を入れ、ブラジル戦ではセッターの隣に入るレフトに内瀬戸を入れるなど、ガラリと異なる布陣で臨んだ。
ロンドン五輪にも出場した新鍋は、経験も豊富で何よりディフェンス面で抜群の安定感を誇る。その新鍋が入ることによってレセプション(サーブレシーブ)が安定したばかりでなく、攻撃面にも変化が生まれる。特に効果的だったのが、オランダ大会ではレセプションも担い、攻撃でも多くのスパイクを放った古賀紗理那のバックアタックだった。
オランダ大会では両レフトの選手とリベロが3人でレセプションに入るのを常としていたが、1本目のパスから正確性とスピードが求められるため、前衛時の攻撃はあっても、バックアタックの打数は少なく、攻撃枚数が減り、相手にブロックポイントを献上する場面も目立った。
仙台大会で古賀に変化、主軸の活躍を見せる
全日本でのスタイルになじみ、仙台大会では攻撃の柱と言える活躍を見せた古賀 【坂本清】
「トランジションが特にダメでした。はい次、速く、速く、と気持ちが焦りすぎてしまうので、トスを見る前にかぶり気味に入っちゃう。そうなると相手のブロックも見えないし、打てるポイントも少なくなってしまう。でも久美さんからも『間に合わない時はトスを高くしてもらって、攻撃のメリハリを意識しなさい』と言われて、バックアタックは自分のリズムでも入れたので、ちょっとずつ、できるようになってきた気がします」
所属するNECでは1本目のパスを高く上げ、その間を使って助走に入るため、古賀はラリー中も素早く助走に開き、次の攻撃に備えた準備をする全日本でのスタイルに当初は戸惑った。だが相手ブロックと、トスを見ながらバックアタックに入ることで徐々に本来の感覚を取り戻し、仙台大会では3戦を通して攻撃の柱と言える活躍を見せ、中田監督も「試合を重ねながら、前向きにトライしてくれている」と評価した。