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中田新体制の全日本女子 、「世界」を認識
“スピードバレー”の肝はセッター

フルセットの末、6年ぶりにブラジルに勝利

中田監督はタイ、セルビア、ブラジルとの3連戦が国内で指揮を執る最初の機会となった
中田監督はタイ、セルビア、ブラジルとの3連戦が国内で指揮を執る最初の機会となった【坂本清】

 2時間24分に及んだ、フルセットの大熱戦。7月16日にカメイアリーナ仙台で行われたワールドグランプリの全日本女子対ブラジルの一戦は、最後はレフトから内瀬戸真実が決め、17−15。互いにメンバーやチーム構成が変わり、特にブラジルは北京、ロンドン五輪で頂点に立ったチームと大きく異なるとはいえ、実に2011年以来、6年ぶりに日本がブラジルに勝利した。


 ワールドグランプリでのタイ、セルビア、ブラジルとの3連戦が国内で指揮を執る最初の機会となった中田久美監督は試合後、一息ついて言った。


「昨日(のセルビア戦で)悔しい負け方をしたので。もう一度戦う姿勢を見せたい、と思って臨んだ試合でした。2セット取ってからのフルセット勝利でしたが、勝つことができて、結果が出て良かったです」


 新生全日本のスタート。国内での3連戦を2勝1敗という成績で終えた以上に、チームにとっての大きな収穫は、これ以上ないほど明確な形で、それぞれが「世界」を認識できたことだった。

ガラリと異なる布陣で臨んだ仙台大会

ブラジル戦でレフトに内瀬戸を入れるなど、多くの選手がさまざまな状況で起用された仙台大会
ブラジル戦でレフトに内瀬戸を入れるなど、多くの選手がさまざまな状況で起用された仙台大会【坂本清】

 16年のリオデジャネイロ五輪を終え、東京五輪に向かう新たな4年のスタート。中田監督が新指揮官に就任し、代表初選出の選手も少なくない。そのため、中田監督も「ワールドグランプリではできるだけ多くの選手をさまざまな状況で使い、組み合わせも見極めたい」と公言していた。


 実際、前週のオランダ大会では攻撃力と高さを重視し、オポジットに堀川真理を起用したが、仙台大会では新鍋理沙を入れ、ブラジル戦ではセッターの隣に入るレフトに内瀬戸を入れるなど、ガラリと異なる布陣で臨んだ。


 ロンドン五輪にも出場した新鍋は、経験も豊富で何よりディフェンス面で抜群の安定感を誇る。その新鍋が入ることによってレセプション(サーブレシーブ)が安定したばかりでなく、攻撃面にも変化が生まれる。特に効果的だったのが、オランダ大会ではレセプションも担い、攻撃でも多くのスパイクを放った古賀紗理那のバックアタックだった。


 オランダ大会では両レフトの選手とリベロが3人でレセプションに入るのを常としていたが、1本目のパスから正確性とスピードが求められるため、前衛時の攻撃はあっても、バックアタックの打数は少なく、攻撃枚数が減り、相手にブロックポイントを献上する場面も目立った。

仙台大会で古賀に変化、主軸の活躍を見せる

全日本でのスタイルになじみ、仙台大会では攻撃の柱と言える活躍を見せた古賀
全日本でのスタイルになじみ、仙台大会では攻撃の柱と言える活躍を見せた古賀【坂本清】

 その課題を受け、仙台大会では後衛レフトの選手がレセプションから外れ、前衛レフトの選手と新鍋、レセプションを得意とするリベロの小幡真子が入り、レフトの古賀や石井優希が後衛時にはサイドアウトからでもバックアタックを打つ準備に入るようにした。古賀が「攻撃枚数を増やして相手のブロックを分散させようと思って積極的に入った」という攻撃は、特にタイ戦では高い効果を発揮。一定の成果を残しただけでなく、オランダ大会までは「全く余裕がなかった」という古賀に変化を与えるきっかけとなった。


「トランジションが特にダメでした。はい次、速く、速く、と気持ちが焦りすぎてしまうので、トスを見る前にかぶり気味に入っちゃう。そうなると相手のブロックも見えないし、打てるポイントも少なくなってしまう。でも久美さんからも『間に合わない時はトスを高くしてもらって、攻撃のメリハリを意識しなさい』と言われて、バックアタックは自分のリズムでも入れたので、ちょっとずつ、できるようになってきた気がします」


 所属するNECでは1本目のパスを高く上げ、その間を使って助走に入るため、古賀はラリー中も素早く助走に開き、次の攻撃に備えた準備をする全日本でのスタイルに当初は戸惑った。だが相手ブロックと、トスを見ながらバックアタックに入ることで徐々に本来の感覚を取り戻し、仙台大会では3戦を通して攻撃の柱と言える活躍を見せ、中田監督も「試合を重ねながら、前向きにトライしてくれている」と評価した。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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