ラグビー日本代表が「キック」で戦う理由 エディー時代と180度違うアプローチ
ルーマニア戦ではキックからトライが生まれる
WTB山田はルーマニア戦、アイルランドとの第2戦で、キックからトライを奪った 【斉藤健仁】
6月のルーマニア戦、アイルランドとの第1戦でも当然ながらキックを軸に攻めた。特に多く見られたのは自陣の10mラインからハーフウェイラインまでの間から、SHやSOのハイパントだ。WTB福岡堅樹、松島幸太朗、そして山田章仁というキャッチが得意な選手の存在も大きかった。ほかにもSOの裏へのキック、SOやCTBからのグラバーキックと多様な攻めを見せた。特にルーマニア代表戦のWTB山田のトライは、クイックリスタートから攻め、CTBティモシー・ラファエレのグラバーキックから生まれた。
ただアイルランドの第1戦では「オフボール(ボールがない場面)の部分でこだわっていなかった」と指揮官が振り返った通り、SO田村のキック後、そのボールを追ったCTBウィリアム・トゥポウのプレーがノックオンと判定され、その後もキックを使って敵陣深くに入っても簡単なオフサイドをしたことが響いた。またこの試合では、相手が日本代表を分析、そして警戒していたこともありグラバーキックは効果的にならず、キックを使って相手陣深くに入っても、トライを取り切れなかったことが痛かった。
キックとボール保持の「バランスを取ることが大事」
日本代表の共同主将を務めるHO堀江 【斉藤健仁】
迎えたアイルランドとの第2戦、ボールを動かして相手のWTBが上がってきたところでSHがボックスキックを蹴る、はたまた簡単なグラバーキックをなくすなどバランスを取ったため、キックの回数は30から20へと減った(昨秋のウェールズ戦は31回、ルーマニア戦は26回だった)。またディフェンスシステムが機能していたこともあり、後半、早いうちにトライを取れていれば、はたまたモールでトライを取ることができれば勝つ流れにもちこむことができたかもしれない。だが、それができず、13対35で敗戦した。
ある選手が「守り疲れたという部分がある」と言えば、ほかの選手は「もう少しフィジカル(力強さ)をつけないといけない」と敗戦を振り返った。アイルランドのような強豪と対戦する場合は、やはり守っているだけでも疲労がたまる。チーム戦術の落とし込みに時間をかけた部分もあるかもしれないが、キックを使ったスマートな、そしてエネルギーの消耗を避ける攻撃をするにしても、チーム全体としてもう少しフィジカルやフィトネスを上げることは欠かせない。
相手に分析、研究されたときにどう戦うか?
緊急招集で奮闘したLOトンプソン「一番は4年間でチームを作ること」 【赤坂直人/スポーツナビ】
この試合のため1試合限定で代表復帰を果たした、W杯3回出場のLOトンプソン ルークが「ゲームプランと勉強(が大事)。一番は4年間でチームを作ること。ゲームプランと自分のレベルを上げてほしい」とエールを送るように、まだ本番まで2年あまり残されている。
今後、もちろんジェイミー・ジャパンはキッキングゲームを軸に戦うことは変わらないだろう。ただ相手に分析、研究されたときにどう戦うか、また相手や点差といった状況を見て、試合中に4つのポッドから3つのポッドに変えるなど戦術的な幅を持つことも必要かもしれない。ただ個人的には、戦術やゲームプランという点よりも、代表としてのプライドやフィジカルといった、個人的な部分で負けていたことが残念でならなかった。