棒高跳は「史上最高の空中バトル」 陸上日本選手権大会展望【フィールド編】
リオ五輪代表の新井は派遣設定Sを目指す
派遣設定Sを目指す新井だが今季は苦しんでいる。日本選手権で真価を発揮できるか 【写真:アフロスポーツ】
男子では、日本歴代2位となる86メートル83の自己記録を持ち、リオ五輪で決勝に進出した新井涼平(スズキ浜松AC)には、83メートル00の標準記録はもちろんのこと、派遣設定記録A(85メートル18)、S(85メートル97)の突破への期待がかかるが、シーズン直前に生じた技術のズレと原因不明の左手の痺れの影響で、この春先は思うような記録が出せずに苦しんだ。日本選手権は現在3連覇中。まずは選手権の獲得と標準記録を上回る投てきを目指していくことになりそうだ。
今季、男子やり投で好調なのは長谷川鉱平(福井陸協)。昨年81メートル55まで記録を伸ばしてきた選手で、今年もゴールデングランプリで80メートル85をマークして、日本人トップの成績を収めている。85メートル前後を投げられるという手応えはつかめているというだけに、このタイミングで世界選手権代表切符をつかみたいところ。
09年ベルリン世界選手権銅メダリストで、昨年は新井に続き81メートル81で年間日本ランキング2位となっている村上幸史(スズキ浜松AC)は、春先は調整が間に合わず競技会には出場していない。初戦となる日本選手権で、どの程度の記録を残すことができるか。
第一人者・海老原と斉藤、宮下、北口らが代表権争う
女子やり投の第一人者・海老原だが、今季はまだ標準記録を突破できていない。日本選手権では優勝とともに記録突破を目指す 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
一方で今季、勢いを感じさせるのは斉藤真理菜(国士舘大)。3月に日本歴代5位の60メートル01を投げて初の60メートルスロワーになると、関東インカレでは61メートル07をマークし、日本歴代4位に浮上している。この2人に、前回覇者で秋に60メートル86の自己記録を投げている宮下梨沙(大体大TC)、昨年に日本歴代2位となる61メートル38の学生記録・U20日本記録を樹立しているダイヤモンドアスリートの北口榛花(日本大)あたりが、代表の座を巡って優勝争いを繰り広げることになりそうだ。
投てき種目で日本記録更新が期待できそうなのは、男子砲丸投と女子ハンマー投。男子砲丸投では、18メートル78の日本記録を持つ畑瀬聡(群馬総合ガードシステム)に、今季は日本歴代3位の18メートル55まで記録を伸ばしてきている中村太地(チームミズノ)が挑むという構図になりそう。中村は、近年国内でも採用者が増えつつある回転投法に取り組んでいる選手。技術とフォームの安定が、記録の向上に繋がってきているという。グライド投法の畑瀬とともに、19メートルラインを超える地点で優勝を争ってほしい。女子ハンマー投では、昨年、日本歴代3位の66メートル79まで自己記録を更新してきた渡邊茜(丸和運輸機関)が、どこまで記録を伸ばせるか。日本記録は67メートル77、標準記録は71メートル00だ。
(文:児玉育美/JAAFメディアチーム)